吹奏楽や合唱練習において欠かせないキーボード「JUSTY」-ジャスティ-。音楽の基礎となる「チューニング」「ハーモニー」「メトロノーム」機能のほかに、リモート操作、持ち運びもできるという利点から、全国の部活動や団体に導入されています。このシリーズでは実際にJUSTYや周辺の電子機器がどのように活用されているかご紹介していきます。今回は、埼玉県にある「埼玉県立伊奈学園総合高等学校」の吹奏楽部顧問、宇畑知樹先生にお話を伺いました。
JUSTY STYLE
吹奏楽や合唱練習において欠かせないキーボード「JUSTY」-ジャスティ-。音楽の基礎となる「チューニング」「ハーモニー」「メトロノーム」機能のほかに、リモート操作、持ち運びもできるという利点から、全国の部活動や団体に導入されています。このブログでは実際にJUSTYや関連する電子機器の活用状況や、上達のための練習のポイントなどをご紹介していきます。今回は、埼玉県にある「埼玉県立伊奈学園総合高等学校」の吹奏楽部顧問、宇畑知樹先生に主に「基礎練習へのこだわり」についてお話を伺いました。
まず、吹奏楽やマーチングのコンクール常連強豪校として広く知られる伊奈学園吹奏楽部について教えていただけますでしょうか。
伊奈学園は公立ですが、好きな科目、将来の希望に合わせて時間割を自分で作成していく全国で初めての総合選択制の学校です。吹奏楽部は中学・高校合わせて現在307名で、コンクールに出るチーム、マーチングコンテストに出るチーム、秋の高等学校吹奏楽大会に出るチーム等に分かれて活動しています。学校としても国際交流が盛んで、吹奏楽部も国内はもとより、海外での演奏活動もおこなっています。
伊奈学園では基礎練習にしっかり時間を取っておられるようですが、基礎練習の重要性についてどのようにお考えで、具体的にどのような内容でしょうか?
目的のない練習というのはありませんので、全てにおいて目的意識を明確にして取り組むことを指導しています。具体的には練習前に必ずミーティングをして、スケジュールとその日の自分の目標を仲間と共有し、自分が立てた目標が現実的で無理の無いものかどうかを客観的に確認します。そのあとで、身体をほぐしたり、ブレス・トレーニング、発声練習、リトミック、ダンスなど、楽器を吹く前にやることは盛りだくさんです。
吹奏楽部顧問の宇畑先生。今回は基礎練習の内容や目的、大切さを中心にお話を伺った。
楽器を吹く前の基礎練習について詳しくお話いただけますか?
身体をほぐす運動はまず、顔のストレッチである、フェイス・トレーニングから入ります。身体同様に顔の筋肉の柔軟性は音楽の表現力にもつながる大事な要素だからです。次にブレス・トレーニングです。まず、腕を上下左右に広げながら息を深く吸って、より多くの息を吐きます。音を遠くまで届ける意識でリラックスしながらやるのがポイントです。また、ユニークだと言われるのが牛乳パックを使ったトレーニングです。吸った息を牛乳パックに吹き込むことで負荷をかけおなかの支えを意識することを目的に行っています。
発声練習は、声を出すだけでなく、リトミックや、ダンス、ソルフェージュの要素を盛り込んだ内容となっており、マーチングの基本動作やカラーガードの旗を振る練習もあります。これらの基礎練習は、生徒が音楽を好きになって、表現する楽しさを知ってもらうことを目的に行っています。楽器の演奏スキルを上げる事も大事ですが、それよりもこの音楽的な表現活動が充実していることが重要だと考えています。
牛乳パックを使ったブレス・トレーニングの様子。
その基礎練習の中でローランドのボーカル・トレーナー(VT-12※)を使っていただいています。
音程は目に見えないものなので、ソルフェージュなど発声時の音程チェック用ツールとして一人1台VT-12を使っています。言葉で指摘・指導するよりも各自が客観的な事実を見て確認する事で納得性の高い練習につながっています。特に音程の上がり下がりや歌いだしに注意して、といった具体的な指導が可能になりました。一方でのびやかに声を出させたい時はあえてVT-12を使わず、表現力に意識を持って歌ってもらうこともあります。
※VT-12は声の高さに合わせて本体に音程が表示されます。
