長谷川:もともと曲を用意して、それを録っていったという感じではなくて、曲を作っては、メロディが変わったり、もう一度作り直したりというように、作ったり戻ったりしながら、危機感と共に進めていった感じでした(笑)。
長谷川:今年に入ってから一気に、という感じでした。昨年末の時点では、まだ2曲くらいしか出来ていなくて、そこで今回は、初めてプリプロ合宿をやったんです。福島に3泊4日で行って、曲を詰めて。(木幡)太郎(Gt, Vo, Synth)が、元ネタとなるようなギターやワン・フレーズのメロディを持ってきて、そこからスタートする形でした。ですから、メロディ以外の部分は、セッションで作っていくことが多いんです。
長谷川:ちょっと昔のテイストというか、オールド・スクール的な音作りを意識しながら、なおかつ、それが古臭く聴こえないようにして、そこに、ダンサブルな、ファンキーでグルーヴィーなニュアンスを取り入れようという感覚が強かったです。
長谷川:曲を作っている時は、そこまでライブのことは考えていませんが……ただ、ライブとの連動性というか、あからさまにステージで再現出来ないことは、なるべく避けようという話はしていました。普通、3ピースのバンドだと、レコーディングでギターを何本も重ねたりしますけど、ライブで演奏することを考えたら、やっぱりメインとなる1本のフレーズが大切で、そこは重視しながら作っています。ドラムに関しては、基本的に、すべての曲が“4つ打ちのダンス・ミュージック”という枠の中にあるものでしたから、特にグルーヴ感を意識しました。実際に、ベースとドラムの絡みが強い曲も多かったですし、そこでファンクなノリを出せるようにプレイしました。
長谷川:「Superstar」かな。この曲と、「Citizen Song」が昨年末の段階で出来ていた曲で、「Superstar」は、JRAテレビCM「THE LEGEND 菊花賞編」のタイアップ用に書き下ろした曲なんです。だから、まずはCMに使われるサビ部分だけを完成させて、後からそこを着地点として、曲全体を仕上げていくという作り方だったんです。それが、なかなか難しかったですね。
長谷川:まったく初めてではないんですが、「Riders In The Rain」で、ツイン・ペダルを踏みました。
長谷川:いえ、「(ツイン・ペダルを)踏んだら面白いんじゃない?」と言われて、その流れで。僕はレコーディングで、これまでは滅多にツイン・ペダルを踏まなかったので、「無理じゃね?」っていう感じでやってみたんです。そうしたら、自分としては、ギリギリ“駄目”な範囲だと感じて(笑)。でも、みんなは「全然イケんじゃん!」という反応だったんです(笑)。この曲は、制作期間の後半に作ったんですが、レコーディングの終盤に、ものすごい勢いでツイン・ペダルを練習しました(笑)。
長谷川:そうですね。でも、そのフレーズを打ち込んで、パッドで鳴らせることを祈っています(一同爆笑)。
長谷川:僕らは音数が多いバンドなので、その中でのスネアやキックの抜け具合、そこはいつも意識しています。個人的には、ハイ・ピッチなスネアが好きなんですが、「ヘッドを張り過ぎて、ボトム感がなくなっている」とか、逆に「ロー・ピッチ過ぎて、埋もれてしまう」とか、そういったことを、ライブの現場でも、PAさんとよく話をしています。高めのピッチで、カンカンと鳴る少し手前くらいのチューニングにしていますが、そのバランスは難しいですね。スネアの重心は低めにしたいので、ミドルロー・ピッチで、抜けのいい音を作りたいと思っています。でも、それが一番難しいんですけどね。
長谷川:たまにベースも、すごく高い音を出したりしますからね(笑)。そういう意味では、ドラムのキックが、ボトムの一番大事な部分を支えていると思います。もちろん、ベースの稲見(喜彦/Bs, Vo, Synth)も、ローの作り方はすごく気を使っていますし。
