【JUSTY STYLE】〜効率的な吹奏楽指導のために〜 埼玉県朝霞市立朝霞第一中学校吹奏楽部

吹奏楽や合唱練習において欠かせないキーボード「JUSTY」-ジャスティ-。音楽の基礎となる「チューニング」「ハーモニー」「メトロノーム」機能のほかに、リモート操作、持ち運びもできるという利点から、全国の部活動や団体に導入されています。このシリーズでは実際にJUSTYや周辺の電子機器がどのように活用されているかご紹介していきます。今回は、埼玉県朝霞市にある「朝霞市立朝霞第一中学校」の顧問、外﨑三吉先生にお話を伺いました。

JUSTY STYLE

~ 効率的な吹奏楽指導のために ~
埼玉県朝霞市立朝霞第一中学校吹奏楽部

吹奏楽や合唱練習において欠かせないキーボード「JUSTY」-ジャスティ-。音楽の基礎となる「チューニング」「ハーモニー」「メトロノーム」機能のほかに、リモート操作、持ち運びもできるという利点から、全国の部活動や団体に導入されています。このシリーズでは実際にJUSTYや周辺の電子機器がどのように活用されているかご紹介していきます。今回は、埼玉県朝霞市にある「朝霞市立朝霞第一中学校」の顧問、外﨑三吉先生にお話を伺いました。

短期間でレベルアップする秘訣は「合奏力の向上」。

朝霞一中吹奏楽部は2015年に全国大会である「全日本吹奏楽コンクール」に初出場でゴールド金賞を受賞し、以降、現在もなお輝かしい成績を修められています。先日の首都圏学校交歓演奏会ではグランプリを受賞されたということですが、大変忙しい毎日を送られているのではないですか?

はい、最近は本当に忙しかったです。定期演奏会もありましたし、浜松市での全国中学生交流コンサートもあり、春休み中ですが生徒たちと共に全国を飛び回っている状況でした。年度が変わり、新入部員を迎え、新しいメンバーで気持ち新たに取り組んでいくところです。

先生は赴任されてすぐにバンドのレベルを引き上げ、成果を出されました。これから新入部員が入って来ますが、短期間でバンドのサウンドをレベルアップする秘訣とはなんでしょうか。

吹奏楽の技術には2つあって、「個々の演奏技術」と、人に合わせる「合奏力」があると思います。合奏力は自分の音とまわりの音を聴いて、音程、音色、音量、呼吸を合わせる。私は、個人の技術というよりは「合奏力」の方を重視しています。
入部して来たときには全員が初心者です。テクニックなどの演奏技術を急に引き上げることは難しい。でも、「耳を育て、聴く力をつけ、合奏力を高める」。これは普段の練習のなかで、効率的に高めていく方法があります。

「部活動ガイドライン」のなかで生徒を導く「効率的な指導」とは。

「効率」というキーワードが出ましたが、昨年あたりから学校にも働き方改革が求められるようになり、文化庁より「部活動ガイドライン」が出るなど、練習時間の確保が非常に厳しい状況となってきていると思います。限られた時間で生徒を育て、好結果に導かれる「効率的な指導」とはどんな内容なのでしょうか。

私は便利な機材はどんどん活用して「効率的に正しい音程感を身につける」ということを実践しています。特にキーボードについては、全国ほとんどの吹奏楽部にキーボードがあると思いますが、充分活用できていない実態があると思います。これは本当にもったいない。
 
もちろん、最終的にサウンドを作るのは「人間の耳」ですが、純正律キーボードは「正しい音程とはなにか」を示すガイド、つまり基準となります。うちの部では常に純正律キーボードである”JUSTY”を使いながら、生徒自身が「音がハマる感覚」を覚え、心地よい落ち着く響きとは何か、という感覚を追求しています。
 
この正しい音程という入口部分が全体合奏前に準備できていないと、本当に時間が足りないです。
だから、JUSTYは個人練習、ペア練習、パート練習、セクション練習と生徒たちだけの練習でも活用しています。
まずは平均律で1音ずつ、そして純正律で3和音(根音・第5音・第3音)を中心に、正しく音程を合わせていきます。特に基本となるB♭-dur、Es-dur、F-durは徹底的にやります。
JUSTYを基準に、常日頃から「音がハマる感覚」をトレーニングしておくことで、全体合奏になったときに曲の表現やまとめなど、一歩先の音楽的な指導ができるというわけです。

純正律キーボードのJUSTYは「音程」と「音を混ぜる」感覚を磨く。

確かに、先ほどいろんな教室で行われていた個人練習~パート練習の様子を拝見しましたが、生徒さんもその時間のほとんどをJUSTYの音を聴いて音程を合わせていましたね。1時間のうち半分以上はチューニングしていたんではないでしょうか。
チューニングといえばチューナーを使うのが当たり前という感覚がありますが、JUSTYを使うメリットはなんでしょうか?

