現場によって、またダイアフラムの種類ごとによっても求めるものは変わってきますが、共通の好みとしてはミドルがしっかり太さを感じられて、ハイエンドが柔らかく、クリアな物が好きです。
細かいニュアンスを潰さず、且つしっかり抜ける音が良いです。ただ、音抜けが良くても固くて派手な印象が強いものはあまり好きではないです。
エンジニアの葛西敏彦さんと宅録のマイクで相談している時に教えてもらいました。葛西さん自身は雑誌の企画でAstonを試したそうですが、かなり良い感触だったそうで、凄く期待が高かったです。
実際使用してみて、ハイエンドまでクリアで解像度も高いというのが第一印象です。
マイクの価格から想像していたクオリティを遥かに超えてきました。
まず、全てに共通していると思うのは、凄く工夫があってユーザビリティがとても高いということです。
ショックマウント無しでの使用が可能であったり、ポップガード機能が組み込まれていたりと、一つ一つがどれも面白い試みですし、良く出来ていると思います。
トランペット以外にもドラム、パーカッション、アンプ、ボーカル、様々な管楽器で録ってみましたが、振動等を拾ってしまうことはありませんでした。
コンデンサーマイクのOriginとSpiritの話を先にすると、スタジオでよく「癖のない素直で使いやすい音」と言われるハイエンドマイクに近い傾向のマイクだと思います。
Astonと同じような価格帯でそういった特性を持つマイクと言えば、主観ですが大体ハイが固くてきつい印象です。
しかしOriginは凄く柔らかくてハイエンドマイクの様に素直な音が録れる印象です。
低域から高域までしっかり入るので、オールマイティーに使いやすいと思います。
SpiritはOriginよりもハイ、特にハイエンドがよりクリアに伸びている印象です。トランペットのように高音楽器で主旋律を演奏することが多い楽器にとっては、このハイエンドの感じは存在感が強く出ますし、抜けもいいのでとても良いと思います。好みの音です。
トランペットで録音した場合、Spiritに比べるとOriginの方が全体的に重心が少し下がった感じがしますが、決して埋もれるわけではなく、ガッツがある印象です。使いどころによってはこちらの方が良いシチュエーションもあると思います。
どちらもハイに尖ったピーキーな感じがなく綺麗に良く録れている、という印象です。
管楽器的な表現で言えば、同じモデルの楽器でもOriginが銀メッキの楽器、Spiritが金メッキの楽器、みたいなイメージが近いかもしれません。
ダイナミックマイクのStealthは、OriginやSpiritとはコンセプトが違い、他にない独特なマイクです。
Stealthはマイク自身にプリアンプが内蔵されており、最大の特徴としては、4つのモードでキャラクターを変えることが出来ます。さらにプリアンプ機能のオン/オフを入れることで8パターンの音を1台のマイクで使い分けることが出来ます。
このプリアンプが想像以上にいい味出すなと感じました。アナログ感があってしっかり線が太くなる印象です。例えばマイクをオーディオインターフェースに直刺しする環境の場合ではなかなか出せないような質感です。
デジタル処理で様々なマイクをシミュレートするものはいくつかあると思いますが、Stealthはそれとは全く別物で、4種類のディスクリート回路をアナログで切り替えるため、本当に別々のマイクのように変わります。
どのモードもキャラクターがはっきりしているので、初心者にも使いやすいと思います。「ヴォーカルを宅録したいけど、EQとか難しくてわからない」と思う人がいたら、無理してコンデンサーマイクを使うよりも、ヴォーカルに最適なV1モードやV2モードを使った方が苦労せず「いい感じ」に録れると思います。両モードとも明るい部分がしっかり前に出てくれます。V1モードはヴォーカル以外にもオールラウンドに使えると思いますし、V2モードはより明るく抜けが欲しい時に向いてると思います。
ギターに最適なGモードも面白くて、ギターであればアコースティックでもアンプでも使えると思います。特性としては、フラットというよりは最初からハイとローが少し締まっていて、カラッと乾いた感じの質感が録れるモードです。
独特な特性のモードですが、その名の通りギター録りには凄くはまると思います。
そしてDモード。4つのモードの中でこれが一番好きですね。
