JD-XA専用の追加音色データ「JD-XA JUPITER-8/JUNO-60 Crossover Impression」を分析することで、JD-XA本来のポテンシャルや、JD-XAならではの楽しみ方を紹介していきます。
JD-XA Sound Analysis
Vol.2
アナログとデジタル、異なる2種類のサウンド・エンジンを搭載するJD-XA。そこから生み出される唯一無二のサウンドは、2015年のシンセサイザー・シーンを大きく変えたと言っても過言ではありません。ここでは、サウンド・ライブラリ・サイト Axial にて公開しているJD-XA専用の追加音色データ「JD-XA JUPITER-8/JUNO-60 Crossover Impression」を分析することで、JD-XA本来のポテンシャルや、JD-XAならではの楽しみ方を紹介していきます。前回から引き続き、薄暗い空間で撮影してみました。ステージ上に鎮座している(っぽい)JD-XAの姿も合わせてご覧ください。
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今回は、このオーディオデータで聴ける0:47~2:03までの6つのサウンドをチェックしてみましょう。
5, Thick&WarmJP
アナログ・パートを使い、非常に鋭いアタック音を生成。一方、デジタル・パートでは温かみがありつつも歯切れの良い成分を作成。最終的にはこれらをブレンドしています。どちらか一方では成り立たない、JD-XAならではの個性的な音の一つです。
6, SuperJX+JP8
前回紹介した「1, JP&JX Square」と同じく、JX-10とJUPITER-8、それぞれの音をSuperNATURALシンセ・エンジンで再現したサウンド。音色選択時OFFになっているアナログ・パート1をONにすると、さらに太いサウンドに仕上げることができます。
7, Jupiter Sweep
JD-800などに代表される、90年代によく聞かれた”あの”Sweep音。もうこれだけでアガるわー!という人も多いのではないでしょうか。さらに、アナログ・シンセ部分で作られたドラム・サウンドを組み合わせて一つのプログラムが形成されています。
8, The JP Brass
80年代に国内外のヒット・ソングで非常によく聴かれた、JUPITERならではのポリフォクック・シンセ・ブラス。アフタータッチでカットオフの開閉をコントロールすることも可能。そしてこのサウンドも、アナログ・パート1をONにすることで印象が変化します。
9, JP Hollow
コーラス・エフェクトとSquare波形の組み合わせで心地よい響きのサウンドを生成。この手の音は地味ですが、中々グッと来るものを作るのが難しい!こちらは逆にデジタル・パートをOFFにすることで、アナログならではのキャラクターを堪能することができます。
10, Jupiter 5th
これも昔のRolandシンセが得意としていた、デチューンされた音をうっすらと重ねて厚みを出しているサウンド。こちらもアフタータッチを使用してフィルターの開閉をコントロールすることができます。・・・と聞くと、ついつい押しこんでしまいますよね(笑)。
Pick UP!!
5, Thick&WarmJP
アナログ・パート音を確認すると、音程感の少ない鋭い音が鳴っています。このアタック音は、アナログ・フィルターによる強力なフィルターとエンベロープで作り出すことができます。
フィルターのカットオフ、レゾナンス、エンベロープとそのデプス(掛かり具合)を調整することで歯切れの良い「バツッバツッ!」という音になっていくのですが、特にディケイの数値により音が劇的に変化しています。数値上の0~5あたりを行き来するだけでも印象が全く異なってくるので、ここの微調整は非常に神経を尖らせたいところです。
ある程度の音程感を持たせたい場合はアンプ部のエンベロープ(特にディケイ、サスティン)も調整するといいでしょう。そうして微調整していると「ここだ!」と思える瞬間が来ます。これはどのようなオケ中で使うかによって答えがマチマチなので、楽曲の中で音にどのような役割を持たせたいか?を考えながら作ってみるといいです。
強烈なアタック音は、JD-XAのアナログ・エンジンだからこそ生み出せる個性の一つ。
ぜひ、活かしてほしいですね。
7, Jupiter Sweep
※ヘッドホン推奨!
個人的にはこの音だけで何杯もご飯が食べれる!というくらい好きなSweep音!・・・なんですが、この音は泣く泣くMUTEして(泣)、ここではリズム音色、特にアナログ・シンセで作る強力なキックの音を分析してみます。
キックの音を担っているアナログ・パート4をエディットできる状態にし、フィルター部のカットオフとレゾナンスを触ってみるとピッチやキャラクターが劇的に変わるのがわかると思います。そして、ここでも重要なのがエンベロープ。特にディケイとサスティンの微調整を極められれば、もうプリセットの音では満足できなくなるはず!?TR-808など、Rolandには歴史的なリズムマシンが多くありますが、アナログ時代の名機ではこのように作られていたのですね。
ちなみに、確実に同じ音を狙って出せるサンプリング音と違って、アナログ・シンセの場合はその都度毎回違う音が生成されます。これが「長時間聴いていても疲れない」ということになり、ループ・ベースのダンス・ミュージックなどで重宝されている要因の一つだと考えられています。なので、JD-XAを強力なリズムマシンとして使うのも面白そうですね(贅沢)。
今回は特にフィルター部を駆使した音を紹介しました。このフィルター部、開発段階で最もこだわったポイントの一つ。JD-XAデビュー前に多くのプロ・ミュージシャンに試し頂いたのですが、皆さん真っ先に手を伸ばされるのは、このフィルター・エンベロープの部分。それもディケイを本当に細かく細かく調整して、その出音をチェックされていたのが印象的でした。音のアタック成分は、オケ中での音の存在感を大きく左右します。常にステージに立つプロフェッショナルなミュージシャンが真っ先に確認するのも、分かりますね。
次回は残り6つの音色を一気に紹介。あの名曲にそっくりなフレーズが飛び出します、お楽しみに!