チューナーは結局目で見て合わせるので、あくまでも補助的なものですね。
美しいサウンドをつくるためには、JUSTYで正しい音程感を身につけると同時に、もうひとつ必要な感覚を育てることができるんです。それは「音を混ぜる感覚」です。JUSTYはさまざまな楽器の音が出ますので、自分の楽器と相性の良い音色を鳴らしながら、さらに他の楽器の音に自分の音色を混ぜていく。その繰り返しが奏者の耳を育て、「透明な美しいサウンド」をつくる源(みなもと)になります。

低予算で導入できるから、複数台使ってパート練習にも。

個人やパートの小さな単位の練習から、音の感覚を磨くことが大切なのですね。そうするとJUSTYが複数台ほしくなりますね。先生は何台あるのが理想と思われますか?

理想は各パート、最低でも各セクションに1台ずつあるといいですね。
うちは公立校ですから特に、予算がなかなか取れないんですが、JUSTYはお財布に優しい(笑)。価格を聞いた時には驚きましたし、本当にありがたいことです。
あと、電池駆動なのはもちろん、リュックタイプのソフトケース(別売:CB-GO61)もあるので、場所を選ばず運んで使える手軽さがあります。

パート練習でも1音ずつ音程を確認していく。
いつ、どこで吹いても安定した音程を出せるように、外﨑先生の指導法がパートリーダーに引き継がれている。

iPadをリモコンに、離れた場所でも操作。だからテンポよく指導が進む。

アンサンブル練習を拝見しました。生徒さんがiPadのアプリ(JUSTYリモート)を使って、遠隔操作で基準音やメトロノーム音(クリック音)を出しながら、指示していましたね。

このアンサンブル練習の様子は、このページ最後にあります動画でご覧いただけます。

これは他のキーボードにない機能なので、とても便利だと思いましたね。アプリとBluetooth®による遠隔操作ができることで、指導が効率化できています。
アンサンブル練習の動画にあるように、生徒が自分の席から動かないでJUSTYを操作し練習を進めることができますし、私もiPadを持って指揮台から離れて、客観的に演奏を聴きながら指導しています。それにアプリの画面も見やすくて、直感的に操作できるのがいいですね。あと、コンクール、定演前のホール練習では重宝しています。ホール練習は響きや全体のバランスを調整できる貴重な機会ですから、時間を十分に使いたい。以前は、近くにいる生徒にキーボードの操作をお願いしたりしていたのですが、今では、私が審査員席のあたりに座って指揮台横にあるJUSTYを遠隔操作しています。アプリによって指示出しがスムーズになったことで、ホール練習をより充実させることができるようになりました。

ホール練習は、本番と近い環境でできる貴重な機会。この時はこれだけ離れていても指揮台横のJUSTYを操作することができた。
(※環境によって異なります。)

生徒のリーダーシップは、指導者の見本・基準なくして育たない。

生徒さんがJUSTYやアプリを使いこなしているのも印象的ですが、全体合奏までに生徒を中心にリーダーシップをとってお互い課題を見つけ話し合い運営していく、というのも効率化になっているのではないでしょうか。

生徒たちで考え運営することが効率化につながる、というのはもちろんあると思いますが、これにはひとつ大事なポイントがあります。
よく教育関連のセミナーや書籍などでも指導の効率化をうたって「生徒たちだけで出来る」というような言葉が聞かれます。でも、それは「先生が範を見せる」、つまり見本をしっかり示したうえでの話です。生徒たちに任せるというのは主体性を育てるという面ももちろんありますが、一歩間違えば放任になってしまったり、方向性がバラバラになってしまう可能性もある。だから、指導者自らが正しいやり方を見せ、生徒たちがその手法を習得できているか確認することが指導の責任だと思っています。
 
機材でいえば、JUSTYをどう活用するかを示す。そうすることで、与えられた正しい基準から生徒自身がどう改善したらいいのか、どういう音を奏でたいのかを自分達で考えられるようになるんです。

「考える練習」が効率化につながる。それをサポートするのが機材。

なるほど、先生が適切な基準を示すことで、生徒たちが目標に向かって考えながら試行錯誤できる。それが生徒たちの主体的な「考える練習」につながり、結果として効率化が図れるということですね。
JUSTYを基準として活用して「聴く力」を育てた結果、実感されている効果はなんですか?

