何か新しいことを始める前に付きまとう不安。お子様にピアノを習わせる前に知っておくと、親子でピアノがもっと楽しくなる。そんなコンテンツをお届けします。第3回は 「毎日練習しなくちゃいけないの?」というお話。
子供が成長し、幼稚園や保育園に通うようになると、親を悩ませるのが、子供のお稽古事。ピアノは、水泳に次ぐ人気のお稽古事です。何か新しいことを始める前に付きまとう不安。お子様にピアノを習わせる前に知っておくと、親子でピアノがもっと楽しくなる。そんなコンテンツをローランドからお届けします。
3回目も、引き続き、笹田優美氏へ、自宅練習の実情と、親御さんの関わり方についてお話しいただきました。
『ピアノのレッスン』というと…「練習が大変」というイメージがつきもの。親御さんは「うちの子は毎日ちゃんとできるかな?」「毎日ちゃんと練習をさせる自信がないな~」などと心配してしまうかもしれません。
お稽古事の中には、日々の練習が必要なもの、必要のないもの、いろいろありますが、本来は、どのようなお稽古事でも、「稽古=練習」を積み重ねて、その成果を先生に見てもらうことです。
充分な練習時間がとれなかったり、練習嫌いだったりするお子さんもいらっしゃると思います。親御さんの中にも、昔ピアノを習っていたけれど、練習が大変でやめてしまった方も、少なくはないでしょう。もちろん最終的には練習をしないとピアノは上手になりませんが、音楽は楽しまなくちゃ意味がないですよね。
特に、ピアノを始めたばかりの小さなお子さんの場合、「練習」といっても、それほど負担にならないことばかりです。できるだけ毎日音楽に触れてもらいたいとは思いますが、絶対にしなくてはいけない、というものでもありません。楽しみながら音楽に触れることが大切ではないかと思っています。
幼稚園入学前から年少さんくらいの場合は、黒鍵をグーで押さえたり、ドードードーと1本指で弾いたりする鍵盤遊びはあっても、一般的には「ピアノを弾く」という段階ではありません。
本連載の第1回「いつから始めたらいいの?」(リンクはこちら)でも触れましたが、身体の発達や脳の発達に合わせて教えるので、この時期はまだピアノを弾ける身体にはなっていません。まずは演奏に必要な音楽のさまざまな勉強をバランスよくしていきます。
例えば、歌を歌ったり、先生が弾くピアノの音を声に出して歌ったり、音楽にあわせてリズムを取ったり、感じて動きで表現したり。そんな中で音符やリズムを学んでいきます。
ピアノは88個も鍵盤があり、大人が弾くサイズの楽器です。これを小さなお子さんが弾くのですから、まずは鍵盤に慣れることが大切。黒鍵と白鍵の場所を確認して、音を出して数えてみたり、絵の鍵盤を使って黒鍵の上をグーで動いてみたり。遊ぶように鍵盤に親しんでもらいます。また、5本の指をバランスよく動かすために、指や手の体操、指人形を使った運動など、腕や身体全体の使い方を学んだりします。
これらはレッスンのほんの一部ですが、どんな内容でも、そんなにむずかしかったりつらかったりするわけではなく、その場で先生と一緒に楽しんで取り組むことが多いのです。
自宅での練習も、レッスンの内容を親御さんとお子さんが一緒に、復習することがメインです。こういった内容であれば、楽しく練習できると思いませんか?
「練習させなくちゃ」とあまりプレッシャーに思わないで、「今日はどんなことをしたかな?」とやさしく声をかけて、テキストを見ながら一緒に歌ったり、リズム打ちをしたり、指の体操をして楽しく過ごして、音楽に触れていただけたらよいかと思います。
幼稚園の後半や、小学校低学年からレッスンを始めると、上記の内容にプラスして、練習曲や小品を弾くレッスンがすぐに始まることもあるでしょう。その場合は、レッスンで習ったことを練習する、次の曲を予習する、など、練習で何をすればよいのかはわかりやすいですね。
この時に、親御さんは、ずっとそばで練習を見てあげないといけない訳ではありません。むしろ「上手に弾けたら聴かせてね」と部屋を出て、できるだけ一人で練習する習慣を身に付けさせてあげてください。ピアノの横にお母さんが仁王立ち、というのも、お子さんにもプレッシャーかも(笑)。少ない練習時間でも、練習の成果を聴いて、美しい音で弾けていたり、丁寧に弾いていたりすることを褒めてあげるとよいですよ。
ピアノの先生の座談会などで話を聞くと、毎日しっかり練習する生徒さんは減少しているようです。講師としては残念なことではありますが、それでも音楽に触れる楽しさを知って、レッスンを続けてくれることは嬉しいことです。
でも、練習は確実に上達への近道。ピアノの練習は特に、目の前の小さな課題にじっくりと取り組み、ひとつひとつクリアしていく、という地道なことの繰り返しです。子どもの頃にそういった習慣を身に付けることは、とてもよいことですよね。
あまり気負わず、できる範囲で、練習を習慣化していく。最近は街中のあちこちでイベント、ライブなどが行われていて、様々なジャンルの音楽の生演奏を聴く機会も多いですよね。ミュージシャンの生演奏を聴くこと、観察すること、ノリを感じることなども、とっても大切な勉強です。
そういった機会を一緒に楽しみながら、親御さんも肩の力を抜いて、お子さんのピアノ練習を見守ってくださいね。
笹田優美(ささだゆうみ)
国立音楽大学音楽学部教育音楽学科卒業。ピアノを小泉欣子、声楽を秋山恵美子に師事。在学中よりローランドのデモンストレーターとして活動。大学卒業後は高校教師(音楽科)を経て、クラシック、ポピュラー・ピアノ担当として後進の育成にあたる。現在は、自宅教室MUSIC OASIS VERDEを主宰。レッスンや執筆活動の他、幼児教育教材開発、コースコーディネート、および全国各地にて指導者向けセミナーを行う一方、コミュニティFMの生放送DJや音楽番組の企画・制作、音楽会ナビゲーターなどでも活動中。