【INFO】Roland RD-2000開発秘話 アコースティック・ピアノ編

ステージ・ピアノ Roland RD-2000の開発秘話。V-Pianoテクノロジー音源と、それによって得られる恩恵を深く掘り下げる「アコースティック・ピアノ編」

Roland RD-2000 開発秘話 アコースティック・ピアノ編

ステージ・ピアノの代名詞、RD。その最新モデル”RD-2000”は、エンジニアたちの並々ならぬ情熱の結晶です。あまりお届けすることのない製品の開発秘話を、全5回にわけてお届けします。

ミュージシャンにとって”ベスト”な音源の搭載、そこは全く迷わなかった

RD-2000の音源を選定するにあたり「今、Roland最高峰のピアノ音源とは何か?」と考え、その答えがV-Piano テクノロジー音源であると結論づけるのには、時間はかかりませんでした。しかし、モデリング音源の搭載はそんな簡単な話ではありません。それでもV-Pianoテクノロジー音源を搭載することがミュージシャンにとって”ベスト”であるという確信。加えて、これまでのRDの歴史が示す通り、RDには「最高の音源」と「最高の鍵盤」が絶対条件であること。これらは開発スタッフ全員の共通認識でした。音源の実装が大変なのはわかっていましたが、絶対に途中でゴールを変えることはしませんでした。

▲ベストな音源の搭載を決め、それを実現する方法を検討していった

V-Pianoテクノロジー音源

V-Pianoテクノロジー音源とは、ピアノの”原理”から再現するという、Rolandが長年培ってきたV-Piano音源技術の最新進化系です。その特長のひとつをわかりやすく言うと、全ての鍵盤に仮想的な”弦が”張られている、ということです。これにより、弦同士の干渉や弦のうねり、押鍵タイミングによる音色表情の違いなど、サンプリング音源では得られない演奏表現を持たせることができました。私自身、過去に電子ピアノの開発もしていた経験があるのですが、その視点で見ても非常に良くできた音源に仕上がったと思います。

もう少し踏み込んでお話しするとV-Pianoテクノロジー音源では、内部に前述の通り仮想的な弦が作られていて、その弦をモデル化された仮想ハンマーが叩いて発音します。それが全ての鍵盤に用意されており、「全部の鍵盤が弦で発音している」のです。実際に弦の振動と仮想響板による音色の変化や、弦同士の共振は鍵盤を弾く都度、違うものになります。この”都度違う”という点が音に豊かな表情を与えて、よりピアノの持つ豊かさを音にもたらしてくれます。ミュージシャンは自身の演奏に”意図”や”想い”を込めていると思いますが、それを繊細に表現できるというところがV-Pianoテクノロジー音源の特長と言えます。

▲数々のステージで使用されてきたV-Piano

個々の”こだわり”故に、衝突も多かった

「ステージ・ピアノとして求められる音を載せる」をテーマに、サウンド・エンジニアや開発スタッフとも協議しながら音の方向性を決めていきました。ステージで使うピアノ音色には、開発参加者それぞれ”並々ならぬこだわり”があり、それによる意見の食い違いも多かったです。正直白熱した議論が続き、結構大変でした。それでも根気強く意見交換を行い全員の”根幹”にある共通項を確認しながら完成したのが、現在搭載されているピアノ音色たちです。防音室に篭って音色を確認していた時期があったのですが、RD-2000のために膨大な作業をこなしたサウンド・デザイナーの情熱が、音のひとつひとつから感じられました。

そんな苦労もあってか2017年 NAMM SHOWのステージでミュージシャンが音を奏でた瞬間、良い音色に仕上がった!と感無量になりました。チェックは十分していましたが、実際にステージの客席で聞くまでは多少の不安があったのだと思います。

▲NAMM SHOW 2017での演奏の様子

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