リボンマイク的なダークモードということですが、マイクってどうしてもハイの反応が速いために先に聞こえてしまい、「生音ってもっとふくよかなイメージなんだけどな」と思うプレイヤーも多いと思います。
リボンマイクのいいところは、ハイの反応がゆっくりというか、生に近い印象です。そういうハイの反応がゆっくりという意味でリボンマイクっぽさがあると思います。
もちろん質感的にはダイナミックマイクなのですが、温かさや太さを録りつつも、ミドルがボワボワしすぎず、かと言ってハイがないということではありません。
意外とありそうで無かった感じだなと思いました。
ただこちらのマイクは惜しい点もあって、プリアンプ機能を使うと出力がかなり高くなってしまうため、トランペットのような音量の大きい楽器ですと、機材環境によっては音を受ける側でPadを入れても音割れしてしまう場合があります。
とくにV2モードの出力が高い感じがします。プリアンプの質感が良いだけに、Padスイッチがマイクについていたらな、と思いました。楽器の中でもトランペットは特に音量が大きい楽器なので、仕方ないといえば仕方ないのですが・・。
もちろんプリアンプ機能を使わなければ音割れすることはないので問題はありませんが、プリアンプ機能を使いたい人はインターフェースなどにPad機能があるか調べることをお薦めします。
ちなみにGモードは一番出力が小さいので、アンプにベタ付けでプリアンプ機能を使っても、Padを入れれば問題なく使えると思います。
また、標準のマイクスタンド・アダプタは90度(左右で180度)以上曲がらないため、セッティングによってはショックマウントが必要になってきます。
とはいえ、これだけキャラクターを変えられて、どのモードでもマイクの個性を持ちながら使える音にしてくれるのはすごく便利です。
Stealth一本で、マイク4本+プリアンプを持っているかのように様々なシーンで使うことができると思います。
面白いマイクですし、どれも高品質でとても重宝しています。
先程ユーザビリティとして挙げたポイントは、特に宅録での効果が高いと思います。
マイク周辺機材が揃っていなくても大体のものに対応できますし、宅録ですとセッティングの手軽さという意味でも作業効率が上がります。
またSpirit、Originに関してはコンデンサーマイクの中でも出力が高くて良いと思います。
宅録でノイズ対策が完璧ではない場合、ゲインを上げることで起こり得る機材ノイズ、ケーブルノイズ、電源ノイズを、結果として下げることが出来ます。Padも付いているので、大きい音もしっかり受けることができます。
一人で録音する場合、録り終わってから調整してダメだったらまた録り直して・・・、という作業になってしまうのですが、音の解像度が高く低域から高域までしっかり入るので、後で調整する時に融通が利く場合が多く、安心して使えます。
また、Spiritのトランスらしさのあるクリアな高域は、特徴的で良い質感だと思います。
Stealthは、1本持っていれば録り音それぞれの質感に個性を持たせながら録ることができ、特にギターと歌を録る人にとっては、これ一本で十分なクオリティが出せると思います。ダイナミックマイクでV1モードやV2モードのようなクリアな音が録れるのはかなり使い勝手が良いです。
3つのマイクに言えることは、伝統的な良いマイクの音というのを汲んで高品質で良い音になっている一方で、宅録をはじめ、スタジオのように機材が十分に揃っていない環境であっても、それを補えるような機能で手軽にワンランク上の録れ音を作れるということです。
今後、スタジオでも宅録でも、よりユーザーが増えていくんじゃないかなと思います。
この音と機能は新しいメーカーだからこそできる事だと思います。
一言で言えば、おすすめです。
どのマイクも、この値段では考えられないほど良い音です。
Origin、Spiritはコンデンサーマイクを初めて買う人や、安価なものからの買い替えでアップグレードしたい人でも、買って失敗したなと思うことはないと思います。
音環境的にダイナミックマイクの方がいいユーザーも多いと思いますが、高品質且つ選択肢が多いStealthは、宅録にとても向いているマイクだと思います。
ライブ、リハーサル、レコーディング、宅録で使います。
僕はトランペット奏者ですが、普段やっている音楽のジャンル的にも演奏時はほぼマイクを使っています。