【インタビュー】V-Drums Pro Users: ピエール中野 from 凛として時雨

【過去記事】新世代ドラム・ヒーロー ピエール中野さんのインタビューです。

V-Drums INTERVIEW
ピエール中野 from 凛として時雨
さまざまなテクニックを駆使したドラム・プレイや独自のマイク・パフォーマンスで、ドラマーのみならず数多くの音楽ファンから支持されるピエール中野さん。今回のV-Drumsインタビューでは、フォロワー10万人という驚異的人気を誇るTwitterの話から、自宅用に導入したという最新Vドラムについて、さらには、これぞピエール中野流とも言うべき“攻め”のドラミングが堪能できる最新アルバムについてお聞きしました。新世代ドラム・ヒーローのインタビューをお楽しみください。

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共有したほうが楽しいってことは、たくさんありますからね。

 

-ドラム・インタビューに登場いただき、ありがとうございます。まずはTwitterについてお聞きしたいのですが、(2013年3月時点で)フォロワー数がついに10万を突破。おめでとうございます。

ピエール中野:ありがとうございます。

-ここまで情報発信力のあるドラマーは、過去にいなかったと思うのですが。

ピエール中野:たぶん、好きなことをきちんと説明できているからだと思いますよ。Twitterでみんなに伝えることによって、さらに新しい発見があったり、楽しみが生まれたり。共有したほうが楽しいってことは、たくさんありますからね。小さいころから、伝えることを楽しんでたような気がします。

意識してそうなったわけではない?

ピエール中野:元々そういうことが好きだったんですね。それがTwitterというツールの出現によって、情報発信や共有をすごく大きな規模でできるようになった。「なんだ、Twitterってオレにぴったりじゃん」って。すごく楽しいですよ。

-Twitterによる情報発信に加えて、個人での音楽メディアへの出演、DJとしても活躍するなど、これまでの“バンドマンとしてのドラマー”とはまったく違った印象を受けます。思い描くドラマー像みたいなものがあるのでしょうか?

ピエール中野:「こういうドラマーに」っていうのは、特にないですね。自らのバンド“凛として時雨”(以下、時雨)のドラマーとして、相応しい存在であることが大前提。そのうえで、自分を求めてくれる他のバンド、ミュージシャンがいれば、それに対して自分がどうアプローチしたらいいのか考えて、取り組んでいくつもりです。その中で得たことは、きちんと説明できる人間でありたいですね。

-さきほどの情報の発信、共有というキーワードで思い当たるのが、2011年にリリースしたドラム教則DVD+BOOK(「Chaotic Vibes Drumming 入門編」「Chaotic Vibes Drumming 実践編」)です。教則として非常に優れた内容でありながら、ドラマーに役立つさまざまな情報が集約されている。とりわけ面白いと思ったのが、入門編の 「ピエール中野の素~教則本&DVDでより深める~」です。自らの教則本の中で、他のドラマーの教則本や教則ビデオを「絶対見たほうがいい」と推薦しまくっています…(笑)。

ピエール中野:そうです。ぜんぶ本の中で紹介しちゃってます。自分で観て内容は知ってるし、絶対に参考になることがわかっている。だから「興味があったらそっちを観たほうがいいですよ」って(笑)。自分にできないこと、説明が上手な人は、世の中にたくさんいますからね。

-教則本もしっかり自分の言葉で書かれていて、あらゆることに高い意識を持って取り組んでいらっしゃる。「今までいなかったようなドラマーになってやろう」といったような思いはありますか?

ピエール中野:どうだろう…自分が憧れたドラマーにはなれないじゃないですか。その憧れたドラマーができないことをやってやろうとは思います。例えばYOSHIKIさんだったらドラムとピアノ。じゃあ、オレはドラムとMCかなって(笑)。面白いほうのキャラ立ちしてみよう、とかね。その中でみんなが喜んでくれること、 自分がやっていて楽しいことを探していたらここにたどり着いた。「何かを目指して」というわけじゃないけど、試してやってみたらこうなった、みたいな感じですね。

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名を轟かせたいなと思ってた。
だからムチャクチャ練習しましたよ。

 

-それでは改めて、ドラムとの出会いを教えてください。

ピエール中野:中2の頃はギターをやってたんです。でも後からはじめた友達が、自分より上手くなっちゃった…そういうのって、かなりやる気なくなるじゃないですか(笑)。また同時期に、たまたまX JAPANのビデオでYOSHIKIさんのドラム・ソロを観てしまった。透明のドラム使って、照明も派手で、水しぶきがあがってて「なんだコレ、ドラムって超かっこいいな!」って感動して。(ギターが上手くなっった)友達のお兄さんの文化祭を見に行ったのもその頃。LOUDNESSのコピー・バンドが出演してて、ドラム・ソロがすごくかっこよかったんですね。ドラム・ソロの間、会場の雰囲気がピンと張り詰めてるんだけど、終わった瞬間に「ワァアアアア」って喝采が巻き上がって。そんないろんな出来事が重なって、ドラムやってみようかなと。中3の終わりにドラム買って、それからです。

-当時から、「誰よりもうまくなってやろう」という思いはありました?

