多くのフォロワーと共に刻んだ、
25年目の「.(point)」。
DA METAVERSE 2016 quarter point
1991年のソロ・デビューから25年。常に最新のテクノロジーを自身の作品に取り入れ、進化を続けるミュージシャン 浅倉大介。2016年10月7日/8日に東京国際フォーラムで行われた記念すべき25周年ソロ・ライブの模様を、彼のRolandシンセサイザー活用術と共にお届けする。
25周年ライブのテーマは”AI”。検索エンジンやリターゲティングといった、人々の生活に溶け込んだ人工知能と、それに対するアラートを随所に表現した内容である。1994年にリリースされたaccessのアルバム「DELICATE PLANET」のコンセプトは「コンピュータが感情を持つとどうなるか?」というものだった。それから23年、そのコンセプトが現実味を帯び始めたことは偶然なのか?感情を持ち始めたコンピュータに対し、我々人間が取るべき行動は?そんな人類存続レベルの大きな警告がサウンドとビジュアルで表現されていた。
新旧様々なシンセサイザーで形成されたステージ。そのうちの半数以上を占めるのがRolandというのは実に感慨深い。ライブ本編は25年の作品を現代の音質にトリートメントして凝縮した「THE BEST WORKS OF DAISUKE ASAKURA」に収録されている「First Quarter moon」の音声からスタート。てっきり最後に流れると思いきや・・・である。やられた。
25年間変わらず貫き通している、ショルダー・キーボードKX5を引っさげてのスタイルで演奏された、ストリングスとシーケンスの絡みが美しい「Yata –Raven Chronicle」から本編がはじまる。3台の大型LEDスクリーンが、今回のライブ・テーマを視覚的に表現する。
2曲目の「創出」は、Roland最新のPlug-Outシンセサイザー SYSTEM-8が早速その音を会場に響かせる。イントロでは、SYSTEM-8開発スタッフのこだわりのひとつである”リアルタイム演奏で心地よく変化するフィルター”を活かしたNoiseや、ベーシックながら強い存在感を与えるPolyphonic Brass、そしてACBテクノロジーで復活したJUPITER-8のエンジンを使った攻撃的なLeadなど、その特徴をグイグイ引き出す演奏とサウンド・メイクを見せる。各音色ではSYSTEM-8の隠しメニューともいうべきパラメーター「CONDITION」を絶妙に調整することで、ヴィンテージ特有の揺らぎやバラつきを緻密に再現していた。
一方で、同楽曲内のクラシック・ミュージックを感じさせるスリリングな旋律には、中央にセッティングされたFantom-G7に収録されたSuperSawを使ったサウンドを使用。SYSTEM-8の方が得意そうなサウンドだが、あえてFantom-G7を演奏するのは、それぞれの機種が持つ音の存在感と、音楽的なフレーズとのバランスを考えたチョイスなのだろう。
続く「Meme crack」では、今やお馴染みとなったTB-3の演奏で魅せる。その場でフレーズを打ち込んだり、Scatter機能を使って劇的に変化させる奏法は、オリジナル・モデルのTB-303や最新モデルのTB-03ではできない表現の一つ。AIRAシリーズならではの演奏方法だ。そしてここでもSYSTEM-8が活躍。SYSTEM-1から受け継ぐ”COLOR”つまみで他機種では真似できない過激な変化を生み出していく。「フィルターの変化やLFOとは違う、新しいシンセの演奏表現になる」とお褒めのことばをいただいた(嬉)。
プログレッシヴ色の強い「Winter Mute」や、ベスト・アルバム1枚目の1曲目「The ELECTROMANCER (KANASHIMINO KAWAWO YOROKOBINO OKAWO)」でもSYSTEM-8のPolyphonic Brassが大活躍。和音弾きが重要となるこれらの曲において、オルガンと共に抜群の存在感を醸し出す。
存在感といえば、MOOG lll Cについて触れないわけにはいかないだろう。たった一音で全てを”食って”しまうこの楽器。キーボードでの演奏ももちろんだが、前述の「First Quarter moon」のフレーズをその場で作り出すという非常にレアなシーンもあった。ベスト盤を聴いて予習してきたファンはニヤリとしたはずだ。
