【ARTIST】三柴理が語るFAシリーズ

日本ロック界屈指のピアニスト三柴理が、4年ぶりとなるソロ・アルバム『AKEBONO』を完成させた。新作には、映画『忍性』サウンドトラックを含む全25曲が収録されており、それらはいずれも、INTEGRA-7、FA-06、JD-Xiなどを駆使した“手弾き”で制作されたと言う。今回、その制作過程と楽曲に込められたストーリーを紐解いてもらうと同時に、“三柴流ローランド・シンセ活用術”をたっぷりと語ってもらった。

1 23

シンセが好きな方に「ぜひ手弾きしましょう!」と伝えたい

普段、三柴さんは、INTEGRA-7とFA-06はどのように使い分けているのですか?

三柴 – INTEGRA-7には、ありとあらゆる音色が入っているので、まず呼び出しが楽ですよね。一方でFA-06は、やっぱりライブで使うのにとても便利。そもそも軽いですから、現場に持ち込みやすいですし、現場で簡単に、いろんな音を出せるのがいいですね。筋肉少女帯のリハーサルとかで、急にメンバーから、「不気味なコーラスを鳴らしてよ」って言われた時でも、「いろいろあるけど、聴いてみる?」ってすぐに鳴らせるし、音色もその場でいろいろと調整できるのがいいですね。これは余談なんですけど、「Lone Wolf」の口笛も、はじめはシンセで弾こうと思ったんですよ。それで、国内外のいろんなシンセを調べたんですけど、口笛の音がプリセットで入っているのって、ローランドだけなんですよ。

そうなんですか!?それは知りませんでした。

三柴 – なぜか、ローランドだけなんです(笑)。それで、一生懸命に音色を調整して録ろうと思ったら、高橋さんが、「吹けますよ」っていうので、結局、今回のレコーディングでは生で録ったんですが、その作り込んだ口笛の音色を、FA-06に入れたままにしていたんですね。そうしたら、今年に入って、筋肉少女帯でアルバム『猫のテブクロ(1989年)』の完全再現ライブをやることになって、このアルバムの中で、口笛が入っている「Go! Go! Go! Hiking Bus~Casino Royale~,~The Longest Day~」という曲があるんですね。でも、メンバーは誰も口笛が吹けなくて(笑)。そうしたら、ギターの橘高(文彦)さんと大槻(ケンヂ)さんに、軽い感じで「シンセで口笛弾いてくれる?」って言われたんですよ。「いや、そうは簡単に出せるものじゃないんだよ」って言ったんですけど、たまたま「Lone Wolf」用に作っていた口笛が残っていたので、ツアーでは、その音色で演奏したんです。僕がFA-06で弾いているんだけど、大槻さんが口笛を吹く真似をして(笑)。この音が意外とよくて、ちょっとビックリしました。あと、筋肉少女帯のライブで、よく使っているのが、16個のサンプル・パッドですね。

筋肉少女帯のライブでは、どのような音を鳴らしているのですか?

三柴 – ほとんどは、いわゆる“おどかし系”の効果音か、あとは、CD音源に入っている女の子の喋り声だとか。そういった、ライブでは再現しづらい音も、メンバーは軽く「じゃあ三柴、やってよ」って言うんですよ(笑)。ちょっと前にやったツアーでは、16パッド×4バンクをフルに使わなきゃいけなくて、ライブの途中でバンクを切り替えながらパッドを鳴らしていました。今のところ、全部で87種類の音をサンプリングしていて、それをライブのたびに、パッドにインポートして鳴らしています。しかも、筋肉少女帯のライブでは、かなりインパクトの強い音が要求されるので、サンプリング・パッドは大活躍しています。鳴らす音のインパクトが強い分、押し間違いは絶対に許されない(笑)。僕は鍵盤プレイヤーなのに、何でパッドばかり押しているんだろうって、たまにステージで思っています(笑)。

