藤田:今までは、「こういうアルバムが作りたい」っていう、イメージだったり、コンセプトだったりが毎回あったんですけど、今回は、そういったことは考えずに、もうテーマは”ライブ”ですね。アルバムでコンセプチュアルな曲を作っても、そういうのって、結局はライブで演奏しなくなっちゃうんです。それって、無駄じゃないかなって思うようになって。それで今回は、とにかく「ライブでやれる曲を」と考えて作りました。
藤田:ああ、そうですね。ダビングでたくさんのギターを重ねるとか、実験的なレコーディングは、今回はほとんどやっていません。ベーシック録りも、まあ、すべてが一発録りではないんですけど、あくまでも、ライブでできることをやったというレコーディングでした。
藤田:「FEEVEER」や「ジェネレーションZ」などは、ライブで感触を見ながら作っていったので、そういった時間をかけた曲もありますけど、でも全体的には、半月で作ったくらいの勢いがあったと思います。
▲MO’SOME TONEBENDERのメンバー。左から、武井靖典(Bs,Backing Vo,Tp)、藤田勇(Gt,Backing Vo,Prog)、百々和宏(Vo,Gt)
藤田:まずパソコンでデモを作ります。デモができてから、百々(和宏/Vo,Gt)が歌いやすいキーに合わせて調整し直したりするので、僕の場合は、1曲ごとにちょっと時間がかかるんです。でも百々は、スタジオにやって来て、「(フレーズを鳴らして)こんな感じだから、あとはベースとドラム、よろしく」みたいな感じでしたね(笑)。
藤田:このアルバムに関しては、そういった様子は、まったくなかったですね(笑)。
藤田:僕が作る曲は、きちんとデモを作らないと、伝わらないんです。そうでないと、みんなに「何がしたいのかよく分からない」って思われちゃうから(笑)。だから、作るしかないんですね。音として、2人に「こういう曲です」っていうことを、ちゃんと伝えるしかないんです。
藤田:僕は昔から、クラブ・サウンドにも興味があって、4つ打ちって、最強だと思っているんですよ。”ドンチードンチー”って、すごいビートだなって。このグルーヴには勝ち目がないって思ってたんですけど、でも僕らはロック・バンドだから、今回はロックしようと思って。「FEEVEER」も、フロアっぽいノリなんですけど、でも僕の中では、「いなたいロック」なんです。「バーニング」に関しても、シンセの音がいっぱい入ってたり、ラップをやったりしていますけど、「でもロックでしょ?」って感じで。
藤田:僕が叩いてます。あの……V-Drumsの一番安いモデルを買ったんですよ。ペダルにビーターが付いてないヤツ。
藤田:そうそう。曲作りとかで、結構これは役に立ってますよ。でも、買った直後に新しいヤツ……折りたためるモデル(V-Drums Portable TD-4KP-S)が発売されて、そっちの方がよかったかなって思って(笑)。
藤田:そうです。最初にも言ったように、新しいアルバムは、ライブ感であったり、バンドっぽさ、つまり”ロック”をイメージしていましたから、生っぽさを求める時は、やっぱりデモであっても、自分で叩いて、それを録った方がいいんです。結局、レコーディングでも自分が叩くわけですからね、一番手っ取り早いんですよ。もちろん、打ち込みっぽい曲を作りたい時は、パソコンでリズムを組んだりしますけど。
藤田:そうです。今はパソコンとつなげて、MIDIで録音したり、あとはいろんな音色を試したりしています。曲作りだけじゃなくて、自宅でプリプロをする時にも役立ってますよ。モーサムでは、まだやったことはないですけど、他のバンドのプリプロを自宅でやったりしていて。家でそれができるのって、便利ですよね。
藤田:いえ、「バーニング」だけ、打ち込みです。ただ、生でも録っていて、両方を比べた結果、打ち込みを採用したというだけです。打ち込みといっても、そもそもが、そんなに打ち込みっぽくないドラムですから、全体の質感だとか、そういった部分で。
藤田:いや、曲の作り方自体は昔から変わってないので、単純に、ステージで自分が立つ場所が変わっただけくらいのイメージです。……ただ、ギターを始めて、ドラマーに自分がやりたいことを伝えるのって、結構、面倒くさいんだなってことが分かりました(笑)。自分で叩くなら、そういったことを考える必要はないじゃないですか。でも今は、サポート・ドラマーを入れてライブをやっているので、やっぱりドラマーによって、ノリって違うんだなということに、改めて気付きました。
藤田:最初のうちは、違いを感じましたけど、もう慣れました。
藤田:……お客さんが近いなぁって(笑)。
藤田:あ、その記事を読みましたよ。前にも、僕がギターを弾いているところをヤノくんが見て、「目が覚めました!」って言われたんです(笑)。
藤田:気を付ける点と言えば、ドラムは全身運動だけど、ギターは主に手先で弾くから、ライブであまりに動き過ぎると演奏がメチャクチャになる、っていうことくらいかな。
藤田:まあそこは、暴れるところは暴れて、ちゃんと弾かなきゃいけないフレーズは、しっかりと演奏するようにして(笑)。あとギターの場合は、自分でテンションを高く持っていく、持っていけるようにということは考えています。その点、ドラムは逆なんです。ドラムは、どこかで冷静になっていないとダメだから。責任が重いんですよ、ドラムって。でもギターは、僕がいなくても、他のメンバーだけでも演奏できるから(笑)。
藤田:自分が作った曲に関しては、だいたい僕も弾いています。
藤田:僕です。ワウで、歪みをフィルタリングして。
