Vol.22 Part-2 UQiYO
みなさんは、デジタルとアナログを分け隔てなく活用しながら、独創的な手法でUQiYOの音楽を生み出していますが、創作活動の中で、進化し続けるデジタル楽器について、どのような期待を持っていますか?
Yuqi: 期待感は、ものすごくあります。新しい音楽は、新しい楽器からしか生まれないと、僕は思っているので。そういう意味でも、どんどん新しい楽器を作り続けて欲しいですよね。
島田: よく、日頃の会話でも出てきますよね。「この機材、ここがこうなっていたらいいのに」って。
Yuqi: そう。「こうだったらいいのに」と思うことは、その楽器にハマっている証拠ですから。ゲームでも、そうじゃないですか。そういう会話が始まる時って、ハマってるんですよ。その楽器が大好きということなんです。
Phantaoさんは、ライブやレコーディングでSuperNATURALトーン搭載のINTEGRA-7をご愛用いただいていますが、どのような点が気に入っていますか?
Phantao: そもそもは、音源モジュールSonicCellを使っていたんです。でもそれが、大事なライブの直前に調子が悪くなって。それで急遽、買い替えを検討した時に、INTEGRA-7と、もうひとつ古いタイプの音源のどちらかにしようと迷って、どうせなら音色数が豊富な方がいいと思って、INTEGRA-7を選びました。
どのような音色をよく使いますか?
Phantao: 特に「これ」と決まった音色はありませんが、ピアノに関しては、プリセットの1、2、3番(Full Grand 1/2/3)をよく使います。そこから、いろいろとエディットしていく感じですね。SonicCellを使っていた頃もそうしていましたが、INTEGRA-7はエフェクトが格段に強化されましたから、さらにいろんな音作りができるようになりました。
ということは、サウンド・メイクは、INTEGRA-7本体で完結させているのですか?
Phantao: そうです。完全に本体だけで、音を作り込んでいます。ライブの機材面では、他にボスのルーパーRC-300も使っています。INTEGRA-7のサブ・アウトをRC-300に送って、メイン・アウトの音をミキサーに送っています。さらに、メインの音とループ・ステーションの音を混ぜて鳴らしたりしているので、かなり面倒くさい使い方をしているんですよ。だから、配線がやたらと大変で(笑)。それでも、このようにすることで、いろんな音作りができるわけです。
島田: UQiYOは、機材セッティングも自分たちでやるんですけど、Phantaoさんはシールドの這わせ方に、超うるさいんです。
Phantao: うるさくないよ(笑)。
島田: いや、「今日はちょっと時間あるから、もっと(配線を)美しくしたい」とか(笑)。
Yuqi: ステージで、シールドをすごくきれいにまとめてくれるんです。
Phantao: 前職が、機械の配線とかやる仕事だったので(笑)。
Yuqi: あれは職業病だね(笑)。ただ話を戻すと、僕らって変な美学があるんですよ。まったく一般的な話ではないと思いますが、要は「シンプルに見えた方がカッコイイ」と思っているんです。たとえば、彼もキーボードを2台使えば、それぞれで音色を分けて演奏できるんだけれども、でも「キーボード2段は、カッコ悪いよね」っていう(笑)。ドラムにしてもそう。UQiYOのライブでは、SPD-SXをドラムとして使っているので、「それならV-Drumsにすればいいんじゃない?」っていう話に、普通はなってしまうかもしれませんが、でも、SPD-SXの1台だけで、足元もスカスカで全部が見えちゃってることが、カッコいいんですよ。共感してくれる人がどれだけいるか、まったく分かりませんけどね(笑)。しかもその美学の結果、すごく複雑な配線になってしまっているわけですが(笑)、だからシールドくらいはキレイにまとめようと。
(笑)。そういうYuqiさん自身も、ライブではルーパーを多用されていますよね。どのような使い方をしているのですか?
Yuqi: ルーパーは2台使っていて、メインのRC-300には、ボーカルとキーボードの音を入れています。そしてもう1台、エレアコ用に別のルーパーを用意しているんですが、RC-300とそれは、同期していないんです。本当は同期させたいんですけど、入出力数の関係や、曲によってはルーパーを通さずに出力したかったり、いろんな問題があって、今はこういうシステムでライブを行っています。
今回、Phantaoさんには、INTEGRA-7を継承した音源搭載のミュージック・ワークステーションFA-08を試奏していただきましたが、率直なご感想はいかがでしたか?