余談だが、日本を代表するもう一人の”箪笥使い”である松武秀樹がパーカッシヴな音を得意とするのとは対象的に、浅倉大介の奏でるそれは音階を感じるフレーズが多いのが特徴。同じ楽器(厳密には違う楽器なのだが)でも奏者が違うとここまで音の印象が変わるという例の一つと言えるだろう。2台のMOOG lll Cの共演もいつか見られる日が来るのだろうか・・・見たい。
高速の四つ打ちキックとオーケストラ・サウンドが心地よく絡み合う「techno beethoven」では、Fantom-G7のOrchestra Hitを重ねる。この音は手元にあるAIRAミキサー MX-1のScatter機能を使い、実際に手で演奏したフレーズを元にして異なるフレーズを瞬時に生み出していた。MX-1のエフェクトで手弾きのパートのフレーズを生成する手法は、全てのキーボード・プレイヤーにオススメの表現方法だ。
そして”部活”と呼ばれ親しまれるクラブ・イベントを彷彿とさせる中盤のセット・リストでは、文字通り会場が揺れに揺れた。そのワードが世間的にも注目されている「topology」、トランス色の強い「Paranoia Method」、近年のソロ楽曲でも、演奏される度に凄まじい盛り上がりを見せる「3×10^8 LUCKS」、「march hare」では、JD-Xi DA 25周年記念モデルが大々的にフィーチャーされ、事前に情報をキャッチしたファンから大歓声が上がる。
ファンにはお馴染み、愛犬ベルカさまとその周辺にある品々からインスパイアされて作成された、世界に一台だけの特別モデルだ。Rolandからの25周年記念品が、この記念すべきステージに華を添えられたのは感無量である(実際ちょっと泣いた)。
25周年ライブということもあり、ステージには浅倉大介に所縁のあるミュージシャンが駆けつけた。両日共にIceman/Mad Soldiersの伊藤賢一が参加し、Icemanの楽曲を元に生み出された「WISH MATRIX」「GATE 1」などを共に演奏。そして8日には、アンコールでaccessのデビュー曲「VIRGIN EMOTION」を披露するため、永遠の相方と称される貴水博之が参加。ソロ・ライブ→アンコールでaccess、という24年前を思い出させる演出に、ファンの歓声もなかなか止まらない。もちろんこれは、2017年に25周年を迎えるaccessのプレリュードであるはずだ。
決して過去を振り返るわけではなく、”現在”の音とパフォーマンスで”未来”へのアラートが展開された今回の公演。数多くのRolandシンセサイザーが支えていたわけだが、その全てがヴィンテージ・モデルではなく最新モデル。聞けば「使いたいものを揃えたら、自然とこうなった」という。その常に前に進むスタイルに惹かれるファンは本当に多いのだ。これまで共に歩んだ多数のフォロワーと共に。25年という膨大な時間の”蓄積”を共有した浅倉大介が次に向かうのは・・・。
All live photos were taken by Kazuko Tanaka and music instruments photos were taken by Roland.
Information
浅倉大介
THE BEST WORKS OFDAISUKE ASAKURA quarter point (品番:MHCL-30413~4)
access
24sync(A盤) (品番:DWDH-023)
access
24sync(X盤) (品番:DWDH-024)
access
24sync(S盤) (品番:DWDH-025)
More info
2015年に豊洲PITで行われたソロ・ライブ「DA LIVE METAVERSE 2015 Re-Birth」が待望のDVD化!発売直後のJD-XAなど、Rolandシンセサイザーたちのサウンドがじっくり堪能できる全てのシンセ・ファン必見のライブDVD。詳細はこちら。そして今回のDA METAVERSE 2016 quarter pointもDVD化に向け着々と進行中とのこと。詳細は浅倉大介オフィシャルWebにて!
全国50箇所以上を巡るクラブ・ツアーが2017年1月よりスタート!
Daisuke Asakura Club Tour Sequence Virus 2017 -First cours-
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