藤田:2人とも、考え方が両極端ですからね。百々は、完全にアナログ好きで、それに対して、僕のギター・サウンドは、すべてプラグイン・エフェクト(以下、プラグイン)で作ってたりしますから。
藤田:そもそもの考え方として、プラグインの方が合理的だし、音楽的な幅も絶対に広いでしょ? って、僕は思っているので。
藤田:いや、ラインでも録るし、アンプも鳴らしてマイクで録ったりもしています。だから、普通のギタリストがコンパクト・エフェクターを使う代わりに、僕はプラグインを使っているということです。僕のコンパクトは、チューナーだけです(笑)。
藤田:レコーディングと同じですよ。プラグインです。ステージで、僕の所にパソコンを置いてるんですけど、あれがエフェクターなんです。だからパソコンがトラブルと、何もできなくなる(笑)。でも、プラグインだといつでも同じ音が出せますからね。アンプの調子が悪いだとか、エフェクターが壊れたりなんてこともないですから。プラグインだからこその音作りやプレイは、これからもっと追究したいと思ってます。ただ、実際のライブでの出音となると、アナログ機材は、音のヌケがものすごくいいですから、苦労もしますけど。
藤田:いや、ライブではアンプを鳴らします。ギターとベースがアンプでドーンと鳴っているのに、自分の音だけがモニター返しだと、寂しすぎますからね(笑)。そこは、自分のためにも、アンプを鳴らすようにしています。
藤田:僕は元々、ギタリストという意識がないですから。ドラマーという意識もないし。ただ、「ミュージシャンだ」とは、思っています。だから、楽器は何でもよくて、その時に必要なものをやればいいと思っているんです。ローランドのWebサイトもよく見ていますし、昔のV-Guitar System(VG-88)も持ってますよ。
藤田:僕が気に入っていたのが、ベースの音や、モデリング(COSMギター)のセミ・アコースティック・ギター系の音。V-Guitar Systemは、以前にモーサムのライブでも使ったことがあって。
藤田:最近はあまり使っていなかったんで、ディバイデッド・ピックアップが壊れてないか心配だったんですけど、ちゃんと使えてよかったです(笑)。当時は、V-Guitar Systemを使って、ライブでオルガンの音色を鳴らしたりしてました。その頃は、まだそれ以上の面白い使い方を思い付かなくて。
藤田:試奏してみましたけど、これは面白いですよね。ピアノの音とか、ものすごく”ピアノっぽい”ですし。これを使って、「ロッキンルーラ」のピアノ・パートをギターで弾けばいいんですね(笑)。
藤田:その、ギターじゃない音のクオリティが、圧倒的に上がっていますね。操作も分かりやすいですし、ディスプレイも見やすいと思います。見た目に関しては、僕はVG-88のメカっぽい感じも好きです。今、ラインナップされている最新のVG-99には、リボン・コントローラーとかDビームもありましたよね。うん、でもギター・シンセも、なかなか面白いです。
藤田:うんうん、見えてきた!(笑) こういう機材があると、本当に夢が広がりますよね。ノーマル・ピックアップで普通にギターを弾きながら、6弦だけCOSMギター・モデリング音源でベースを鳴らすっていう方法は、すごく使えると思いました(注:どの弦でCOSMギター・モデリング音源を鳴らすのか設定が可能)。ギターをコード弾きしながら、6弦でベース・パートをユニゾンで演奏できるわけですから、これでベースの座も奪えそうです(笑)。
藤田:あはは。でも、ギターでベース・パートをカバーできたら、その分、ベーシストは他のことができますからね。ステージの前に行って、踊ったりとか(笑)。
藤田:使い方次第だとは思うんですけど、もし僕らがライブで使うとなると、シンセ・リード的な強い音、目立つ音色がいいんじゃないかな。ライブでは、シーケンサーでもシンセ・サウンドを鳴らしていますから、「ギターで弾く」というパフォーマンス性を考えると、パッド系とかよりもリード系の方が面白いと思います。やってみないと分からないですけど、たとえばダフト・パンク的なこととかも、できそうな気がしますね。あと曲作りでも、ギターを手にしたまま、いろんな楽器の音が出せれば、便利そうですよね。
藤田:僕自身が、そんなに”ギタリスト”っていう感じではないので、普通のギタリストとは感覚が違うかもしれませんが、昔から、楽器屋さんでギター・シンセとかを見かけると、「カッコいいなぁ」って思ってましたよ。サウンドがどうなのかは全然分からないけど、「何だ、これ?」って思うじゃないですか。すると、説明に「ギターでシンセの音が鳴らせる」って書かれていて、「へぇ!」っていう驚きですよね。実際に、モーサムでドラム以外のことをやろうと考えた時に、いろいろと楽器のことを調べたんですよ。その時に、V-Guitar Systemを見つけて、これでシンセみたいな音も出せるんだって思って。シンセは、鍵盤が弾けないからなぁって思ってたんですけど、「ギターでシンセっぽい音が鳴らせるなら、これでいいじゃん!」っていう発想だったんです。
藤田:コンパクト・エフェクターは、嫌いじゃないんですけど、百々がよく故障とかでトラブっているのを見ていますからね。トラブルがない方がいいなって思って(笑)。
藤田:それはありますよ。音楽性は、とても広がったとは思っています。広がって、その結果、「でも、やっぱりロックだよな」って戻ってきたのが、今回のアルバムなんです。モーサムがやるべき音楽って、結局はこういうものなのかなと、今は感じています。
藤田:僕らが表現したいのは、「エネルギー」なんです。僕がバンドを見ていて、一番カッコいいなと思うのは、得体の知れないエネルギーを感じる瞬間。だから僕も、ツアーでそこを表現したいと思っています。