パーソナルなボーカル専用のチューナーで “音を見える化”
ミーティングから始まる基礎練習のステップが表現力の土台を作っているわけですね。そして、ここからの楽器の練習につなげていくのでしょうか。
そうです。このあとの楽器を手に取ってからの練習、伊奈学園ではスキルアップと呼んでいますが、これもひとつひとつの積み重ねが大事です。まずは自分の耳で音を合わせにいけるようになることを目指します。その際に自分の一番いい音を出せた後に、チューニングの確認をするようにします。チューナーではアタック、コア、リリースの部分を各自がチェックし、そしてまっすぐ音を伸ばす練習をしっかり行います。その上でパート、そして合奏と積み上げていきます。
基礎合奏はバランス練習から始まり、音階練習、和音練習、リズム練習と進みますが、楽器を使った練習に入ると、JUSTYは普段使いの無くてはならない機材となっています。例えばパート練習では、JUSTYで鳴らしている音を聞いて、自分がスムーズにまっすぐに音を出せるか徹底して確認します。その後で、ユニゾン、5度、3度で合わせるといった耳を使った練習や、メトロノームを使ったリズム練習を行っています。
楽器の音を波形にして客観的に目で確認。
JUSTYの音を聴きながら、音の出し方やハーモニーを確認。
デジタル機材も積極的に活用されていますね。
便利な使い方といえば、iPadを使ったJUSTYの遠隔操作でしょう。あれは本当に助かります。私の体はひとつなので、ホールの客席で演奏をモニターしながら、指揮台の横に置いてあるJUSTYを操作して指導ができるのは画期的でした。また、体育館でのマーチング練習の時も2階席から全体の動きを俯瞰でチェックしながらの指導ができます。テンポの指示や、練習に合わせてメトロノームやチューニング用の音色を変えることなども離れた場所から自在に行えます。また、伊奈学園ではその日の気温でチューニングの基準を変えるのですが、こういう操作をiPadの大画面でできるのも非常にありがたいですね。JUSTYアプリをインストールしたiPadは普段の練習指導から常設機材として使っています。
ホール練習の様子、リモコンアプリ(iPad)でJUSTYを遠隔操作。
ホール練習と同様にリモコンアプリを使った体育館でのマーチング練習の指導風景。
機材等を活用する際のポイントはどんなところでしょか?
伊奈学園では、生徒が目的・目標を理解するのを手助けするツールとして、JUSTYや音の波形が見えるチューナー、レコーダー(CD-2u)といった機器を使っています。機材や道具の使用は、使う目的を明確にしないと意味がありません。何の力を養うのか、どのように力を伸ばしたいのかが大事で、その点は、教員が生徒に適切な指示をすることが必須です。例えばレコーダーはその場で自分たちの演奏を録音し、聴き返すことで「鏡を見るように」今の自分たちの状態を確認できます。指導者にとっても、便利な機器や機能を使うことで、より能率の良い指導につながると思っています。
指揮台の傍らにはJUSTY(左手)とレコーダー(右手)を常設。
今回お話を聞いてあらためて基礎練習の目的と意味について再認識することができました。大勢の部員が集まる吹奏楽部が一体感を持って音楽活動を楽しめるために、何を大切にしていけばよいと思われますか。
伊奈学園吹奏楽部は「音楽しよう」を掲げて活動しています。そのためにも何より音楽を好きになって、自分たちの音楽的な表現力を豊かにしていくことはとても大切なことなんです。基礎練習が出来ていないのに応用に進んでも、結局基礎に戻ってくることになります。せっかくこれだけの生徒が集まって音楽をしていくわけですから、日常の小さなことでも目的意識をもって真剣に取り組む事が一体感をもって音楽を楽しむ秘訣だと考えています。
「音楽しよう」が掲げられる音楽室。音楽を楽しむために部員全体が一体となって毎日を大切に積み重ねていく場所。
参考動画:「JUSTY」の特徴とその使い方(音楽之友社:ONTOMOチャンネル 2017制作)
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