【INFO】Roland RD-2000開発秘話 エレクトリック・ピアノ編

ステージ・ピアノ Roland RD-2000の開発秘話。好評の新規音色はどのように作られたのか?を紐解く「エレクトリック・ピアノ編」。

Roland RD-2000 開発秘話 エレクトリック・ピアノ編

ステージ・ピアノの代名詞、RD。その最新モデル”RD-2000”は、エンジニアたちの並々ならぬ情熱の結晶です。あまりお届けすることのない製品の開発秘話を、全5回にわけてお届けします。

サウンド・エンジニアが、納得いくまで作業を繰り返して完成させた

エレクトリック・ピアノは、今回新たに「1975年製」と「1979年製」の2つのベースとなるモデルを追加し、さらに音色パラメーターもそれに合わせてゼロから調整し直しました。音源としてはRD-800と同等のSuperNATURAL音源ですが、開発期間を通して得られた様々なフィードバックや、我々エンジニアの”意地”が、全く違うフィーリングの音を生み出したと思っています。

▲楽器だけでなく、ヴィンテージ・エフェクターも新設計した

「徹底的な研究」と「細部へのこだわり」が生んだ音色たち

すでに世界各国でRD-2000をお試しいただいたミュージシャンから「エレクトリック・ピアノの音が良くなったね」という嬉しいお言葉をいただきます。その理由は「徹底的な研究」と「細部へのこだわり」にあると考えています。

技術が発展し、ある程度のクオリティはどのメーカーも出せるようになってきています。では、その環境下で「ミュージシャンをうならせるのはどうしたらいいのか?」を考えました。そして「なくてもいい」と言われてしまいそうな細かい部分こそが重要なのでは?と思い、それらの再現性にこだわっています。

ピックアップの距離、その角度調整により得られる音色変化などは、専門の調律師がいるくらい重要な要素。今回は、こうした音色の調整技術にあたる部分も一層研究しています。ハンマーの状態などによる微妙な音の違いや、最終的な出音に影響するアンプなども、深く追求した要素です。さらに言うと”生産された年代による違い”のような、相当マニアックな箇所まで足を踏み入れています。

▲エレクトリック・ピアノの各項目を自由に調整できる

その上で測定器と自分の耳の両方を駆使し、何時間もかけて一鍵ずつ音の調整を行っています。研究する楽器を最高のコンディションにセッティングした上で解析するといったことも、これまで以上にこだわっているポイントです。

RD-2000に収録する音色を作成する際は、解析した原音をシンセサイズしてしまうのではなく、各鍵のばらつきを抑えて弾きやすくしていくなどオリジナル・モデルの出音/キャラクターを尊重した調整を施しています。これが楽器本来の素直な出音の再現につながり、結果的にミュージシャンの方々は、それを感じ取ってくれているのかもしれません。

再現が非常に難しい「弱音」「強音」にも挑戦した

さらに今回は、ピアニッシモ、またはフォルテッシモで弾いたときの音にもかなりこだわって再現しています。エレクトリック・ピアノは鍵盤の機構上、非常に弱く弾くとハンマーが”タイン”と呼ばれる金属の棒に届かず、うまく音が出ない場合があります。音が出るギリギリの弱さの音を表現するのが非常に難しく、逆に非常に強く強打すると”タイン”が悲鳴を上げたような暴れた音がします。

それらの音は減衰が速過ぎたり、音が完全に歪んでしまったりするなど、演奏時は全く使えない音になってしまうことがあります。なので、楽器として実際に使えるギリギリのクオリティの音を収録して解析するのは非常に難しいのです。今回は、場合によっては一鍵だけでも100テイク以上の強さのバリエーションを解析し、その中から厳選したものをさらに微調整した上で採用することで、非常にダイナミック・レンジの広い音に仕上げることができました。

このような音は、実際の演奏で耳にする機会はほとんどないかもしれません。しかし、RD-2000 では、敢えてこのような音までも搭載することで、エレクトリック・ピアノを熟知している方も納得していただける音になっていると思います。とにかく「やりすぎだろ!」社内で怒られそうなくらい、時間をかけて丹念に作りました(笑)。

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