石毛:アルバムの曲を作り始めて、「Keep Your DISCO!!!」ができた時に、ちょうどシングルを出そうっていう話が出たんです。それなら、この曲がシングルだろうってすぐに思って。
石毛:そうですね。確か、アルバム収録曲の中では、最初にできあがった曲だったと思います。ライブではいつも“DISCO!!!”って叫んでおきながら、最近は“DISCO!!!”っていう曲をあまり作ってなかったので、「また作ってみようか」っていうところからスタートして。じゃあ、もう1曲をどうしようとみんなで話し合ったら、「真逆の曲が面白いんじゃないか?」って話になって、壮大な曲をイメージして作ったのが「Ring a Bell」という感じです。どちらも基本的には、僕が自宅でデモを作って、そこからスタジオに入ってみんなでアレンジを詰めていく、という作業が多かったですね。
松本:すごくストレートな曲だと思ったし、単純に面白い曲だと感じました。
石毛:いい音でしょ?
岡本:やっぱり結婚が大きかったんじゃないですか?(注:松本はこの年1/27に結婚を発表した)
長島:守るべき者がいる音!
松本:結婚前だったんだけどねぇ、ドラムを録ったのは(笑)。
長島:僕はいつも、シングル曲やアルバムのリードとなる曲のベースに対しては、どれだけシンプルでいいラインが作れるかっていうことを考えているんです。だから、石毛さんが作ったベース・ラインを結構いじっちゃうんですけど、デモを聴いた時は、「もっとよくなるぞ」って思えて、それが楽しみに感じましたね。
石毛:デモのままでもいいし、変えちゃってもいいよという感じで、基本的にはメンバーに全部任せちゃいます。もちろん、そのうえで「これは違う」と感じれば、そこは言いますし。
長島:以前は、ベース・ラインで曲がそんなに変わるとか、僕はあまり考えてなかったんです。自分の弾きたい感じが曲と合えばいいや、くらいで。でも最近は、自分が作るベース・ラインで曲の印象が大きく変わるという重要性を、昔よりも意識しています。だから曲中のフレーズも、「もっと分かりやすい方がいいかな」とか、「もっと手数を減らした方がいいかな」って考えながら、石毛さんともかなり相談しました。
石毛:(長島)涼平は、すごく曲作りに対する意識が高いなって……今、初めて知りました(笑)。
長島:原曲を作るのは石毛さんだけど、僕らも同じくらいの気持ちでそれぞれのパートを作っていかないとダメだと思うので、ベース・ラインに関しては、自分に一番の責任があると思って制作に臨んでいます。
石毛:ビックリしました。カッコいいこと言いますね(笑)。
長島:既婚者だからね(笑)。
岡本:シンセとしては、「Ring a Bell」や、アルバムの曲もそうなんですけど、シンプルだけどメロディがはっきりと分かりやすい曲が多いというも、今回の作品の特色だと思います。あとは、コーラスがすごくたくさんあって、ハモリだったり、全員で歌うパートが多いので、そこは結構シビアに考えました。音源でも、ニュアンスだけでなく、ちゃんとリズムを合わせていくとか、歌い方を全員で寄せるといったことは、今までよりもかなり意識しましたね。それで曲の聴こえ方がまったく変わりますから。
岡本:いえ、特にミーティングはしてないです。
石毛:さっきの涼平の話じゃないですけど、4人それぞれが高い意識で曲に向き合えば、自然と作品のクオリティは向上できると思っています。特にノブ(岡本)が言った、歌のリズムを揃えるという点は、僕がソロをやった時に、すごくスタッフに注意されまくったので(注:昨年、石毛がソロ活動を行った際、ライブ・メンバーに岡本が参加していた)。
岡本:その経験が、活きましたね。
石毛:涼平は涼平で、サポートの仕事も始めたり、そういった各人のいろんな経験が、今回の制作で上手く活かせたと思っています。バンドの外で受けた刺激に、自分たちがいい意味で影響されているんだなって、今、みんなの話を聞きながら思いました。
