プロドラマーに聞く、最初の練習。
Case.8 [神宮司治]
プロとして活躍するドラマーも、始めた頃は初心者だったはず。凄腕テクニックを習得した彼/彼女らは初心者だったころ、いかにして練習に取り組んでいたのか??
この連載は、独自のインタビューから、初心者にも役立つ練習ネタを探る、ドラマー必見のコンテンツです!
第8回は、レミオロメンのドラマー「神宮司治」さんにインタビュー。レミオロメンは2000年12月に小学校からの同級生3人で結成、2003年3月に1st Mini Album『フェスタ』でデビューし、数々のヒット曲により3ピースバンドとしてのオリジナリティを確立。 その中でも、2004年3月リリースの3rd Single『3月9日』、2005年11月リリースの8th Single『粉雪』は、今でも多くの人に支持され続けています。2009年、レミオロメンにとって大切な日でもある3月9日に初のBEST ALBUM『レミオベスト』をリリースし大ヒットを記録しています。レミオロメンは2012年2月より活動休止中ですが、現在はジャンルレスで自身が企画したイベント“ Happy Session ”やドラムクリニックの開催、ライブサポート、またサウンドアドバイザーとしてバンド指導を行なうほか、オリーブオイルソムリエの資格を取得するなど、音楽の枠を飛び越えたフィールドでも幅広く活躍されています。
8ビートを叩けるようになった時の喜びは大きかった
【Q1】ドラムを始めた時期と、そのキッカケは?
神宮司 – 出会いは中学1年生の頃で、兄が高校でドラムを始め、家にドラムセットがあったのがキッカケでした。なにやら見慣れないものが家に来て、兄と一緒に組み立てたのを覚えています。最初は全ての楽器がバラバラでヘッドも張られていない状態だったので、本を見て試行錯誤しながら組み立てていましたね(笑) でもできあがっていくにつれ、ドキドキワクワク感が半端なかったです!そして実際に叩いてみた時の衝撃!!音にも驚きましたが、両手両足が別の動きをしなければいけない、、、ペダルも初めてで意味わからないし、、、ここまで自分の体が思い通りに動かないものなのかとショックを受けました。何だろうな、この「イーーーーッ!!」ってなる感じ?多分みなさん経験があると思います(笑) 今でも難しいフレーズを練習するときにはなりますけどねw これから始める方はぜひそれを楽しんで下さい!
兄に教わりながら最初に覚えたのが8ビートでした。これが中1の少年にはかなりの難関でした。両手両足別々に練習して「ドンタンドドタン」と声に出して、たまに「イーーーッ!!」となりながら30分位ですかね。やっとの思いで何とか叩けるようになりました。物覚えは良くなかったと思います。。。それだけに、8ビートを叩けるようになった時の喜びは大きかったですね。
【Q2】始めた頃の練習方法、特に自分一人で行っていた練習法は?
神宮司 – その当時バンドも組んでいませんでしたし、誰かと練習することもなかったので、好きな曲を耳コピして何とかかんとか真似て叩いていました。とにかく何でも良いので叩いていたら楽しかったんです。昨日できなかったことが次の日にはできるようになっていたり、自分が少しずつですが成長していることを感じられたのが嬉しかったですね。
今もそうですが、元々凝り性だったので、かなりマニアックに自分のプレイを分析していたかもしれません。当時の練習方法の一つになりますが、ハイハットとバスドラ、ハイハットとスネア、これらのタイミングをバッチリ合わせたいと思い、シンプルな8ビートをテンポ60で1時間とかずーっと意識して叩いていました。「今のはバッチリ、あー今のはちょっとズレたな」とか考えながら(笑) 細かすぎてほとんど分からないんじゃないかなと思うことですが、こういったことの積み重ねが良いグルーヴを生み出す要因の1つになると思います。自分が叩きたいタイミングでしっかりと叩ける技術を身につけるということですね。
今でも基礎練習は大事にしていて、テンポ40の1つ打ちをじっくり練習※しています。早いプレイも細かく見れば1つ打ちが早くなっているだけですからね。早いテンポでは誤魔化せますが、ゆっくりだと粗が目立ちますから(笑) ゆっくりのテンポでしっかり叩けるようになれば、自ずと早いテンポでも叩けるようになっていきます。自分に厳しく!!(笑)
8ビートが叩ければ世の中ほとんどの曲が叩けます。
【Q3】初心者の練習法で、ひとつだけオススメするとしたら?
