【ARTIST】篠田元一&常田真太郎(スキマスイッチ)による RD-2000 試弾会 / 懇親会

篠田元一氏の声がけで、都内某所にあるローランドのスタジオに集まった30人以上のプロ・ミュージシャンたち。そこで行われた懇親会兼RD-2000試弾会の模様を潜入レポート。

 

  

作編曲家/キーボーディスト篠田元一氏の発案により、《篠田元一&常田真太郎(スキマスイッチ)によるRD-2000試弾会/懇親会》が開催された。「若手を中心にキーボード・シーンを盛り上げていきたい」と篠田氏。ローランドとしてもそのお手伝いをしたい、ということでローランドが場所と機材を提供することになった。

   

 

   

5月のとある夕刻。都内某所にあるローランドのスタジオに、多くのキーボーディスト、ミュージシャンが集まり始める。久しぶりの再会を喜ぶ姿や、“友達の友達”を介して初対面の相手と挨拶を交わす様子があちらこちらで見られた。“場の空気”が和んだ頃、篠田元一氏と常田真太郎氏がステージに上がり、トーク&プレイを交えた試弾会がスタート。

    

「勘違いされると困るんだけど、今日は、僕と常田くんが組んで、みんなにRD-2000を売りつけようという営業イベントじゃありません(一同笑)。あくまでもRD-2000は“おつまみ”で、僕と常田くんで“若手を集めよう”という会です。一部、そうではない重鎮もいらっしゃいますが(笑)、これを機会に、みんな交流を深められたらいいな、と。なぜそう思ったかというと、今、キーボード・シーンが低迷しつつあると感じていて、この状況を変えたいと思っているんです。だけど実際には、若い方の中にも、すごいプレイをする人はたくさんいて、僕も、そういう若い人と共演したい。そのための若手育成プログラムのひとつとして、この試弾会を企画しました」――篠田氏

   

   

そう。これはローランド主催の試弾会ではなく、篠田氏と常田氏が企画したカジュアルな集まり。参加者への声かけも篠田氏と常田氏が行い、両氏の“友達と、その友達の友達”というつながりを軸に、約30名のキーボーディスト/作曲家/クリエイターが一同に集う賑やかな会である。ローランドは、“おつまみ”となるRD-2000と場所をご用意。とはいえ、これだけの顔ぶれに“おつまみ”にされるRD-2000を見ることができるのは、ローランドのスタッフとしても貴重な機会である。

   

篠田 : 僕と常田くんの関係は、もともと教え子からなんです。もう何年になるかな?
常田 : 20年くらい前からですね。
篠田 : 昨日、スキマスイッチのライブを観にいったんだけど、やっぱり先生目線になってしまって、気になるんだよね。「リズムが悪いなぁ」とか(一同笑)。
常田 : ムチャクチャ緊張しましたよ(笑)。もう、先生に一挙手一投足を見られているような気がして、普段やったことのないミスもいっぱいやりましたから(笑)。

   

2人の間柄だからこその生まれるユーモアを交えたトークが進んでいくと、「みんなこれが気になっているだろうから」(篠田氏)と、“おつまみ”であるRD-2000の話題に。
RD-2000は、今年春に発売されたばかりの新製品。まだ使っているミュージシャンは少ないものの、ローランドの定番ステージピアノであるRDシリーズのフルモデルチェンジということで、広く注目を集めている。
ステージ脇にRD-2000の開発スタッフが登場し、“RDシリーズ”の歴史やRD-2000の概要を紹介。続いて篠田氏と常田氏が、実際にRD-2000をプレイしながら、その印象を語り始めた。

「スキマスイッチのライブでは V-Piano を弾いたけど、分厚いバンドサウンドの中でも、ピアノがバッチリと抜けてくる。それがV-Piano特有の音で、RD-2000 には、《SuperNATURAL 音源》だけでなく、その《V-Piano テクノロジー 音源》も入っているんだよね。しかも、調律や 音質、タッチの感度をカスタマイズできる。キ ーボーディストって、会場にあるピアノを弾か ないといけないけど、これなら“自分のピアノ” を弾けるわけで、それって、僕らにとってすごく嬉しいことですよね」――篠田氏

   

「ライブでは、これからも V-Piano を弾いていくつもりですが、それとは別に、マスター・キーボードを探していたんです。今日、RD-2000を触ってみたら、DAW との相性がすごくよくて。今の時代、DAW との相性はすごく大事ですよね。でも、自宅スタジオで使っている RD-700NX は、まだ DAW が今ほど広まる前のモデルだから、一度ミキサーを介して送らないと、DAW にピアノ を録音できないんです。その手間が億劫だし、 音も劣化してしまう。それが嫌だったんですが、RD-2000 ならダイレクトに DAW に録れるし、パソコンや iPad に入れているソフトシンセもレイテンシーを感じずに弾ける。そこがいい ですよね。外部音源を鳴らしている気がしない。それに、ソフトシンセのパラメーターを、 スライダーにアサインする方法も簡単で、これからピアノを弾きたいという初心者にも導入 しやすいと思います。僕にとっては、“プロ用のピアノ”というよりも、プロを含めたすべ てのキーボーディストの入口になれる、そんなスタンダードな存在だと思います」――常田氏

  

