ドラムを始めたばかりの人も、腕に覚えのあるドラマーも、誰から見てもカッコよく、かつ美しくドラムを叩きたいはず。ドラムは見た目、役割的にもバンドの中でかなり存在感のある楽器。その両面の魅力を存分に発揮して、カッコいいドラマーになるには―?セッティング、フォーム、衣装―みんなどうしてるんだろう?のあれこれを、実力派の4人組ロックバンド「ねごと」の澤村小夜子さんにうかがいました。
小夜子さんは、高校の軽音学部でドラムを始めたそうですが、当時は、どんな感じでライブをやっていたのですか?衣装にも凝ったり?
澤村 – 高校時代にねごとを組んで、最初のライブでは、とにかくインパクトを残したくて、パジャマを着ました。お花も被ったなぁー。みんなに楽しんで欲しかったので、“フラワーウーマン”みたいな感じで、ピンクの大きなお花を被ってました(笑)。それがオリジナル曲をやり始めた時で、本当の最初の最初、まだコピーをやっていた頃は、変なカツラやカチューシャを付けたり、でっかいサングラスをかけたりして(笑)。
となると、パフォーマンスの練習とかも?
澤村 -メトロノームを使った練習とか全然やらずに(笑)、それよりも、鏡で自分の姿を見ながら、「どうやったら、頑張ってるように見えないかな?」ということを、ずっと考えてました。その頃、初めてライブハウスに行くようになって、いろんな人のライブを観ていると、ドラマーが気張って力を入れていると、観ているこっち側も力が入っちゃうと思ったんです。だから自分は、滑らかというか、みんなが落ち着いて楽しく観てもらえるようなフォームで叩きたいと思って。なるべく、しなやかにドラムが演奏できるようにと、そういう練習をいっぱいやった気がします。夜とか、部屋の電気を点けると、窓ガラスに自分が映りますよね。それを見ながら、お菓子の空き缶やクッションをドラムの代わりにして“妄想練習”をやってて(笑)。軽音楽部の部室で、実際にドラムに触れるのって週に1回だけでしたから、妄想練習がすごく多かったです。それは、今も同じですね。
じゃあ、筋トレなどは?
澤村 – しなかったですね。腕立て伏せって、私、1回もできないんですよ。0.2回くらいはできるかな? 下りるまではいけるんですけど、上がれないんです(一同爆笑)。
下がるまでなら、誰でもいけますよ(笑)。でも、腕立て伏せ0.2回で、どうしてあんなパワフルな演奏ができるんですか?
澤村 -きっと、重力に逆らっていないからだと思います。腕を自然に下ろしているだけなんです。バスドラムも、足をペダルに下ろすだけ。でも強弱はつけたいから、その時は一瞬だけ、一応はつま先に力を入れる、くらいかな。だから、ライブが終わってからの方が、むしろ元気(笑)。ドラムを叩いて、「肩こり取れたなぁー」ぐらいの方がいいですよね(笑)
でも、力を抜いて叩くのって、一番難しいですよね?何かコツはありますか?
澤村 – 日々の生活の中で、「これ、楽だな」って思う瞬間があるんですよ。たとえば、お布団を干している時とか。
えっ、お布団干し!?
澤村 – 毛布とか、タオルとかを両手で持って“パン!パン!”とはたく時、「何で力を入れなくても、こんなに大きな音が鳴るんだろう?」って思ったりするんですよ。それで、「(手を振りおろす動作をしながら)この動きって、いつもドラムを叩いている時と一緒じゃん!」みたいな感じで、日常生活の中で自然にやっている身体の動きに置き換えてみるんです。そういった自然な叩き方をした方が、絶対に楽に演奏できるし、長くドラムを続けるには、身体が大事ですから。ドラマーって、腱鞘炎になりがちじゃないですか。よくみんな、足が痛いとか、腰が痛いって言ってますけど、私はそういう経験をなるべくしたくないと思っているんです。