神宮司 – ひとつとか難しいです!!(笑) ですが、僕も練習している方法で初心者の方でも気軽にできる練習方法があります。
好きなCDや携帯に入っている音楽、ラジオなど何でも良いのですが、いろんな音楽をシャッフルで再生して、それに合わせて叩くという練習方法です。「いやいや待て待て神宮司!!それは難しいだろ(笑)」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。これは曲をコピーするのではなく、グルーヴ感を鍛える練習になります。こんなことを言うと語弊があるかもしれませんが、8ビートが叩ければ世の中のほとんどの曲が叩けます。レミオロメンなんて正にそうですから(笑) フィルインや決め事などは無視して、曲の雰囲気を感じながら、最初から最後まで8ビートだけで演奏するんです。(余裕があればパターンを真似るのももちろんOK)単に8ビートと言っても、テンポやニュアンスはさまざまです。軽快で明るいものもあれば、ズッシリと重たい雰囲気、淡々としたものなど、意識すればするほど多くのものを感じられるはずです。ドラマーから生み出されるグルーヴは、音楽全体に大きな影響を与えます。音楽の中でのドラムの役割、影響力、楽しみを存分に感じながら練習してみてください!ドラムの魅力をさらに感じられると思います!
※1つ打ち(シングル・ストローク)をじっくり練習
「1つ打ち」とは、スティックの一振りで打面を1回叩くこと。ドラム演奏の基本中の基本です。ドラマー用語ではスティックを振ることやその動きそのものを”ストローク”と呼ぶのですが、この1つ打ちは「シングル・ストローク」とも言われます。
1つ打ちの練習というのは、左右交互にスネア(もちろん練習用パッドでもOK)を叩き続けるもの。神宮司さんオススメのテンポ40は相当ゆっくりなので、やってみると左右で音のバラつきがあるとか、ほんとにいろんな粗が露呈してきます(笑) 叩き続けていると肩や腕、手首の使い方に意識が向いてくるので、力の抜き具合はこんな感じにしたらいいんだ、とか試行錯誤しているうちに、コツがだんだんわかってきます。毎日少しずつでも続ければ、正しい奏法とかフォームが自然と身につくと思います。
まとめ
好きな曲を耳コピして真似て叩く、ハイハットとバスドラ/ハイハットとスネアを同時にビシッと鳴らす、シンプルな8ビートを決まったテンポで延々叩き続ける―まさにビギナー時代に誰しもが必ず経験する練習内容です。8ビートの表情は無限という言葉もそのとおり!という感じですね。いろんな表情の8ビートが叩けるようになったら、相当デキるドラマーに見られると思います。
ある意味ストイックさが要求される練習を神宮司さんが続けてこられたのは、ドラムって楽しい!という思いがベースにあったのはもちろんですが、できるようになりたいから練習する ⇒ できなかったことが練習してできるようになる ⇒ やった!できた!⇒ できることを増やすためにまた練習する、という、練習へのモチベーションをキープするためのプラスエネルギーのスパイラルが、とてもいい形で働いていたからだと思います。ドラムに限らず、楽器は文字どおり楽しんでなんぼ、でも楽しむためには練習が必要、練習するなら楽しくやろう!ということですね。
ARTIST LIST
Case.06 川上優 「バスドラの音だけ聞こえやすくしてた」
Case.07 ナオミチ 「プラスチックのシンバルが割れるぐらい」
Case.08 神宮司治 「8ビートを叩けるようになった時の喜びは大きかった」
Case.09 山葵 「上手いドラマーはみんな口ドラムが上手いんですよ」
Case.11 松下マサナオ 「自分で気付いて修正していく過程が大切」
Case.14 澤村小夜子 「自由さを感じて、すぐにバンドは楽しいと思った」
Case.15 長谷川正法 「スティックを跳ね返らせる感覚を身に付ける」
Case.16 加藤勲 「練習でも演奏でも録音することが大事」
Case.17 ハットリクミコ 「エアドラムでずっと練習してました。」