ピエール中野:ありましたね。当時、地元には上手ければ上手いほど偉い。みたいな雰囲気があったし。あそこにすごいヤツがいる、って名前が拡がるんですね。そんな中で、名を轟かせたいなと思ってた。だからムチャクチャ練習しましたよ。いろんなプレイヤーがいたし「バンドやろ、バンドやろ」ってみんな盛り上がってた。

-それからドラム・スクール、音楽学校へ通って自身のスキルを磨かれてきたわけですが、プロになるきっかけはどんな出来事でしたか?

ピエール中野:実は、23歳くらいまでに何にもなってなかったら、就職して働こうと決めてたんですね。専門学校に入ったときに。その後ちょうど23歳でいまのバンド、時雨に出会って加入したんです。親にも「このバンド、ホントすごいから続けさせてくれ」って頼んで。最初の音源のリリースが2005年なので、それから1~2年後ってことになりますね。

「これすごい!なんで誰も教えてくれなかったの?」って(笑)

 

デビュー以前、以後ともに練習環境はどういったものでしたか?

ピエール中野:練習環境には恵まれてたと思います。最初にツーバスの生ドラム・セット買って叩いてましたから。自宅の部屋で、軽音部の部室で、そして楽器店でも叩いてましたし。今はVドラム(V-Proシリーズ TD-30KV-S)を部屋に置いて叩いてます。

以前「PC作業中もフットワークの練習ができるように…」という理由でキック・パッドKD-9を買ってみたとツイートされてましたが。

ピエール中野:フレーズの確認用だったり、ウォームアップ的に使ったりしてます。動いてないと筋力が落ちてきちゃうので。KD-9って、キック・パッドとして優れモノなんですよ。反応がむちゃくちゃよくて、リバウンドも自然。いわゆるアコースティック・ドラムに近い感触で練習できるんで、買って使ってました。

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KD-9
クロス素材のコンパクトなキック・パッド。

KD-9製品詳細ページ

KD-9の打面は、まさにアコースティック・ドラムの叩き心地やレスポンスを研究して三層構造を採用してるんです。ヒット時の滑りをなくすために布素材にしたり、開発者の話では、何度も試行錯誤があって今の構造に辿り着いたそうですよ。

ピエール中野:破れることはないし、打感もいいし、ああいうのをずっと探し求めてた。たまたま楽器屋に行ったときに試奏して、そこで知って「これすごい! なんで誰も教えてくれなかったの?」って(笑)。あれは本当に(アコースティックに)近いです。超優秀ですよ。

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普段使っているセットの間隔と
ほとんど変わらず演奏できてる。

 

-それでは最新のVドラムについて話を聞かせてください。ピエール中野さんは、2009年のローランドWebマガジン出演時、前モデルであるTD-20KV-Sの印象を語っていただきました。その時と比べてみて、最新のV-Proシリーズ TD-30KV-Sの音、演奏感に違いはありましたか?

ピエール中野:反応の良さ、音のリアルさ、随分よくなりましたよね。倍音や共鳴の感じまで、ホントに生々しくて。(Vドラム音源TD-30で)自分好みの音を作ってみたんですけど、普段使っているセットの感覚とほとんど変わらず演奏できてる。こんなに使えるんだ、ってビックリしました。

-Vドラム音源で自分の音を再現してみた?

ピエール中野:そうです。(音色カスタマイズ Vエディット機能を使って)「こうやったら近づくかな…」って感じでやってたらできた。アコースティック・ドラムの音というよりは、ミックスしてできあがったCDで聴くようなドラムの音がすぐに作れる。実際に進化しているんだろうけど、音ひとつとっても(前モデルと)こんなに違うもんなんだ、と思いましたね。

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その辺もよく再現できてる。
…しかし、よくやりましたよね(笑)

 

-ピエール中野さんのドラミングで印象的なのが、ハイハット・プレイの幅広さ。最新のVドラム V-Proシリーズ TD-30KV-Sを演奏してみた感触はいかがでした?