石毛:1音1音の意味というか、狙いが明確になってきたんだと思います。去年の1年間は、僕はソロ作品の他に、ある洋服ブランドのコレクション用の音楽を作ったりして、与えられたテーマで音楽を作るということをやったんです。そうすると、音の役割が、すごく重要になってくるんですよ。the telephonesの音楽であれば、自分たちがやりたいことをやればいいんですが、クライアントさんがいる仕事って、クライアントさんの要望に応える必要があって、音を狙って作らないと満足してもらえない。その、クライアントさんを満足させるという作業が、すごく面白くて。その経験をthe telephonesに置き換えることで、「この曲をもっとこう聴かせるためには、こういう音色を使った方がいい」っていう考え方が、自然にできたんです。だから今回の楽曲は、全部がいい感じに整理されて、曲がよりユニークに聴こえるんだと思います。
石毛:やっぱり、こんなに“バカなサウンド”が鳴らせるっていうことでしょうね。それが、the telephonesなんじゃないかって思います。今までは、4人が醸し出すほんわりとした“バカ”だったんですけど、今回は、サンプル・ボイスを使いまくったり、人の手まで借りて、すごく“バカ”なことをやってるんです。
長島:正式に“バカ”になった(笑)。
長島:(松本)誠治くんっぽく聴こえるけどね。
石毛:じゃあ、そういうことにしておきましょうか(笑)。
石毛:「Keep Your DISCO!!!」の雛型ができた段階で、昨年末にライブ演奏したんですよ。そうしたらスタッフに、「いまひとつパンチがない」って言われて、それにカチンときたんです(笑)。ただ、曲の構成はこだわって作ったから、そこはなるべく変えたくなかったので、それ以外の要素でどう曲を“バカ”にしていくか、パンチを出せるかを考えた結果です。ソロの制作では、僕はサンプリング素材を使ってエレクトロニカ的に作っていくんですけど、それをロックに落とし込んだら面白いことができるんじゃないかと思って、ソロよりもザックリとしたプログラミングですけど、「Keep Your DISCO!!!」の《オイ!ジャン・ジャン・ジャン!》っていうフレーズをサンプル・ボイスで作ってみて。
石毛:これを4人が本気で叫んじゃうと、熱さが出ちゃうというか、20歳でやるならいいけど、“バカ”の方向が変わっちゃうんですよ(笑)。だから、もうちょっと無機質にやって、人を食った感じというか、サンプルの方が逆に面白いっていうように聴かせようと思って。
長島:そもそも「《オイ!ジャン!》って何んだ?」っていう話で(笑)
石毛:「オイ!」っていうサンプルと、「ジャンプ!」っていうサンプルがあったので、「じゃあ、組み合わせよう!」って思って(笑)。それをビット・クラッシャーで2bitぐらいにして、歪ませました。
松本:ドラムで言うと、今回は16分のフィル・インが多くて、そういう意味でも、バカっぽいと言えば、バカっぽいですね。
石毛:ムダな青春感(笑)。
岡本:シンセも、今まではギターとユニゾンするフレーズが多かったんですけど、「Congratulations!!!」なんかは、シンセとギターでハモっていて、そこがメチャクチャ楽しいし、笑えちゃうんですよ。
石毛:シンプルにふざけようと思ったら、ダサい方が笑えると思って。曲はカッコよく、ハモリでダサさを追求しながら、ハード・ロックやメタル的なサウンドを避けることで、今っぽいニュアンスを出しました。
岡本:あと、元気を出したかったら、「Burn With Anger」! これには、僕の“特権”が入ってますから。
長島:シャウト!(笑)
岡本:自分で言うのは本当に申し訳ないんですけど、アレ、僕にしかできないので。ぜひ聴いてください。ありがとうございました!