(笑)。それくらい、INTEGRA-7とFA-06のセットは、レコーディングでもライブでも大活躍なんですね。

三柴 – FA-06の一台で、オーケストラ級の演奏も可能ですし。たとえばスタジオ・セットで、パートごとに細かくキー・レンジを設定すれば、一番低い音域でティンパニを鳴らして、その上の音域では一緒にコントラバス、さらに上ではチェロが重なってきて、高音域ではホーン、一番上の音域でストリングスが演奏できて、鍵盤でフル・オーケストラのような演奏もできるんです。昔、筋肉少女帯がフル・オーケストラと一緒にレコーディングした曲があるんですが、それもFA-06のスタジオ・セットを活用すれば、ライブで問題なく再現できました。

ほかにFA-06で、よく使ったり、気に入っている機能はありますか?

三柴 – リズムが簡単に鳴らせるというもの、意外といいですね。たとえばスタジオで、「ボサノヴァのリズムってこんな感じね」とパッと出せるので、とても楽です。そのドラム・キットも、いろんなジャンルの音が入っていますし、イントロ、フィル、エンディングと、勝手に演奏して終わってくれるので、FA-06の中にドラマーが入っているような感じで使えます。あと、ボコーダー機能も使いますよ。これで、クイーンのようなコーラスをしたり。そういったコーラスも、同期で鳴らすよりも、ボーカリストと呼吸を合わせて歌う方が、やっぱりいいですよね。

今回、三柴さんにお話を伺って、改めてリアルに演奏することの大切さや、その醍醐味を知ることができました。

三柴 – 特に今回のアルバムは、ほとんどの音はローランドのシンセから出していて、しかもそれを手弾きで演奏していますから、そういったニュアンスを楽しんでもらえたら嬉しいですね。あと、このインタビューはシンセが好きな方が読んでくださっていると思うので、みなさんにも「ぜひ手弾きしましょう!」と伝えたいですね。

そのためにも、多くのシンセ・ファンに、新譜『AKEBONO』のサウンドを体感して欲しいですね。

三柴 – CDを買って聴いていただけると嬉しいですね。ライブ会場で販売していた初回生産盤がそろそろ少なくなってきていて、今後は、通常盤を販売しようと考えています。最近は、CDを買っても、パソコンに曲データを取り込んで、携帯プレイヤーで聴いていると思いますが、そうするなら、MP3ではなく、ぜひWAVにして欲しいなと思います。MP3だと、どうしても音質が落ちるし、かなり演奏ニュアンスが失われてしまうんです。せっかく、INTEGRA-7やFA-06で繊細に表現した音が入っているので、そこが消えてしまうのは残念なので、ぜひCDで聴いて欲しいですし、もしパソコンに取り込むなら、WAVの非圧縮にしていただけると嬉しいですね。

INFORMATION

RELEASE

SATOSHI MISHIBA 『AKEBONO』
TKT-030 ¥3,000(税別)

筋肉少女帯メジャーデビュー当時のメンバーで現在はサポートを務める、日本ロック界屈指のピアニスト三柴 理、渾身のソロ・アルバム。 筋肉少女帯でデビューする前に作った楽曲や、33年間の長きにわたりサウンドクリエイター・ユニット“THE金鶴”の一員として制作してきた、映像のための音楽も収録。リスナーの日常の“サウンドトラック”として、末永くお聴きいただける一枚。ご購入は下記「Blasty Artist Shop」よりお買い求めいただけます。

LIVE INFO

《筋肉少女帯》
2017/05/20 東京・恵比寿LIQUIDROOM

《オーケンうっちーエディーのメジャーデビュー29年記念日SESSION!》
2017/06/21 東京・duo MUSIC EXCHANGE

《特撮》
2017/07/02 東京・新宿LOFT
2017/07/05 東京・恵比寿LIQUIDROOM
2017/07/06 大阪 umeda TRAD(旧 umeda AKASO)

1 2 3

この記事をシェアする
Recommend 関連記事