プロドラマーに聞く、最初の練習。
Case.1 [藤原佑介]
プロとして活躍するドラマーも、始めた頃は初心者だったはず。凄腕テクニックを習得した彼/彼女らは初心者だったころ、いかにして練習に取り組んでいたのか??
この連載は、独自のインタビューから、初心者にも役立つ練習ネタを探る、ドラマー必見のコンテンツです!
1回目は、大学院在学中から「Jazztronik」へサポートとして参加しドラマーとして本格的な活動をスタートさせ、様々なキャリアを積みながら、「村石道場」門下生として村石雅行氏に師事。最近ではD-LITE(from BIGBANG)のバックバンドを務めるなど、活躍の幅を広げ続け、注目を集めるドラマー藤原佑介氏に登場いただきました。
夢中になりすぎて、よく怒られた(笑)
【Q1】ドラムを始めた時期と、そのキッカケは?
藤原 – ドラムに出会ったのは中学2年生になる前の春休みです。初めて叩いた日は今でも鮮明に覚えています。当時は吹奏楽部に所属していました。運動部等も見学したのですが、最終的に姉の影響で吹奏楽部を選びました。もともと小学生高学年ぐらいからなんとなく小太鼓の音が気になっていたのを覚えています。
吹奏楽部なので基本はクラシックを演奏していましたが、初めて迎えた文化祭の時に先輩が叩いていたハイハットとスネアのセット(シンバルはサスペンド、バスドラムは大太鼓を代わりとして別の人が担当していました)を見て強い衝撃を受けました。全体を見渡すどっしりとした存在感に加え、こんなリズムの出し方があるのかと興奮していました。それ以来ドラムセットのことを調べながら夢中になって研究していました。
また僕の中学校は吹奏楽部と軽音楽部があり、軽音楽部にだけドラムセットがありました。なので軽音楽部の先輩とも仲良くなりつつ(笑)吹奏楽部の練習の合間に軽音楽部にも出入りしてました。思わず夢中になりすぎて、本来の吹奏楽部の合奏に遅れてしまうことが多々あり、怒られていました(笑)
そんな中顧問の先生にドラムセットの必要性を熱く語り、中学3年生の頃に買っていただきそれ以降は練習の日々でした。あの頃の体験は今でも自分を構成する一部となっている大切な時間でした。
とにかく楽譜と耳コピを~。
【Q2】始めた頃の練習方法、特に自分一人で行っていた練習法は?
藤原 – 先述した通り吹奏楽部に在籍していたので早い段階からダブルストローク※やパラディドル※等は練習していました。ですがそれを直結的に「ドラムセットに組み込む」という意識や思考は経験として持ち合わせていなかったので、後々その表現をセットと融合させるまではある種別物として捉えていました。
ドラムセットとしての練習はとにかく楽譜と耳コピを沢山しました。楽譜は部活で慣れているせいもありますが、今鳴っている音がどう楽譜として書かれているのかを勉強していました。楽譜がないものはとにかくテープが擦り切れるまで聴いて音を覚えていました。当時は近くに聞ける人もおらず、とにかくわからないフレーズはなんとなくやってみて元々の音源となにがどう違うのかを分析していました。そうした意味で今はネット環境が整っていれば様々なコミュニティに質問したり、動画などでヒント・アドバイスを入手できるのはメリットだと思います。
但し単純に素早く答えを求めるのではなく、一度疑問のまま自分の中に取り込んでそれらを検証していくというのも遠回りではあると思いますが、結果的にオリジナリティの模索という筋道をたどるのでアナログも捨て難いかなと思います(笑)
また僕はプライベートでもTD-30KV-S(Vドラム)を使用していますが、思いついた時にすぐ確認できること、録音や音源の再生ができるということだけに注目してもレベルアップに一役買っています。昔は動画撮影はおろか録音もままならない時代でしたので、本当に今の若い子たちは「機材」に恵まれていると思います。
最後にルーディメンツ等のスネアを主としたエクササイズは先述した通りドラムセットに結びつけるには少し難しいところがあります。イメージとしてはドラムセットの練習とルーディメンツの練習は平行線のようですが、緩やかに交差するよう並走していますので地道に続けることが重要だと思います。その両線が交差した時に一気に表現の幅が広がりますので、その時を楽しみにしながら知識として蓄えていくのが最良の方法ではないでしょうか。
ドラムを歌いながら〜
【Q3】初心者の練習法で、ひとつだけオススメするとしたら?
