Gom:そうですね……クリエイター・ユニット?
shito:チーム、かな。僕らは、音楽に限らず、映像にも力を入れていて、イラストや動画を制作するメンバーもいます。だから、音楽から映像まで、すべてを完結できるチームなんです。
Gom:元々、動画投稿サイトで、僕が歌っていたり、shitoがベースを弾いたりしていて、ライブとかの現場で、よく一緒になっていたんです。そこから、僕が同人活動で曲を作ったり、ボーカロイドを使い始めた頃に、「オリジナル曲をやりたいね」という話をして。それが、3~4年ほど前のことだったと思います。
Oji:僕は当初、動画にはあまり携わらずに、演奏メインでずっとやっていたんですが、さかのぼって話せば、そもそも僕は、shitoくんと幼馴染なんですよ。
shito:小学校から一緒なんです。東京に出てきたのは、それぞれ別々の目的だったんですが、2人とも、遊び感覚で動画投稿サイトを始めていて。そこから、僕がGomさんと組んだのをきっかけに、「ちょっとギターが上手いのがいるんで」ってGomさんに言って、Ojiを誘ったんです(笑)。
Oji:それで、晴れてHoneyWorksファミリーに加わりました(笑)。
cake:僕は、オーディションなんです。当初は、みんなとは無関係に活動していたんですが、知り合いから「HoneyWorksがキーボードを募集してるよ」っていう話を聞いて。そういった流れで、去年5月に参加しました。
Gom:だいたいは、僕とshitoくんのコンポーザー2人が、曲のメインとなる骨格を作って、そこから各パートをみんなにブラッシュアップしていってもらって、完成させていくという流れが多いですね。「アイのシナリオ/CHiCO with HoneyWorks」に関しては、楽曲の核の部分をshitoくんが作って、歌詞をshitoくんと僕の2人で書きました。
Gom:ワンコーラス分のデモができた段階で聴きましたが、最近はあまり作っていない感じの曲だな、と。でも、ギター・ロックな刻みのある曲っていうのは、これまでにずっとやってきたものでしたから、新しさと懐かしさが融合したような、新鮮さを感じました。
shito:曲作りについては、パソコンを使って超ラフな感じで打ち込んでいきます。あとは、自分でギターとベースも弾くので、それらを入れていって。以前は、ピアノとかもラフで入れていましたが、cakeくんが入ってからは、もう彼に投げる形です。この曲は、アニメ(注:同曲は、TVアニメ「まじっく快斗1412」第2期オープニング・テーマ)に合わせるイメージで、ロック色を強くしようと考えました。普段は、あまりバリバリのデジタル・ロック的な曲を作っていなかったので、その方向性に挑戦してみようという気持ちもあって、cakeくんに、「ちょっとデジタル寄りにしたいんだけど」と相談して。
cake:2人でイメージを話し合ったり、参考となるリファレンス曲を聴いて、試行錯誤しながら、いろんな音色を重ね録りしていきました。
shito:その場でいろいろと音色を試してくれて、すぐに録音していきました。
cake:ピアノはソフトシンセを使いましたが、シンセ・パートに関しては、FA-06を弾きました。FA-06は、音作りに制限がないところが気に入っています。僕は、プリセット音色をエディットして使うことが多いんですが、少しいじっただけでも、それがとても効果的で、自分の音が作りやすいんです。特に、この曲に関して言えば、トーン・エディット画面で、音色はイチから作りました。このトーン・エディット画面がシンプルで分かりやすいので、それほどシンセサイズしないという人でも、使いやすいと思います。これもFA-06の気に入っているポイントですね。あとは、内蔵のシーケンサーで作曲も手軽にできる点も気に入っています。HoneyWorks以外でFA-06使う際は、たとえばライブで、シーケンサーを使ってドラムとテンポをシンクさせたりと、機能面はフル活用しているんです。
cake:使っていますよ。ただ、僕がライブで使う際は、サンプラーとしてではなく、音色切り替え用です。僕は音切れを防ぐために、MIDIチャンネルを切り替えることで、音色を変えているんです。その選択用に、サンプリング・パッドを使っています。ボタンが自照式ですから、セロテープを貼って「SE」とか音色名を書いておけば、暗いステージ上でも絶対に間違えないので、これはとても重宝しています。