聴く力が育つことで、生徒が周りの音を聴いて演奏を作っていくことができるようになります。
先ほど申し上げた「合奏力」ですね。具体的には以下の3つの効果を実感しています。

誰が合図をするか、誰に合わせるか、誰の音を聴くのか、判断できる

アンサンブル力がつく

指揮がなくても自分たちでテンポをキープできる

JUSTYは「合奏力」を高めるための頼もしいパートナーだと思います。

吹奏楽で重要な「縦のライン」のお話が出ましたが、テンポ感についてはどのように指導されているのでしょうか?

JUSTYの正確なクリック音を流しながら、振り子式のメトロノームも併用して全体合奏をしています。耳と目の両方で、徹底的にテンポ感が身につくまでやります。よくある3連符や16分音符もクリック音を鳴らして身体に刻みます。
また、フットペダル(別売:EV-5)を使って音のON/OFFや音量のコントロールができるので、両手で指揮をしながら、足でペダル操作してクリック音を消し、しばらくしてまた音を出す。そうすると、曲のテンポがキープできているかすぐわかりますよ。
 
テンポを計測できるタップテンポ機能はもちろん、変拍子の曲でもパターンを登録できます。アプリの画面で登録できるのでわかりやすいです。一曲まるごとビートパターンを登録するなんてことも可能です。

JUSTYから出るメトロノーム音を足元のフットペダルでコントロールしながら指揮をする外﨑先生。
指揮台にiPad、右側にデジタル・レコーダーのCD-2uと大きなデジタル時計が置いてあった。

演奏を客観的に聴けていますか?「聴き返し練習」の効果とは。

外﨑先生は、デジタル・レコーダー”CD-2u”を活用した「聴き返し練習」「聴き比べ練習」も積極的に取り入れられています。具体的にどのように使っていらっしゃいますか。

主に全体合奏とアンサンブルで使っています。
生徒たちは、自分たちの演奏を客観的に聴くことはできませんから、早い!遅い!ズレてる!と言ってもなかなか伝わらないです。生徒たちは「はい!」って言うんですが、「本当にわかってる?」「はい!!」・・・はっきり言ってわかってないです(笑)
これでは非常に効率が悪いですよね。曲を始めた早い段階から録って聴かせると上達が早いですよ。
 
まず「聴き返し練習」ですが、CD-2uで録音した演奏のなかで、ズレていたところを部分的にリピート再生し、かつ、倍テンポに落として分解して聴かせます。その際に、生徒達に聴くポイントを伝えます。そうすると、どのパートが、誰がズレているのか理解し、共有できます。そして何が改善点なのか、その場で話し合い、すぐに演奏に反映させます。もしかしたら、指揮者が安定していないからかもしれません。先生と生徒がその場で共有しすぐに改善することがポイントです。1曲まるごと聞いたあとからではどうしても忘れてしまいますから。
 
次に「聴き比べ練習」は、録音した自分たちの演奏と、参考音源を聴き比べます。iPadなどのBluetooth®対応機器に入っている音源やYoutube動画の音源などを、JUSTYのスピーカーから再生することができるのでサッと操作できます。
こちらも1曲まるごと聴き比べるのではなく、ある程度のフレーズで交互に聴き、意見を共有します。
思っているだけではダメです。全員が共有することで目標が一致するんです。

録音して聴き返すと呼吸が合っておらず、音の出だしがバラバラなことがわかる。
合っていないフレーズだけ何度も聞き、そのグループだけで演奏し改善していく。
改善しなければパート単位、個人まで落とし込む。

録音を聴いて改善点を話し合うことで、理想のサウンドを共有する。

録音からわかる問題点を「すぐに」「みんなで」共有することが大切なんですね。これらの効果として実感されたことはどんなことでしょうか?