ピエール中野:ハイハットも良くなってますよ。踏み込んだ時のピッチ感もしっかり表現してくれるようになった。

-教則DVDの中でもハイハットには「無段階の表現力」がある、とおっしゃっていますが。

ピエール中野:その辺、(最新モデルは)かなりポイント高いですよ。

-ハイハットと同様に特長的なのがオープン・リムショット。スティックの掛かりかたの違いで音色をコントロールされています。

ピエール中野:そうそう、その辺もよく再現できてる。…しかし、よくやりましたよね(笑)

-オープン・リム・ショットについては、 Vパッドのセンサーと音源の検出方式が大幅に改良されています。開発者の話によると、従来タイプのセンサーと検出方式ではヘッドとリムを同時に“叩く”オープン・リム・ショット時の 「リムへの掛かり具合の検出」が難しかった。そのため、逆にリムを“叩いていない”という信号を検出できる仕様に変更したんです。この変更によってリム・ショットのニュアンスまで正確に検出できるようになりました。まさに逆転の発想ですね。 最新モデルでは、ヘッドとリムを同時に“叩く”オープン・リム・ショットはシェルの振動を検出して、心地良い反応を実現しています。

ピエール中野:しかしすごい世界だなあ(笑)。

-よくまあここまで、という感じ?

ピエール中野:スネアのアクセント移動にしてもそうだし、叩く位置が変わったときの感じも、自分の音がしっかり出てくるから、叩いてて気持ちいいですよ。だいぶ個性出てくる部分ですし。

-なるほど。さきほど「ミックスしてできあがったような音」という話が出ましたが、その一方でライブにおけるVドラムの新しい可能性は感じますか?

ピエール中野:即興演奏、セッションの時によさそう。時雨以外に即興系のバンド(CHAOTIC SPEED KING)もやってるんですけど、その時に音色変えながらプレイしたら、まわりのフレーズも変わってくるでしょうね。観てるほうも楽しいだろうし。

-アコースティックとはひと味違う、ピエール中野さんならではの使いかたで。

ピエール中野:アコースティックだと、ひとつの音色の中でフレーズ、ダイナミクスとか表現できることが限られてる。そこがいい楽器でもあるんだけど。Vドラムならまったく違うアプローチができるんで、相当面白いとこができるんじゃないかな。例えば「DJとVドラムだけ」っていうのも相性いいでしょうね。アコースティックよりも音色的に合うだろうし。

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この事実がいろんな人に知れ渡れば、
確実に増えてくると思いますよ。

 

-お話をうかがっていて、アコースティック/エレクトロニック問わず、ドラムに対する造詣の深さには改めて驚かされます。そんなピエール中野さんの目から見て、これからプロのレコーディング、ライブの現場でのVドラムの使用シーンは増えていくと思われますか?

ピエール中野:これから確実に増えると思いますよ。だって自宅で作った音色が、いつでもエンジニアとか作曲者に聴かせられるわけだし。例えば、レコーディング・スタジオに常設されるのが当たり前の世の中になったとする。そうなれば、あとは(USBメモリーで)データだけ持っていって、Vドラムに挿して、そこで録るだけ。録ったあとでアレンジャーがフレーズを変えたりもできる。何なら、自宅に居てパソコンでやり取り、なんてこともできるわけで。

-確かにそうですね。

ピエール中野:アコースティック・ドラムでレコーディングする現場はなくならないけど、そういうことも増えるんじゃないかなと。確かなのは、いま「Vドラムがこんな凄いことになっている」ってこと。この事実がいろんな人に知れ渡れば、確実に増えてくると思いますよ。

-ありがとうございます。今回のインタビューは、ピエール中野さんに影響を受けてドラムをはじめた方も読んでくれていると思います。最後にメッセージをいただけますか。

ピエール中野:わりとよく言ってる事なんですが…「運とかチャンスは必ず巡ってくるので、それを逃さないための実力を身に付けておいてください」これに尽きると思います。意外と(チャンスは)来てるはずなのに、実力が無いから逃しているだけ。「あの時、相応しい実力を身に付けておけば…」、「あの時、こういうふうに考えられていたら…」と思える瞬間が自分にもある。がんばってほしいですね。

ARTIST PROFILE:ピエール中野 from 凛として時雨

 ”凛として時雨”のドラマー。圧倒的なライブ・パフォーマンスとマイク・パフォーマンスで、ごく一部のファンから熱狂的な支持を集める。YouTubeで公開されている“わかりやすいけど寝癖が気になる”と評判のドラム・セミナーは再生回数30万回を超えている。好きなことや興味のあることにはどこまでも追求していくタイプ。Twitterはこちら→https://twitter.com/Pinakano

凛として時雨 オフィシャル・サイト:http://www.sigure.jp/

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