cake:オルガンの音がすごくいいので、これをよく使っています。あと、SuperNATURALのピアノ音色もいいですよね。僕はライブだとキーボードを2台使って、下はピアノ、上がFA-06というスタイルなんですが、ピアノも、MIDIを使ってFA-06の音源を鳴らすようにしているんです。だから、音源的にはこれ1台で完結させていて、アウトプットはステレオの2本だけ。音色は、MIDIチャンネルで使い分けて鳴らしています。
Oji:shitoくんが作った曲の場合は、「こういう感じで」といったイメージを、実際にギターを弾いて聴かせてくれるので、僕はそれをきれいに、細かく仕上げていくという感覚です。やっぱり、曲を作った人が鳴らしたいギターっていうものがあると思っているので、あまり「オレが、オレが」というようなプレイをしようとは思っていないんです。限りなく、作曲者がイメージするギターに近づけられるように、プレイするように心がけています。ただ最近は、Gomさんもそうですけど、ギターを弾かずに「このアルペジオ、モテる感じで」とか、「オシャレな音を入れて」とかって、ニュアンスを言葉で伝えられることも増えてきましたね。お互いに付き合いが長いので、それでも分かるんです(笑)。
Oji:ギターでザクザクと刻む感じは、最初からshitoくんの頭の中にあったものでした。ただ、Bメロで左右から鳴る2本のギター・フレーズは、2人で考えました。2本とも、似通っているんだけど、それぞれ違うフレーズを弾いていて、それが重なることで面白い効果を作っているんです。刻みパートと、そういったBメロでのバランスによって、曲の緩急をつけてサビにいく展開は、僕自身も気に入っています。ちなみに、この曲のギターは、すべてラインで録りました。
shito:生とデジタルをミックスして作りました。元々は、すべて打ち込みで作っていたんですけど、ギターや鍵盤を入れていくうちに、もうちょっと人間らしさというか、“生感”が欲しくなってきて。それで急遽、ドラムを録ったんです。サウンド的にはデジタルに寄せながらも、やっぱりフィルとかで人間らしさが出ますからね。そこから、波形をバチバチにエディットしたり、アタックの強い音を重ねて音圧感を出したりと、かなりデジタル色を強くしています。
Gom:この曲のようなアニソン系の場合は、デモがワンコーラスで形になることが多いので、その段階ですね。僕らの場合だと、shitoくんと2人で同じExcelシートの画面を開いて、イメージに基づく単語をバーッと書いていくんです。そこからワードを拾っていって、ストーリーを考えたりしています。それがアニメの世界観にも合うように、いろんなワードを当てはめて、試行錯誤しながら形にしています。
Gom:シンガーが決まっている場合は、そのシンガーのイメージは考えますね。メロディに関しても、ボーカロイド曲であれば、「こういうこともできるな」と多少考えることもあります。たとえば、ボーカロイドであれば、音域であったり、難しいメロディも歌わすことができますから。
shito:ボーカロイドだと、ちょっとトリッキーなフレーズが受け入れられたりしますから、わざと狙って、ちょっと早口なフレーズを作ってみたり。反対に、わざとボーカロイドっぽいフレーズを、ボーカリストさんに歌ってもらうといったアイデアを試したこともあります。
shito:まず、どうして僕らが動画サイトで楽曲を発表しているのかと言うと、その理由は映像にあります。最初にも話したように、HoneyWorksには、イラストレーターや、動画を作る人間もいるので、音楽だけではなく、映像も含めてひとつの作品として出すことを意識しているんです。目で見て、耳で聴いて楽しんでもらえるものを作ろうというのがHoneyWorksのコンセプトですので、そこは全員が強く意識していると思います。ですから、音楽と動画をどうリンクさせて、面白く見せられるかということは、こだわっている部分ですね。
Gom:僕たちがミュージシャンであるということは大前提ですが、作品を、たくさんの人が集まる場所や、動画サイトに出すからには、それは総合エンタテインメントであるべきだと思っています。そのためにも、自己満足で済まさずに、映像に関しても、流行りのものを研究したりしながら、エンタテインメントを作るという意識は、できるだけ高く持っておきたいと考えています。
shito:あとは、コンスタントに更新していくこと。これは、間違いなく大事ですね。
Gom:僕らの場合は、常にメンバーの誰かしらが発信していますから。ここが、HoneyWorksというチームの、一番の強味だと思っています。