山葵:もう5年以上前になると思いますが、TD-8を使っていました。当時は、自宅で生ドラムを叩けない環境でしたので、練習目的で購入したんです。ただ、練習だけではなくて、制作用に依頼を受けて、V-DrumsでMIDIレコーディングしたデータを渡すといったことにも活用していました。
山葵:まず、キック・トリガー・ペダル(KT-10)が、すごく気に入りました。これはいいですね。前にTD-8を使っていた時は、やっぱりキックの打撃音や振動が一番の問題で、キック・ペダル用の防音シートを自作して、それを使って自宅で演奏していたんです。その点、KT-10は打撃音が静かですから、すごくいいと思います。それに、ショット後にビーターが揺れる感触もあって、フィーリングもいいです。電子ドラムのキック・パッドって、ハードヒットすると、どんどんと前に行ってしまうことも多いですが、これは安定感がしっかりとあるので、その心配がなさそうですね。
山葵:踏み込む際の重さも調整できるんですか。それはいいですね。
山葵:それは便利ですね。自宅にV-Drumsを置いていた時は、それほど広い部屋ではなかったので、ツイン・ペダルを組むのもかなりの工夫が必要でしたが、これならスッキリとセッティングできそうです。あと、スネアのプレイが気持ちよかったですね。
山葵:僕の場合、例えばソロ・パフォーマンスでは弱い音から大きな音まで、ダイナミクスのあるプレイをするんですが、スネアの叩く位置によって音色のニュアンスをコントロールしているんです。だから、10インチくらいの大きさがあると、それを表現しやすいですし、フィーリングもいいです。普段、生ドラムを叩いている時と、まったく同じ感覚でプレイできました。
山葵:アコースティック系の音色などは、音だけを聴いたら、電子ドラムを叩いているのか、生ドラムなのか、区別ができないんじゃないですか? まったく違和感がありませんでした。特にキックは、如実によくなったと思います。TD-8でドラムをMIDIレコーディングしていた頃は、正直に言うと、「ここまで強く叩いたつもりはじゃなかったのに」というように、演奏している感覚と、実際の音にズレがあることも少なくなくて、違和感があったんです。だからMIDIで録った後に、パソコンでベロシティを調整し直してから、データを渡していました。それが、今のV-Drumsだと、こんなに自然にプレイできるんですね。音源側のクオリティとレスポンスが、相当によくなったんだなと感じました。
山葵:確かに以前は、普段より気持ち早目にオープンしないと、それが反映されなかったり、何回かに一度は、オープンにしたつもりなのに、その音が鳴らせなかったりということもありました。でもこれなら、「電子ドラムだから、タイミングの問題で演奏ミスをしてしまう」ということがなく、普段通りにプレイすれば、普段通りの音が鳴ってくれるという印象で、まったくストレスを感じませんね。それに、ハイハットのパッド自体もよくなったと思います。シンバルも含めてそうなんですが、タイコとシンバルの打感の違いって、揺れがあるかどうかという点が、すごく大きいんです。そのフィーリングが、とてもいいと思いました。
山葵:もし僕が使うとしたら、クローズド・リムショット用に使うと思います。バンド・サウンドの中で、確実に鳴らせるようにという使い方ですね。あとは、V-Drumsだからこそ可能な奏法として、瞬時に音色(キット)を変えられるじゃないですか。曲中でも、例えば間奏で、フィルターがかかったようなローファイな音色のドラムを鳴らすというような時に、キット・チェンジ用のパッドとして使ってもよさそうですね。