藤原 – 色々なケースがあり且つ連動しているので、一つだけオススメとは非常に難しいのですが…(笑)総合的、俯瞰的に見ても演奏者がすべきことはあくまで『演奏』することですから、その意味でも次の練習法がまず第一かなと思います。
それは『口でドラムを歌いながら手足を動かす』ということです。数多くの素晴らしい大先輩ドラマーの方々も仰っているように、僕自身もこの必要性を体験し、また指導したこともあります。ドラムセットは総合的な楽器ですし、手と足のバランスも非常に大事だと思います。もちろん早く叩く、細かいフレーズを叩くことは非常に大切ですが、それは表現の上で必要であるということから離れてはいけないと思います。先にそこから入ってしまうよりかは『曲中に早いフレーズが出てきたのでそれを練習してみる』というのがいい順番なのかなと思います。
なのでまずは(その楽曲に対して)ドラムが持つ役割をきちんと把握するためにも基盤として鳴っているパターンを口で言えるようにして、それを歌いながら手足を動かしてパターンの練習をするとすごく良いです。
実際のところ口のタイミングと手足のタイミングをずらして叩くのは逆に難しいので、歌い方のタイミングさえ把握できればあとはそれに沿って手足を合わせていくだけです。是非とも試行錯誤しながらチャレンジしてみてください!
※ダブルストローク
ドラム・テクニックの一つ。一度の振り下ろしに対して、反動を利用して2度、打面を打つ方法。これができると、連打がすごい早くなる!頑張って練習する価値アリの必修テクニック!
※パラディドル
ルーディメンツといわれる、「スネアドラム演奏メソッド」の一つ。上級テクニックではありますが、比較的簡単なパターンもあり。ある程度ドラムが叩けるようになってきたらトライしてみても◯。
まとめ
藤原さんは、自身の行動力で獲得した、学校の環境をうまく活用しながら、ドラムのテクニックを磨かれたんですね。場合によっては、軽音部がなかったり、吹奏楽の経験がない初心者ドラマーもいると思いますが、ドラムがなくても練習できるのが、ドラムの特徴。藤原さんのように、テープが擦り切れるまで(今の時代では、携帯の充電がなくなるまでですかね?、)自分が叩いてみたい/これから叩く曲を「聴きこむ。」のもとても大事な練習ですね。
Release Notes
D-LITE(from BIGBANG)
『D-LITE DLive 2014 in Japan ~D’slove~』
『Encore!! 3D Tour [D-LITE DLive D’slove]』
藤原さんのドラムを動画でチェック!
D-LITE – Dress
(from 『Encore!! 3D Tour [D-LITE DLive D’slove]』)
※YouTubeで開きます
ARTIST LIST
Case.06 川上優 「バスドラの音だけ聞こえやすくしてた」
Case.07 ナオミチ 「プラスチックのシンバルが割れるぐらい」
Case.08 神宮司治 「8ビートを叩けるようになった時の喜びは大きかった」
Case.09 山葵 「上手いドラマーはみんな口ドラムが上手いんですよ」
Case.11 松下マサナオ 「自分で気付いて修正していく過程が大切」
Case.14 澤村小夜子 「自由さを感じて、すぐにバンドは楽しいと思った」
Case.15 長谷川正法 「スティックを跳ね返らせる感覚を身に付ける」
Case.16 加藤勲 「練習でも演奏でも録音することが大事」
Case.17 ハットリクミコ 「エアドラムでずっと練習してました。」