長谷川:アルバムは、ダンサブルでファンキー、グルーヴィーなノリを楽しんで欲しいですね。とにかく、楽器をやっている人なら、いろんなところが気になる作品だと思います。特に今回は、今まで以上にギターの音とかが、シンセなのかギターなのか、分からないような作りになっていますから。そこは、フロントの2人がそれぞれ作り込んでいるので、実は、僕もよく分からなかったりするんです(笑)。「この音、ベースで鳴らしてたのか!」っていう発見もあると思いますから、アルバムを聴いて、3人の誰がどの音を出しているかを想像しながら、ライブを観に来てくれると、面白いと思います。
長谷川:いえ、個人的には、“出来るだけ機械には頼りたくない精神”で進んできて、生演奏でどうにかできるなら、機械は使わないというタイプだったんです。
長谷川:学生時代からすごく好きなのは、toeなどでプレイしている柏倉(隆史)さんで、柏倉さんの、速いフレーズで有機的なプレイに憧れて、ずっと練習していました。だから昔は、“ドラムで歌う”というタイプが好きでしたし、そこを目指していたんです。実は僕って、ハード・ロックのコピーからスタートしているんですよ。
長谷川:高校時代は、吹奏楽をやっていました。そこで打楽器全般を叩いていて、ドラムは高校を卒業してからです。せっかく手足を動かせるし、ドラムを叩いたらカッコいいんじゃないかと思って。でも、それでキャーキャー言われることはありませんでしたけど(笑)。だから、バンドを始めたのは、18~19歳の頃ですね。ちょうど「AIR JAM(Hi-STANDARDが主催する野外フェス)」とか、インディーズが盛り上がっていた時代です。
長谷川:だから、パッドを使うようになったのも、avengers in sci-fiからなんです。結成当初から、フロントの2人は、かなりの数のエフェクターを使っていて(笑)、それで僕も、今使っているサンプリング・パッドSPD-SXのひとつ前のモデル(SPD-S)を使い始めたのがきっかけでした。ちょうど、4つ打ちが流行り始めた頃で、エレクトロニックなパーカッションを導入できないかという流れで。ただ当時は、音作りもあまりよく分からなかったので、プリセット音源に、内蔵のディレイやリバーブをかけて使っていましたね。あとは、レコーディングした音をサンプリングして、パッドを叩いて鳴らしたりといった使い方でした。
長谷川:新曲もそうですが、ライブで何をどう鳴らすかは、すべて曲が完成しないと分からない部分も多いんですが(笑)、エレクトロなフレーズが増えてくると、ライブでは僕がSPD-SXで、サンプリングした音であったり、ループ・フレーズを、フット・スイッチやパッドを叩いてオン/オフしながら演奏するというスタイルが、最近では主流になってきていますね。
長谷川:半分くらいは僕で、あとは、太郎と稲見が、それぞれループ・ステーションやサンプラーを使って鳴らしています。本当は、パソコンでオケをポン出しする方がいいのかもしれませんけど。
長谷川:そうですね。昔から僕は、ライブでオケを鳴らしているバンドを見ると、「あぁ、(オケを)流してるのか……」って思ってしまうタイプでしたから。たとえ後ろでエレクトロな音が鳴っていたとしても、実はちゃんと叩いて鳴らしているという方が、カッコいいと思っています。ただ最近は、ダンス・ミュージックという点で言えば、曲の頭から最後まで、ずっと一定のリズムが刻まれる気持ちよさがあるので、生演奏でリズムがヨレてしまうよりも、シーケンサーを使った方がいいのかなとも思うようになりました。そこはドラマーとして、常に葛藤する部分ですよね。
長谷川:そうです。ループに関しては、基本的にAメロのループ、Bメロのループ、サビのループという形で用意していて、それを演奏しながら叩き分けています。曲の頭から終わりまで1本のオケだと、絶対にズレることが許されませんが、これなら生演奏に対して、ポイントでループの頭を合わせられますから。ただ本当は、一定のリズムに完璧に合う演奏ができる方がいいんでしょうけど(笑)。ダンス・ミュージックの4つ打ちは、“揺れない”という心地よさが重要ですから。
長谷川:ああ、それは確かにありますね。ノリを出しつつ、リズムは正確という気持ちよさ。もしかしたら、一般のリスナーは、特にライブだとそこまで聴いていないかもしれませんが、でも僕は気になる部分ですし、そこは突き詰めていきたいところですね。