TD-15KL-Sは、自宅での練習用としても、ライブで使うにも、すごく的を得たキットだと思います。僕は今まで、知り合いから「電子ドラムはどういうのがオススメ?」と相談されると、昔の知識で、3つのポイントを挙げていたんです。まず、メッシュ・パッドであること。次に、ハイハットが、ハイハット・スタンドに取り付けられるタイプであること。そして、バスドラムが、普通のキック・ペダルを使って、実際にビーターで叩けるタイプがいいよ、と。でも今回、TD-15KL-Sを試奏してみて、ハイハットとバスドラムも、これでまったく問題ないと思いました。それどころか、マンション住まいの人にとって、一番問題になる騒音や振動の問題が改善されていて、しかもこんなにストレスなくプレイできるので、むしろこちらの方がオススメできると思います。
山葵:基礎的な練習も、ゲーム感覚でできるのがいいですね。いい点数が出せないと、やっぱり悔しいですから、ムキになって練習したくなりますし(笑)。あと僕は、前にV-Drumsを使っていた時も、内蔵のバッキング・ソングを鳴らしながら演奏するのが好きでしたね。
山葵:しかも、いろんなジャンルの、スタンダードなフレーズが内蔵されているじゃないですか。それこそ、初心者ですと、音楽のジャンルや、その中でのプレイ・スタイルを幅広く知っている方は少ないと思うので、バッキング・ソングやデモ・プレイを聴きながら、「こういうタイプの曲には、どういうプレイや音色が合うのか」といった勉強にもなると思います。例えば、ブルース進行の曲は、意図しないと触れ合う機会が少ないでしょうし、僕自身も、普段はボサノヴァなどを演奏する機会は少ないので(笑)、そういった曲の演奏もできるというのは、楽しいですよ。それともうひとつ、簡単に録音ができて、それをすぐに聴けるのは便利だと思いました。
山葵:そうなんです。生ドラムの録音は、ハンディ・レコーダーだと細かいニュアンスが分かりづらいですし、ちゃんと録ろうとすれば、なかなか大変で。最近、ニコニコ動画の“演奏してみた”とかで、初心者の方も自分の演奏を動画で撮ったりしていますが、ドラマーはみんな、録音の仕方に頭を悩ませると思いますから、こういったV-Drumsを利用して録る方が、圧倒的に手軽だと思いますよ。
山葵:いろいろありますが、まず画質と音質がひどく荒いものは、ちょっと残念に思います。せっかくいい演奏をしても、動画の質が悪いせいで、視聴者にそれが伝わらないのはもったいないですよね。最近は、スマホでもかなりいい画質で動画を撮れますが、編集したり、インターネットにアップロードする行程で、画質と音質がどんどん悪くなってしまいがちです。必ずしも、難しい専門的な技術が必須とは限りませんが、なるべく視聴者がストレスを感じない動画を投稿できるといいですね。あとは、自分のプレイをいかにカッコよく見せられるかを考えて、動画を撮るといいんじゃないかと思います。
山葵:そうです。僕の場合は、自分のキャラとして、背中から撮らざるを得なかったんですが(笑)、どのアングルから撮ると面白い映像にできるのか、自分が客観的に見た時に、どういう動画が面白いと思うのか、それを考えるといいと思います。いくら演奏が上手でも、何かしらの個性がないと、見た人の心に印象を残すのは、難しいですから。
山葵:自分が納得できるプレイをすることはもちろんですが、そこにどんなプラスαがあるか。僕って、動画を開いて5~10秒くらいで、そのまま見続けるか、閉じるかを判断することが多いんですよね。その数秒間で「おっ」と思うものがないと、すぐにページを移動しちゃいがちで。それに、同じ楽器を演奏するプレイヤーなら、細かいテクニックとかも分かりますが、それは全体から見ると、ごく一部の視聴者層ですよね。一般の方にも自分の動画に触れてもらうためには、普遍的な面白さが必要だと思うんです。ただ、何も身体を張って、笑いを取るだけが「面白さ」ではなくて、見る人の興味を引くようなキャッチーさや、共感を生むようなアイデアが大切だと思います。
山葵:せっかく自分の演奏をインターネットにアップして、世界中の人が見られる状態にするわけですから、できるだけ多くの人に見てもらいたいじゃないですか。もし僕が、動画をアップしていなかったら、さらに言えば、これ(背中の文字)をやっていなかったら、今、和楽器バンドのメンバーではなかったと思うんです。僕のことを面白いと思ってくれる人がいて、そこからさらにいろんな人とのつながりが生まれるきかっけを与えてくれたのが、演奏動画の投稿なんです。
