JD-XA専用の追加音色データ「JD-XA JUPITER-8/JUNO-60 Crossover Impression」を分析することで、JD-XA本来のポテンシャルや、JD-XAならではの楽しみ方を紹介していきます。
JD-XA Sound Analysis
Vol.3
アナログとデジタル、異なる2種類のサウンド・エンジンを搭載するJD-XA。そこから生み出される唯一無二のサウンドは、2015年のシンセサイザー・シーンを大きく変えたと言っても過言ではありません。ここでは、サウンド・ライブラリ・サイト Axial にて公開しているJD-XA専用の追加音色データ「JD-XA JUPITER-8/JUNO-60 Crossover Impression」を分析することで、JD-XA本来のポテンシャルや、JD-XAならではの楽しみ方を紹介していきます。
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今回は、このオーディオデータで聴ける2:03~3:19までの6つのサウンドをチェックしてみましょう。
11, Juno Lead
JUNO-60オリジナルのプリセット・パッチに触発されたモノフォニック・サウンド。厚みと暖かさを両立しつつも、SuperNATURALによるフィルターによる激しいキャラクター変化で存在感ある仕上がりになっています。フィルター変化はモジュレーション・ホイールにアサインされており、これを動かすことでオイシク変化させることができます。
12, JupiterPoly2
音の立ち上がり部分をデジタル・パートで。後に続くシンセ・ブラスの中核をアナログ・パートで作成した、スタンダードなクロスオーバー・サウンド。こういったアナログとデジタルの強みを活かす音づくりは、名機D-50にも通じるものがありますね。こちらもモジュレーション・ホイールにフィルター変化がアサインされています。
13, JupiterPoly3
リリースとディレイを駆使し、心地よい余韻を作り上げているサウンド。パターン・シーケンサーを鳴らすことでフレーズでチェックすることもできます。
14, JP8+JD800air
JUPITER-8と、JD-800という、アナログとデジタルの名機を忠実に再現して組み合わせたサウンド。フィルター変化をアフタータッチにアサインしているため、両手で演奏しながらの音色変化も可能になっています。JD-XAのポイントである「プレイアビリティ」もお楽しみください。
15, JPSynStrings
アナログ・シンセらしさを醸し出すこの音色は、実はデジタル・パートで作られたサウンド。SuperNATURALシンセ・エンジンの可能性が現れている音色といえます。そのままアナログ・パートをONにすることで、さらに厚いポリフォニック・サウンドを瞬時に作り出すこともできます。
16, Jupiter Arpg
アナログ・パートのパルス波を使って作られた明るいサウンド。デジタル・パートは隠し味として付け加えられています。シンプルながら、中々作り出すことができない難易度の高い音色といえます。
Pick UP!!
16, Jupiter Arpg
パターン・シーケンサーを鳴らすと、デュラン・デュランの名曲に酷似したフレーズが飛び出すことからも、あの時代のサウンドを再現しようとしたことは言うまでもありません(笑)。さて、音色の作りを見てみると、何と!アナログ・パート部のフィルターが「BYPASS」となっています!アタック感の強いグイグイくる感じのフレーズの秘密はここにある・・・のですが、ここでは敢えて「アナログ・フィルターを使ったらどうなるのか?」という視点でオリジナルの音色に仕上げてみます。なお、デジタル・パートの隠し味にはフィルターを掛けていません。
まずLPF1。JUPITERやJUNOといった伝統的なRolandアナログ・シンセで多く使われていたのと同じ仕組み・構造を持ったフィルター。特にポリフォニック・サウンドとの併用でRolandっぽさを感じてもらえると思います。JD-XAのアナログ・サウンドがRolandっぽさをしっかり出せている一つの要因でもあります。
LPF2は、いわゆるトランジスター・ラダー・タイプのフィルター。こう記載してグッと来る人は、鋭い!シンセ・ベースなどモノフォニック・サウンドに使われるケースが多いのではないでしょうか。また、レゾナンスを上げた状態でのカットオフ変化は、LPF1よりも一層鋭く激しくなっているのも特長といえるでしょう。フィルター・エンベロープを使ってのアタック感も出しやすい印象です。
そしてLPF3/HPF/BPF。これらは一つのマルチバンド・フィルターとなっています。特徴としては、レゾナンスを上げた状態でカットオフを変化させると歪んだような強烈な音になるということ。実はこれ、本来は開発段階で修正すべき箇所だったのですが「JD-XAの個性になってくれたらいいな~」という想いを込めてそのままにしてあります。名機の再現に留まらず、こうしたオリジナルな部分が新しい音楽になってくれたらいいですね。
ということで、今回はBYPASSに設定されているのを逆手に取って(!?)、フィルターの効きや特徴を探ってみました。フィルターはオシレーターと並びシンセサイザーのキャラクターを決定づける重要な要素。そのフィルターがアナログ部分だけでもこれだけ揃っている機種というのは他にないのではないでしょうか。ちなみに、デジタル・パートのフィルターはこれとは別で存在しています。
そういえば、デュラン・デュランといえばNick Rhodes自身が作成して実際に使用している音色も公開しています。Nick RhodesがRolandシンセとの歴史を語り尽しつつ、JD-XAの面白いポイントも語ってくれていますので、ぜひこちらも見てみてください。