長谷川:メトロノームに合わせて叩いている時に、リズムが完全に一致すると、メトロノームの音が消える瞬間があるんです。そうなった時って、「今、メトロノームがオレに合わせてる!」っていう感覚になって、すごく気持ちいいビートだなって思えるんです。「オレがメトロノームに合わせる」のではなくて、「向うがオレに合わせている」という状態、それを出来るだけ長く持続できるように練習するといいと思います。
長谷川:パーカッション的に、トリガーで音源を鳴らしたことはありましたけど、ドラム・キットという形では、まだありません。ですから、今回試奏したトリガー・モジュールTM-2は、とても興味を持っていました。生ドラムに組み込んで、手軽にエレクトロニックな音を鳴らせるという点では、ストレートなロック・バンドがトリガーを使ってみたいという場合に、すごく使いやすいと思います。
長谷川:なるほど。先ほども話したように、音数が多い中でキックやスネアが埋もれてしまうということはよくあるので、そういう場合に、すごく威力を発揮してくれそうですね。しかも、これまではトリガーを使おうとすると、システムも複雑になりがちでしたし、音作りの知識も必要でしたけど、TM-2ならコンパクトですし、パパッと音色を選ぶだけなので、導入の敷居はかなり低くなったと思います。音色がたくさん内蔵されているというのがいいですね(注:162音色を内蔵)。やっぱり、いろいろな音を試したくなりますから。
長谷川:じゃあ、SPD-SXのような使い方もできるんですね。それは、すごく便利だと思います。ちなみに、ドラム・トリガー以外に、パッドを叩いて鳴らすことも出来るのですか?
長谷川:それは、使い方の幅が広がりますね。ベロシティにもちゃんと反応して、ダイナミックスのニュアンスも、かなり細かく表現できました。以前にトリガーを試してみようかと思った時に、正確に鳴らすことが難しいという話を聞いたんです。スネアを叩いた振動でキックのトリガーが鳴ってしまったり、感度を弱くすると、叩いた時に鳴らなかったり。そういう点はどうなんですか?
長谷川:あとスネア用のドラム・トリガーは、リム・ショットの音も鳴らせるんですね。
長谷川:それはすごいですね。機会があれば、ぜひライブで試してみたいです。
長谷川:このペダルはよかったです。本体に重量感があるから、どっしりと動かずに踏めます。ペダルは、ハードに踏むとどんどん前に動いてしまいがちなので、重さがあるのはいいと思います。踏み心地もかなりいいですし、跳ね返り具合もいいので、ダブルだとかの細かいフレーズも、普通にプレイできました
長谷川:パッと思い付くのは、タムなどにドラム・トリガーを取り付けて、ティンパニやパーカッション系の音をTM-2から鳴らすという使い方ですね。ただ、ライブ現場での実用性を考えると、最初に話があったように、キックとスネアに薄く音源の音を重ねることで、抜けをよくしたり、ビートを補強するという使い方が、効果的だと思います。
長谷川:なるほど。実際に、そういうシステムでプレイしている方はいるんですか?
長谷川:そうなんですか。あと、ドラム・トリガーを使うことで、ライブ中、常に一定の音色を鳴らし続けてくれることは、僕らからすると、とてもありがたいですね。ノンストップで演奏していると、どうしても少しずつチューニングが変わっていって、音色的にもそうですし、音の抜け具合も変化してしまうので、ずっと同じ音を鳴らせるという点は、非常に助かります。
長谷川:そう考えると、ライブ会場が大きくなればなるほど、効果は絶大でしょうね。TM-2でスネアとキックを薄く鳴らしておくだけでも、相当に威力がありそうだと感じました。僕は比較的、こういったデジタル機材を使い慣れている側の人間だと思いますが、初めての人でも、これはかなり使いやすいと思いますよ。ただ、TM-2に慣れてくると、もっとタムを増やしたくなって、SPD-SXやV-Drumsまで欲しくなりそうですね(笑)。もちろん、キックを踏んでエレクトロニックな音を鳴らすというシンプルな使い方だけでも、随分と生ドラムとは出来ることが変わってくるでしょうから、エレクトロニック・サウンドの入門機としても、すごくいいと思いました。
長谷川:いいと思いますよ。どんどん、そういうバンドが出てきた方が、面白いですから。僕らも、負けてられませんね(笑)。