Phantao: サウンド面では、INTEGRA-7とほぼ同じ感触で、それにサンプラーだとか新しい機能が増えたキーボードといった印象でした。しかも、軽い! これは、すごく大事なポイントですよ。
88鍵モデルのFA-08で16.6kgとなっています。
Yuqi: それって、今、ライブで使っているマスター・キーボードよりも軽いの?
Phantao: 軽い。この軽さは魅力的です。しかも音がいいから、FA-08があればINTEGRA-7を持ち運ばなくていいしね。
Yuqi: ああ、そうか。しかもサンプラー(機能)まで付いてくるんだ。(少しFA-08を弾いて)鍵盤が、ちょっと木目調なんですね。
アイボリー・フィールG鍵盤が採用されていて、手が汗ばんでも、鍵盤の表面で滑らずに、指先がフィットするような仕上げとなっています。
Phantao: 昔のピアノ鍵盤って象牙が使われていましたけど、そんな感触ですよね。弾きやすかったです。
ありがとうございます。島田さんは、UQiYOのライブではサンプリング・パッドSPD-SXをメインにプレイされているとのことですが、他のセッションでアコースティック・ドラムを演奏する時と、UQiYOでSPD-SXを演奏する時とでは、プレイする感覚は違うものなのでしょうか? それとも、あまり変わりませんか?
島田: いや、まったく違う楽器を使っているような感覚でプレイしています。違う楽器だけど、フィジカル面で同じ技術を使っているという感じですね。
ライブでSPD-SXのようなデジタル・パーカッションを違和感なく演奏するために、音色やバランスなど、何かポイントがあれば教えてください。
島田: ひとつ言えることは、たとえばスタック・アンプでギターの爆音で鳴らすようなロック・バンドの中でデジタル・パーカッションを使おうとすると、音抜けをよくするために、どうしても耳にキツい、かなりキンキンした音色を使ってしまいがちです。ただその点、UQiYOのライブだと、バンド全体の音量がすごく小さいというか、ソフトなサウンドなので、電子音を使いながらも、繊細な演奏表現ができるんです。ですから、耳馴染みのいいデジタル・パーカッションのサウンドを使いながら、アナログなニュアンスを活かしたプレイができる点が、UQiYOならではと考えています。
SPD-SXで、フレーズをループさせたりといった使い方はせずに、基本的には、ワンショット・サンプル音を叩いて鳴らすというプレイ・スタイルなのでしょうか?
島田: そうです。そういう意味では、まさにドラムと同じですね。もちろん、フレーズをループさせて、同期っぽく使うこともできますが、UQiYOは、なるべくそういう使い方はしないという方向性でやっています。語弊があるかもしれませんが、ズルはしないというか(笑)、極力、生演奏でプレイするようにしているんです。
Yuqi: ステージではPCも使っていませんし、いわゆる”カラオケ”的な要素は、ほぼゼロでライブをやっています。それも、こだわりのひとつなんですよ。最近の機材って、本当にデジタルの質が高くなって、音だけ聴いていると、「もはやこれはアナログなんじゃないか?」と思うくらいのレベルまで来ているじゃないですか。映像もそうだし、もちろん、音楽も。和紙に対して筆で書くのと同じくらい、デジタルでも繊細な表現が可能な時代です。そういう中で、人間というアナログの最たるものが、デジタルのどういう部分をどう使うかが一番大切で。だから、カラオケを使わなくてもカッコいい演奏をすることこそが、本当にカッコいい音楽だと思うし、そこを目指すことで、無限の情報量を持つアナログな音楽が生み出せるような気がしているんです。そういう意味でも、(島田)悟志のSPD-SXの使い方は、すごくいいアプローチだと思っています。
Phantao: ライブを観たお客さんから、「ドラムは一体どうやってプレイしているんですか?」って、すごく質問されるよね。おそらく、僕らのライブを観て「やってみたい」と思っている人は、たくさんいると思うんです。でも、「じゃあ、ドラムをすべてSPD-SXでやってみよう」と実践する人は、なかなかいないですよね。
島田: そういう意味では、トリガーモジュールTM-2は、すごく興味があります。小さくて軽いし、SPD-SXすら持ち運ぶのが大変だという場面で十分に活用できそうですよね。電池で使えるというのもいいですし、実は発売直後から、注目していました。
内蔵の音色だけでなく、SDカードに保存したオーディオ素材を、アコースティック・ドラム・トリガーRTシリーズや、パッドで鳴らすことも可能です。
島田: なるほど。これなら目立たずに、アコースティック・ドラムにトリガーを付けて音源を鳴らしたり、スネアに取り付けたバー・トリガー・パッドBT-1でリムショットやクラップをシンプルなセッティングで鳴らせますよね。BT-1も、狙って叩きやすいし、センサーも、とてもしっかりしていると思います。
最後になりましたが、Yuqiさんには、ボスの最新デジタル・ディレイDD-500とギター・シンセサイザーSY-300、それにAIRAリズム・パフォーマーTR-8をチェックしていただきましたが、どのような印象でしたか?
