こんにちは。皆様は、「エアロフォン」という楽器をご存じですか?世の中にありそうで無かった、どなたでも楽しく演奏できる新感覚のデジタル管楽器です。開発チームのあらゆる試行錯誤の中から生まれたばかり。そんなエアロフォンは、今、世界中で、サックス奏者をはじめ、多くの管楽器奏者の方がトライし、新しい演奏スタイルを楽しんでいらっしゃいます。実際に演奏された方のご意見やご要望、時には厳しいお言葉に、真摯に耳を傾けて、この楽器を成長させていきたいと強く思っています。
・使われている方が、この新しい楽器をどのように楽しんでいるか?
・エアロフォン・オーナーの楽しみをさらに広げるためにはどうすれば良いか?
・まだエアロフォンの経験のない、多くの方々にその楽しさを知ってもらうためにはどうしたら良いか?
そういったことを考えぬいた結果、本連載を企画してみました。「MY STORY 私がエアロフォンを吹く理由」と題したこの連載は、オーナーとエアロフォンの関係を探る新しい企画です。
連載2回目は、シンセシストとして、2本のエアロフォンをはじめ、たくさんのシンセサイザーを駆使しアーティスティックな音楽活動を展開されている、BANANAsuさん。エアロフォン発売時からSNSで活発な投稿をされていたBANANAsuさんと、ローランドのマーケティングチームが出会ったのは2016年の楽器フェア ローランド・ブース。巨大エアロフォン模型と共に撮影いただいたご縁もあり、本企画に登場してくださいました。BANANAsuさんへの感謝とともに、エアロフォンの魅力が多くのお客様へ伝われば素敵だと思っています。それでは、インタビュー形式の本編をごらんください。
BANANAsuさんの音楽歴を教えてください。
15歳の時にT-SQUAREというバンドのTRUTHという曲を聴いて「あの主旋律の音はなんだろう?」という疑問と共に音楽に興味を持ちました。その影響もあって高校の吹奏楽部でサックスを担当、同時にウィンドシンセも入手したのが始まりです。現在ではジャンル問わず弾き語りからバンドまで幅広くサポートやソロ活動を行っています。
主に演奏している楽器と、それを選ばれた理由を教えてください。
主に演奏しているのはシンセサイザーです。ウィンドシンセに触れる時間の方が多いですが、鍵盤のシンセ(特にアナログ)に触れることもあります。シンセサイザーってすごく可能性を秘めてる楽器だと思うんです。音作りという面ではどんな楽器よりも自由度が高くて、「こうゆう音をつくりたいな、こうかな?」と作りたい音に近づいていく時のわくわくする気持ちが好きなんです。アナログ回路のものだと暖機が必要だったり気温や湿度でピッチが狂ったり機嫌が悪くなったりと生き物のようで愛着が湧きます。笑
今後の目標や夢をどのように描かれていますか?
ウィンドシンセというと一部のジャンルでしか知名度の無い楽器なので、アコースティックのライブなどに持ち込むとまず知っている人に出会いません(笑)。でもそれをチャンスにして「どんな音がするんだろう?」「どうやって曲に入るんだろう」 というワクワク感や、いざ演奏してみて共演者やお客さんに 「楽しい」「聞けて良かった」と思ってもらえるプレイヤーになりたいです。また、知らない曲でも聴けばその場で入り込めるという自分の強みを活かして、これからもジャンル問わずもっとたくさんの方々と繋がっていくのが自分の目標です。
確かにまだまだウィンドシンセの知名度はポピュラーではないですよね。Facebookにあるエアロフォン・グループ(グループは非公開設定)にも参加されていると伺いました。今後はBANANAsuさんの活動でエアロフォンとともに新しい楽器の認知度が広がっていって欲しいと思っています。さて、発売時よりご愛用いただいているエアロフォンですが、この楽器との出会いや印象、初めて演奏した時の感覚などいかがでしたか?