長島:じゃあ僕は、シングル推しで! 「Keep Your DISCO!!!」のベース、これは音色もそうなんですけど、少ない手数でガムシャラ感をうまく出せて、自分でもすごく気に入っています。アルバムだと、「Romantic Disco」。普通なら、鍵盤がメロディ・ラインを弾いて、ベースはローというポジショニングなんですが、この曲は反対に、ローはアナログ系のシンセ・ベースで、僕の生ベースが上モノ的な動くフレーズを弾いています。ベースって、ずっとローのルートを弾くだけじゃなくて、こういったこともできるっていう部分は、プレイヤーの方には面白く聴いてもらえるんじゃないかって思っています。
松本:僕は、「Pa Pa Pa La Pa」ですね。珍しく派手なフィル・インが多くて、ギター・リフとドラムのビートを合わせる感じが、とても気持ちよくて。ビートがデイヴ・グロール(ニルヴァーナ/フーファイターズ)で、フィルがジミー・チェンバレン(スマッシング・パンプキンズ)っていう、90年代ドラマーが詰まってる感じなので、ドラマーの方には、コピーして派手に楽しんで欲しいですし、リスナーのみなさんにも、一緒に歌って楽しんでもらいたい曲です。
石毛:いろんなギター・サウンドを作ったので、ギタリストにはそこを楽しんでもらえたらと思います。シングル曲で言うと、「Keep Your DISCO!!!」は、いわゆるロック・サウンドをテーマにしながら、ギターは難しいことをしないでパワーコードをダブルにして聴かせています。「Ring a Bell」は、もうちょっとシューゲイズというか、ポスト・ロック風にやったりしているので、エフェクター好きの方だったら、「この音はどんなエフェクターで作ってるんだろう?」とか、「どんなギターを弾いたんだろう?」、「アンプは何だろう?」って想像してみて欲しいですね。それに対して、僕は「その答えは違うぜ!」って言いたいんです。それくらい、いろんな機材の使い方をしました。シンセに関しては、アナログのよさを押し切るところと、デジタルやソフト・シンセでしか出せないよさが、最近やっと分かってきたので、今回は、それを上手く使い分けられたと思っています。このあたりは、宅録をやってる人に、ぜひ参考にしてもらいたいですね。個人的には、ビンテージのJUNO-60サウンドのよさを、多くの人に分かって欲しいです。本当に名器ですよ。
石毛:ツアーでは、CDとはまた違う、ライブのよさや勢いを楽しんでもらいたいですね。ライブでCDと同じ音を再現しようとすると、シンセを10台以上使わないといけないので(笑)、そこはSP-555にサンプリングして、リアルタイムにパッドを叩いて鳴らしてます。僕らのライブで、SP-555は大活躍してますよ。今だと同じシリーズのSP-404SXがあるんですよね? これはエフェクトが強力なのが魅力です。ライブでは、SPのパッドさばきも注目してください(笑)。
松本:すごく便利ですね。僕はライブの時に、SPD-SXをハイハットの左側にセットして使っているんですけど、パッドを叩く時は、どうしても身体の向きをねじってプレイしなきゃいけなくなるんです。でもそれが、例えば1曲の中で1~2音色程度を鳴らすのであれば、BT-1をスネアやタムに取り付けておけば普段通りの姿勢でプレイできるので、ドラマー的にも、ストレスが大幅に解消するように思います。
石毛:フォームを崩さなくて叩けるっていうことだもんね。
松本:フレーズの中で、ハンド・クラップをSPD-SXで鳴らす場面はよくあるので、BT-1を使ってSPD-SXの音源を鳴らせるようになると、これは楽ですよね。パッドを叩こうと思うと、コーラス用のマイクも、結構邪魔になりますし。同じような目的でパッドを使っているドラマーは多いと思うので、BT-1をドラム・セットに上手く組み込めると、これは嬉しいですよね。ライブで実際に使ってみたいなって思いました。
長島:まず第一に、欲しいです!