Yuqi: 感想ですか? えっと、全部欲しいです(笑)。
ありがとございます(笑)。DD-500のサウンドも、かなり気に入っていただけたようでしたね。
Yuqi: 本当に滑らかなサウンドで、ギターを弾いていて、メチャクチャ気持ちよかったです。本当に音がいい。僕は、これにボーカルをつないでみたいと思いました。今は、ボスのボーカル・パフォーマーVE-5を使っているんですが、これと組み合わせてみたりと、ギター以外にも活用してみたいディレイでした。あと、SY-300は、相当すごいですよ。これはちょっと、今後、本気で導入を検討したくなりました。
Phantao: マルチ・エフェクターにも、ギター・シンセサイザーっぽいパッチがあるけど、それとは違う?
Yuqi: 反応のスピードと精度、正確性が、他のものとまったく違う。すごいよ。しかも、僕がいつも使っているエレアコに普通のシールド1本でつなぐだけで、ギターがシンセサイザーになるんだから、これは驚きです。いわゆるオモチャっぽい感じだとか、特殊な音が出せるようなフィルター系のアイテムとは、根本的に違いますね。
しかも、あくまでもギターならではの奏法を活かしてシンセ・サウンドを鳴らせるので、鍵盤で演奏するのとは、またひと味違ったニュアンスが表現できます。
Yuqi: 新しい音楽表現を生み出せそうですよね。そこが、新しい楽器のいいところだと思うんですよ。何か新しいリフだったり、表現だったりが生まれそうだっていう、夢が広がりますよね。
TR-8にも、以前から興味をお持ちだったそうですね。
Yuqi: 超楽しかったです。これで遊んでいたら、あっという間に時間が経ちますね(笑)。ただ僕の場合は、こういった機材でリズムをずっとループさせていると、そのループの中に溺れてしまうんですよ。だから、新しい曲作りを考えると、僕には実はSP-404SXのように、いろんな音色を鳴らせて、いわゆる”手打ち”しながらリズムを探っていくサンプラーの方が、タイプ的に合っているのかもしれません。それでも将来的には、ひとりで演奏するような場面でTR-8があると、これは強力かもしれませんね。それに、外部入力信号に、サイドチェインでコンプ的な要素を加えられるのが、すごくよかった。この機能は、実際に試してみたいと思いました。
お話を伺っていると、新しい機材を試す際は、その機材を使うことでどんな音楽的表現が実現できるのか、そこを重視されているんですね。
Yuqi: そうですし、そこがすごく大事なのかもしれません。最初にも言いましたが、新しい楽器でしか新しい音楽は生まれないって、僕は本気で、そう思っているんです。だけど、そう思うと同時に、新しい楽器に頼ってはダメだとも思うんです。「これがあるからいい」とか、「それを使えばいい」というのではなく、やっぱり楽器って、音楽を表現するための”道具”でしかないわけですから、その点をしっかりと自分なりに解釈して、そのうえで使いこなせるかどうか。楽器の存在感をまるで感じさせないくらいに、さりげなく使いこなせることが、僕にとっての理想なんです。