9月頃に初めて公開されたのがマウスピース周辺と本体の一部のCGだったのですが、その時点から興味が湧いて全体の画像が公開されると、 今までのウィンドシンセの面影も残しつつも、近未来な雰囲気が印象的でした。ウィンドシンセといえば縦笛のようなデザインのイメージなのですが、サイドキーがついていたりシンメトリーな形状に惹かれ一気に欲しくなりました。最初に試奏したのは新宿の島村楽器だったのですが、運指はサックスやリコーダーと変わらないので初めて触れた割にはすぐに使い方を覚えられました。音色名や各パラメーターが一目で分かるディスプレイが付いているのも便利だなと思います。あと、一番驚いたのはスピーカー内蔵という点です。
しかもオマケで付いちゃった。という感じではなく、意外と音圧があってアンプに繋がずとも満足するまで試奏できました。音色はシンセサイザーというよりも独自のスーパーナチュラルの生音系が豊富で、どちらかと言うと管楽器未経験の方々が誰でも簡単にサックスやトランペットなどを演奏できる新しい提案のように感じました。他にも楽しくなるような音色が色々入っていますね、バイオリンとか人の声とか…(笑)
普段の活動ではシンセサイザーも演奏されていますが、シンセサイザーとしての側面から見てAerophoneはいかがでしょうか?
正直言うとエディターが出た現段階でもシンセサイザーとしてはまだ内蔵音源に伸びしろを感じています(笑)。レイヤーという観点では誰でも簡単に扱えるのでそこは魅力的ですけれども…。エディターで基本波形となる音色がいくつかありますが、もう少しシンプルなシンセの音色がいくつかあるといいと思います。JP-8000系やSync Leadのような出来上がった音色はアサインされていますが、それらの完成した音色をレイヤーしていくのでは自由度が少ないと思いました。例えば1VCOの鋸波のみを鳴らしたような質素な音や矩形波そのまま!みたいな音色が欲しいです。(強いていえば矩形波の場合はどこかでPWMをいじれる項目があったりするとより一層シンセサイザー!って感じしますよね)
あとはせっかくウィンドシンセの醍醐味である「息で制御する」という観点で話すと、VCFやモジュレーションとなる部分も自由に触れられるといいなと思いました。ここまでくるともはや一般的なシンセサイザーのパラメーター画面が欲しくなります。
しかしながらUSBコントローラーとしてのエアロフォンはすごく使い勝手がいいです。ソフトシンセなどを制御する際のブレスやバイトセンサーのアサインはもちろんのこと、サムコントローラーは最強です(笑)。
上下はピッチを担っていますが、左右の使い方は無限大にあります。例えば左に倒したらNoiseGeneratorをミックスしたり、右に倒したらもう一つのVCOを印加したり、波形を切り替えたり、シーケンサーを動かしてみたり……しかもこれが親指だけで操作できるんですから大変便利です。
内蔵音源やエディターに関しては今後のアップデートを楽しみにしています。
おぉっ…だいぶ突っ込んだお話をありがとうございます…(笑)。ここまで使い込んでいるのはさすがですね。開発側としても嬉しいフィードバックなのではないかと思います。それでは最後の質問です。今後のBANANAsuさんの音楽活動のなかで、Aerophoneはどのような役割を担いそうですか?また、その可能性について期待することがあれば教えてください。
もともとエアロフォンが出る前からウィンドシンセ1本でギターやピアノの弾き語りの方のサポートをしていて、意外にもアコースティックのジャンルにシンセの音って合うんだな~と手応えはあったのですが、いざシンセ以外の別の音色をリクエストされたりとかする時は悩みました。「弦のような音が欲しい」とか「かすれた笛のような音とか」、いわゆるアコースティック楽器の音です。シンセなので近い音は作り込めるのですが、やはり限界があってなんちゃって感覚で作った音で演奏してたんです。
でもエアロフォンが出てからサックス2本の間にトランペットの音色で入ってみたり、ピアノに対してバイオリンの音で参加したりと、表現の幅はかなり広がりました。
しかしながら今度は逆で、エアロフォンを使うようになってアコースティックな音色は幅が広がったのは確かですが、シンセの音が「なんちゃって感覚」になる時もあります。現状ではサポート時に柔軟に対応すべく、エアロフォンを2本用意(笑)して、内臓音源を鳴らす用とPCと繋いでソフトシンセを鳴らす用で分けて使うというかなりややこしいことをしています(笑)。 (こんな使い方をしてる人間居ないとは思いますが)。
いずれは一本で生音もシンセも完結できるようになると素晴らしいと思います。
BANANAsuさんのエアロフォンプレイ動画です。