レコーダーを活用した「聴き返し練習」や「聴き比べ練習」をすることで、以下の効果があると思います。

生徒たちで「考える練習」ができるようになる。
→何をどう直していくか、個人練習・パート練習へ自分たちで落とし込んでいけるようになります。

譜読みが早くなる。
→これは意外だったんですが、その分、最初からインテンポに近い状態で合奏ができるようになります。

音に対するこだわりが生まれる。
→正しいイメージを持ち、良い音はなにか、良くない音はなにか。理想を共有し、それに近づくように練習することができるようになります。

以上、機材の活用についてお話しさせていただきましたが、こういった機材を使うことで、生徒たちの「聴く力」が育つスピードが早まり、理想を共有することができる。結局、それらは「時短」につながりますよね。
これからますます効率が求められる時代ですから、便利な機材は取り入れて、頼れるものは頼るべきだと思いますよ。

吹奏楽指導で最も重要なこと。それは「指導者自身のサウンド感」。

歌劇やバレエ音楽などの演奏を聴かせていただきましたが、非常に表現が豊かだと思いました。特に場面転換がしっかり感じられるようなサウンド感、表現力をお持ちだと思いますが、先生は生徒たちにどのように曲想を伝えているのでしょうか?

私が吹奏楽指導で最も重要だと思っていることは「指導者が明確なサウンド感をもつ」ということです。指導者がどのようなサウンドにしたいかということを持っていれば、生徒は育ちます。
 
サウンド感を伝えるには、まず「歌うこと」だと思います。私が歌ってみせ、そして生徒たちが歌う。私が範を見せて、生徒も歌うことでイメージを体感していく。あわせて、比喩を使ってイメージを伝えます。例えば、セクションごとに順番に入ってくる場面だったら「色を塗り重ねるように入って来て」と伝えます。全国たくさんの指導者を見ていますが、やはり言葉の引き出しがたくさんある方は指導が上手です。

曲だけでなく、基礎のロングトーン練習から歌っていく。
身体を使って呼吸し、手の振りもつけることで音が広がるイメージをもつ。

今年のコンクールでレベルアップするために。

これから新入部員を迎え、いよいよ夏のコンクールの練習に本格的に入っていきます。
今年のコンクールこそ、ひとつ上の賞を取りたい、レベルアップしたい、でも時間がなくて悩んでいるというという顧問の先生に向けてメッセージをお願いします。

本業の教科指導や担任業務、新学習指導要領、ICT活用推進と、ただでさえ時間がないなかに部活動ガイドラインと、本当に吹奏楽部顧問にとって苦しい状況だと思います。
バンドの根本であるサウンド作りに近道はありませんが、

指導者が明確なサウンド感を持つこと

JUSTYや CD-2uのような機材を積極的に活用して、耳を鍛えること。

この2点を実践していただきたいです。特に機材に関しては初期投資以上のリターンがあると思います。
 
そして、「急がば回れ」の気持ちをもって、根気強く、諦めないことです。中学生だからといって、サウンドの追求や表現力に限界はないと思っています。まさに、朝霞一中吹部のスローガンである「雑草魂」※をもって、私も吹奏楽指導を続けていこうと思っています。

朝霞一中吹奏楽部のスローガンである「雑草魂」。
この言葉を中心に、どういった部を目指すか、毎年生徒たちで話し合ってテーマを決めているそうです。

やっと全ての演奏会やコンクールが落ち着いてホッとひと息つけた日に、快く取材に応じてくださった外﨑先生。
いちばん成長の幅が大きいと言われる時期の子供たちと関われるのはとても面白いです、と仰っていました。

埼玉県朝霞市立朝霞第一中学校吹奏楽部顧問 外﨑 三吉(とざき さんきち)
1979年埼玉県大宮市(現さいたま市)生まれ。県立伊奈学園総合高等学校在学中に、バンド運営に興味をもち、教員を目指す。平成25年度より朝霞第一中学校に赴任。社会科教員。
これまでに吹奏楽コンクール県大会11年連続出場、西関東大会金賞10回、東日本大会金賞2回、全日本大会金賞2回、銀賞1回。アンサンブルコンテスト西関東大会金賞8回、全日本大会銀賞5回、管楽合奏コンテスト全国大会最優秀賞4回受賞している。
様々な機器を利用した「聴き返しトレーニング」による指導法セミナーを全国各地で開催。各地で好評を得ている。これまでに北海道(札幌地区・空知地区)、東京、埼玉、神奈川、大阪、和歌山で開催している。

参考動画:朝霞一中のハーモニー練習術byローランドJUSTY(音楽之友社:ONTOMOチャンネル 2017年制作)

実際の朝霞一中のアンサンブル練習と、外﨑先生による丁寧なJUSTYの使い方紹介。練習のスタイルが変わったという生徒さんと先生の声を、美しいハーモニーとともにご覧ください。

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