こうしたやり取りの中で、篠田氏は、自身が鍵盤の品質をチェック際のポイントとして、「鍵盤の奥を押さえた時に、ちゃんと鍵盤が沈むかどうか、それと連打性。鍵盤が上がりきらないと、次の音が鳴らせないモデルが、実は多いんですよね」と、その奥義を披露。経験豊かな篠田氏ならではのアドバイスに、若手の参加者は大きく頷いていた。さらに話は発展し、各メーカーの鍵盤タッチ談義へ。こうした、“ぶっちゃけトーク”ができるのも、ふだんから様々なステージピアノを弾いている第一線のキーボーディストが集ったカジュアルな会合ならでは。ローランドのスタッフも、普段はあまり耳にすることができない、貴重かつ率直な意見に、熱心に耳を傾けていた。

  

  

「そもそも、メーカーごとの鍵盤タッチの癖だとか、こういう場じゃないと出ない話ですよね。僕自身、誰に遠慮することなく言うタイプだし、常田くんも、参加者のみんなも、言いたいことを言っていましたよね(笑)。でも、こういうパブリックな場での発言って、みんな本音だと思うし、そういう本音から、本当の“いい楽器”って生まれると思うんです」――篠田氏

  

このように、RD-2000だけに留まらず、デジタル・ピアノ全般について、キーボーディスト 同志ならではの濃密なトークが40分ほど繰り広げられた後は、セッション・ステージだ。

  

まず、篠田氏がRD-2000の多彩な音色をフィーチャーした演奏を行った後、常田氏も加わ り、スキマスイッチの名曲「奏」を披露。他では聴くことができない贅沢なピアノ・デュオで、参加者を楽しませていた。続いては、篠田氏の指名で、参加者の中から持山翔子さんがステージへ。4月にリリースしたミニ・アルバム『Pianium』の楽曲を演奏すると、さらに篠田氏は、大御所の難波弘之氏に演奏をオファー。突然の展開にも、難波氏は笑顔でRD-2000の前に座り、その圧巻のピアノ・ソロに大きな拍手が沸き上がった。

  

  

  

セッション・ステージの後は、このイベントの“裏メイン”と言える懇親会。ベテランから 若手までが笑顔で語らう中でも、会場に用意された4台のRD-2000の音が鳴り止むことなかった。“試奏”というよりも、純粋に“音楽を楽しむための楽器”として自由な演奏が行われ、時には参加者同志による連弾も行われていた。さらにその脇では記念撮影大会が行われるなど、その賑わいは、まさに“ピアノ・パーティ”。

  

「鍵盤の神々の集いに参加できた!」 「素晴らしいプレイヤーの方々とお話できて、とても貴重な時間でした」 「すごく勉強になった」「大御所の先生方ともお話できて感無量」 「初めての方もたくさん。世代を超えていろんな話しができて、こういう交流、なんかいいですね」こうした参加者の声が聞かれた一方で、今回は残念ながら参加できなかったキーボーディストからは、「これは楽しそう!」「次回はぜひ参加したい」といったコメントがSNSに溢れていた。

この日は、夜が更けるまでピアノの音が鳴り止むことはなかった。懇親会のさなか、篠田氏 からお話を聞くことができた。

——こういう会合を開こうと思ったきっかけは?
「今、活躍している鍵盤系ミュージシャンって、年齢層が高い気がするんです。それだけ、経験が必要なパートだとも言えますが、やっぱり僕は、次の世代に出てきて欲しいし、若い世代を育てるというのは、自分の中で大きなテーマなんです。ベテラン勢は、黙っていてもすごいことができるけど、若くて実力のある人たちが脚光を浴びる場が、もっとないとダメだと思うんでよす。
鍵盤楽器って、今はすごくネガティブな扱われ方をしていて、つまりライブにいって、鍵盤の音が鳴っているのに、ステージにはキーボーディストがいない。昨今は便利な物がたくさんあるから、演奏しなくてもいいっていう考え方もあるでしょうけど、僕はやっぱり、それはちょっと違うんじゃないかと思っていて。
僕が思うに、“演奏”の定義って、人前で汗をかいて演ずることなんです。それが基本だと思うんですよ。だって、マウス操作と、波形の切り貼りだけで“作曲しました”って、寂しいじゃないですか。もちろん、楽器を弾かなくても、そうやってカッコいい、斬新な音楽を作れる人もいるけど、「楽器を弾こうよ」って、僕は言いたい。」――篠田氏

   

「今日のセッションで、参加者に急に「ちょっと弾いてよ」と声をかけたりしたけど、きっと「次に弾きたいな」とうずうずしていた人がいたと思うんですよ。ただ、それを始めてしまうと終わらなくなっちゃうから(笑)、その機会は、また必ず設けたいと思っています。
あくまでも今日は序論で、この先も、いろいろと考えていきたい。ただそれを、メーカーさんがオフィシャルなイベントとしてやってしまうと、構えちゃう人だとか、他のメーカーを使っているから来づらいという人も出てくるじゃないですか。僕は、もっとカジュアルに若い人に集まって欲しかったし、RD-2000を“おつまみ”に遊びに来て欲しいと思ったので、そういう意味では、今日はすごくいい感じだったと思います。とにかく、若いキーボーディストにどんどん伸びてもらいたい。その気持ちが一番強いので、またぜひ、次回を企画したいですね」――篠田氏

   

【参加ミュージシャン敬称略、順不同】ホスト:篠田元一、常田真太郎(スキマスイッチ)
難波弘之、増田隆宣、古代祐三、青柳誠、添田啓二、都啓一、持山翔子、岩城直也、高藤大樹、堤有加、アリサ、平間小百合、にしのえみ、西村奈央、宗本康兵、小幡康博(コアラモード)、谷口喜男、松浦はすみ(メロディキッチン)、渡和久(風味堂)、林ゆうき、岩垂徳行、景山将太、上倉紀行、岡島俊治、miz、アネモネ・モーニアン、坂上暢、酒井由里絵、芹澤優真、井藤淳

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