長島:僕がこういうタイプのエフェクターを使ってないということもありますが、実際に使ってみるまでは、もっと飛び道具的なエフェクターなのかなと思ってました。でも、全然そんなことはなくて、そのバンドや曲に合うテイストにサウンドを作り込めば、1曲を通して丸々かけてもよさそうだし、ものすごく存在感のあるベースにできそうに思いました。特にベースの場合は、ギターに比べてエフェクターの種類も少ないので、MO-2のようなカッコいい音が出せるエフェクターは、嬉しいですね。便利だし。
長島:合うと思います。倍音をプラスできるんだけど、ボスSUPER Octave OC-3とも違うし、それとコーラスが組み合わさったような、ちょっと不思議な新しい音色ですね。今までだと、いろんなエフェクターを組み合わせて作っていた音が、これ1台で作れちゃう感じがしました。面白かったです。
岡本:とりあえず、欲しいですね。
岡本:いや、でも本当に思いました。RD-64は、すごく分かりやすくて、とてもシンプル。僕は難しい機材って全然分からないんですけど、エフェクトのかけ方もとても分かりやすくて、使いやすかったです。それに、ピアノ鍵盤でこの小さいサイズって、あんまりないですよね?
石毛:鍵盤がハンマー・アクションだからね。
岡本:これから楽器を始めようっていう人に、すごくいいんじゃないかと思います。V-Combo VR-09は、すごく便利。オルガンとピアノとシンセっていう、入ってる音色も分かりやすい。初めてキーボードを使う人でも、すぐにエフェクトをかけられて、音色の変化を楽しめるって、とても面白いと思います。両方とも、価格を考えてもお買い得なんじゃないかと。
石毛:the telephonesみたいなバンドをやりたい人が、最初に買うキーボードとしても、V-Combo VR-09はいいと思いますよ。ハーモニック・バーが付いてるオルガンがあって、ピアノ音源もしっかりしていて、もちろんシンセの音色も豊富だし。何と言ってもローランドの音源ですから、素晴らしいです。1台で頑張って、いろんなプレイをしたい人にピッタリでしょうね。ライブにすごく向いていると思います。僕が使うなら、サウンドのバリエーションが豊富だから、曲やデモ作りにもすごく便利そうだと思いました。
石毛:TE-2は、賞賛の意味を込めて、ものすごく“アホ”なエフェクトを作ってしまったなぁと感動しました(笑)。めちゃくちゃ面白かったです。Webサイトで製品紹介を見た時は、一体どんなエコーなのかと思ってたんですけど……。
石毛:そうですね。そこが“Tera”なのかな、と。僕が知っているエコーではなくて、ギターを弾いているという感覚よりも、何か面白い、別次元のエフェクターをプレイしているような気分になりました。とにかく、目立ちたいギタリストは、すぐに使った方がいいんじゃないですかね。あと、AD-2は、ものすごく優秀な歪みだと思いました。どんなに歪みを上げても、音域が狭くならなくて、ある意味で不思議な感じがしました。[A-DIST(アダプティブ・ディストーション)]ツマミを上げると、ゲインが増えるというか、コンプ感、音色が変わるような印象。だから、ゲインとEQが同時に動くような感じでしたし、このツマミを下げると、ゲインが下がるのに音が太くなるというのも、初めての感覚でした。それに[LEVEL(レベル)]ツマミに忠実というか、歪みを下げても、このツマミで設定した音量は絶対にキープしてくれるというのが、すごいですね。ローとハイのツマミの効きもすごくいいし。ライブで使えばパンチのある歪みが鳴らせると思うし、宅録でも大活躍してくれそうな気がしますね。宅録ミュージシャンも、使った方がいいと思いますよ。この歪みは。
石毛:本当に、2010年代のエフェクターだと思いました。最新技術っていう意味は、こういうことなんだろうなって。そこが、すごくローランド/ボスっぽいですよね。TE-2にしても、シンセのDビームを初めて使った時のような感覚にもなったし、これはステレオ入出力にも対応しているから、いろいろと実験してみたいです。プラグインと組み合わせても面白そう。本来はライブ向けのエフェクターだと思うんですけど、僕は発想がすべてレコーディングに直結してしまうので、ギター以外の楽器にもいろいろと使ってみたいです。きっと新しい、不思議な音を作り出せるんじゃないかな。