山葵:分かりやすい違いとしては、まず和楽器バンドには、リズム隊が3人います。ドラムとベース、それに和太鼓。和太鼓の黒流さんは、ドラムセットのように何個も太鼓を並べた和太鼓セットなんですが、パーカッション的な役割を担当することもあれば、ドラムセット以上に、リズムの根底を作るシーンもあります。一般的にパーカッションって、土台となるリズムをドラムが担当して、その上に打楽器の音色で色付けを加えるというプレイをしますよね。でも、和楽器バンドでは、和太鼓がパーカッションの役割をすることもあれば、その逆もありますから、ドラムとの立ち位置が変わることがあります。あとはドラムと和太鼓の2人で、パズルを組み合わせるように1つのリズムを構築するケースもあります。さらには、ドラムの音を、和太鼓がブーストするようなこともあるんです。
山葵:例えば、バスドラムがドコドコと叩いているところに、大太鼓の音をさらに重ねて低音を強化させたり、スネアドラムのバック・ビートを和太鼓がブーストしてくれたり。だから、たとえシンプルな8ビートにしても、他のバンドにはないグルーヴになると思うんです。そういったリズムの構築の仕方、音色の組み合わせが、和楽器バンドならではの部分だと思います。
山葵:考え方が変わりますね。自分の動画を撮る時は、あくまでも自分が主役で、自分のプレイがすべてですから、なるべく派手に見せようと考えます。それが和楽器バンドのように、8人編成のバンドの中でのリズム隊となると、自分が目立ち過ぎてもアンサンブルとしてよくないこともありますし、それこそフィルインのフレーズまで変わってきます。和楽器バンドには和太鼓もいますので、どこを誰が叩くのかということを考える必要があるんです。
山葵:セクションの変わり目で、僕があえてシンプルに叩いて、そこに和太鼓がフィルインを入れることもありますし、そこは曲の雰囲気や、解釈によって、どうするのがベストかを考えながら作っていきます。そういった点は、ソロ・パフォーマンスと、バンド・アンサンブルの、一番の大きな違いですね。
山葵:ドラマーの方なら、リズムの構築の仕方は楽しんでもらえると思いますし、あとライブという点では、これは毎回恒例になっているんですが、ドラムと和太鼓のバトルがあるんです。一緒にリズムを絡ませたり、お互いにソロをやりながら会場全体を煽ったりしていて、そこはいつも好評いただいているシーンです。僕と和太鼓だけをフィーチャーしたコーナーで、ドラマーでも、そうでない方でも、楽しんでいただけるセクションだと思います。あと、和楽器バンドのメンバーって、それぞれの分野のプロフェッショナルが集まっているんですよ。ボーカルや邦楽器のメンバーは、詩吟や各楽器の師範であったり、ギターの町屋さんは、ニコニコ動画で大人気の奏者であったりと、どのパートを見ても刺激になると思います。ただ、そういうメンバーだからと言って、みんな「オレが、オレが」と自己主張ばかりすると、音がぶつかって喧嘩してしまうので、僕らの場合は、基本的に引き算でアンサンブルを作っていくんです。そもそもが、8人という大所帯で、しかも和楽器の音はすごく繊細なので、「このセクションでは、どのパートを引き立たせるとカッコいいのか?」をみんなで考えながら、アンサンブルを作っていくんです。そういった、全体のアンサンブルも楽しんでいただきたいですね。
山葵:このライブでは、『ボカロ三昧大演奏会』よりも、さらにパワーアップした、今までの和楽器バンドにはないライブをやろうと、演出のさまざまな部分に工夫を凝らしています。新年を祝うライブであり、渋谷clubasiaでのワンマン・ライブから一年後の渋谷公会堂という、僕らにとっての大きなステップアップとなるライブでもあります。この日にしか体感できないパフォーマンスを、ぜひ楽しみにしていてください。