プロとして活躍するドラマーも、始めた頃は初心者だったはず。凄腕テクニックを習得した彼/彼女らは初心者だったころ、いかにして練習に取り組んでいたのか??
この連載は、独自のインタビューから、初心者にも役立つ練習ネタを探る、ドラマー必見のコンテンツです!
第14回目は、数多くのフェスで引っ張りだこの「ねごと」の澤村小夜子さんにインタビュー。2008年、高校生にして10代限定の野外フェスで審査員特別賞を受賞して以来、ポップでファンタジックな世界を生み出しつづけている「ねごと」の、繊細かつダイナミックなビートを刻む澤村さんは、小学生時代にピアノを習い、中学時代には吹奏楽部でマリンバを担当。そんな彼女が、「ねごと」の前身バンドでドラムを始めたきっかけから、今でも重視しているという“妄想練習”まで、小夜子さんならではの経験談を披露してくれました。
【Q1】ドラムを始めた時期と、そのキッカケは?
小夜子 – 中学時代は吹奏楽部でクラシック系だったから、オーケストラとかを聴いていて、バンドはそんなに知りませんでした。高校でも吹奏楽をやりたかったんですが、その高校が全国大会の金賞常連校というすごいところだったので、練習が辛くて、入部して一週間で辞めちゃって(笑)。それで、他に似たようなことができないかと探したら、軽音楽部を見つけて、そこで「バンドってこんな感じなんだ」と初めて知りました。本当はキーボードがやりたかったんですけど、もうみんなのパートが決まっていて、ドラムしか余ってなかったというのが、ドラムを始めたきっかけです。
最初は、LOVE PSYCHEDELICO、スピッツ、GO!GO!7188、銀杏BOYZ、SUPERCARといったバンドさんの曲を耳コピでやっていて。その際に、ピアノをやっていたことは、かなり大きかったかな。絶対音感が身に付いていたので、ドラムの音も、タムの音を聴き分けたりといった面で、ピアノの経験は、とても役立ちました。
吹奏楽は、指揮者に合わせて、楽譜通りに演奏しないといけないという感じだったけど、バンドだと、自分の好き勝手に演奏できて(笑)、しかも自分がリズムやテンポを決められるので、自由さを感じて、すぐにバンドは楽しいと思いました。
【Q2】始めた頃の練習方法、特に自分一人で行っていた練習法は?
小夜子 – 軽音に入って、初めて“バンド”っていう言葉を知ったくらいで、中学生の頃は、日本のバンドはスピッツさんくらいしか知らなかったんです。しかも、歌以外の楽器は、パソコンか何かで作ってるようなイメージで。ベースとかも知らなくて、バンドを始めて、「普通に人間が演奏してたんだ」って気が付きました(笑)。
ドラムという楽器も、中学時代の吹奏楽部にセットがありましたけど、クラシック系の曲だと、バスドラムはバスドラムだけ、シンバルはシンバルだけっていうように、セットが分解された状態で演奏するので、まず「ドラムの音って、一体どうやったら、ひとつのリズムになるんだろう?」っていうところから考えました。それこそ、「バスドラムとハイハットとスネアだけで、8ビートをどう作るんだろう?」みたいなところから、楽譜とCDとかの音源を照らし合わせて、「この音符のところでこれを叩くと、この音が出て……」っていう練習ばっかりやってましたね。
あと、私はネバネバ系のグルーヴがすごく好きなので、納豆をイッパイ食べるとか。これ、マジです(笑)。納豆の絵が描いてある靴下を履くとか、そこまでやります。道を歩く時も、ネバついて「ちょっと後ろ足が重いな」くらいの感じ、「重たいグルーヴって、こんな感じかな?」っていう妄想練習をやるんです。こういったことは、今でも割りとやっていて、最終確認で、ようやくセットに座るといった感じなんです。
【Q3】初心者の練習法で、ひとつだけオススメするとしたら?
小夜子 – 高校時代から、私はテンポ・キープが全然できなくて、どんどん走っちゃうタイプだったんです。それを直したいと思って、とにかく簡単な“ドン、パン、ドン、パン!”っていうビートを、一定のテンポで叩けるように、自分で録音して確認しながら、ひたすら練習していましたね。しかも、手と足がバラバラになっちゃうと、だんだんテンポやリズムが変になっちゃうから、なるべくバスドラムとハイハットを同時に叩くとか、そういったことを意識しながら、簡単なリズムを繰り返し練習して。テンポ・キープが苦手な人にはぜひやってみてほしいです。
あと、大学時代は片道2時間半もかかる学校に通っていたので、電車の中でクリックを聴くということもやってました。これでかなり変わったと思います。今だと、メトロノームのスマホ・アプリもいろいろあるので、随分と手軽にできますよね。そういう練習もしつつ、やっぱりバンドで好きな曲をコピーできた時はすごく嬉しいですから、好きなバンドのスコアを手に入れて、楽しみながら完コピを目指すことは、とても大事だと思います。
高校の軽音でバンドを始めるまで、“バンド”という言葉さえ知らなかったという澤村さん。でもそこから、並々ならぬ探求心と好奇心、そして妄想力(笑)で、独自のプレイ・スタイルを見つけ出したようです。テクニカルな基礎練習だけでなく、「どういう演奏をしたいのか」というイメージを持つことも、音楽にはとても大事なんだというメッセージ。皆さんもぜひ、頭と身体の両方で、自分のプレイを追求してみてください。
ARTIST LIST
Case.06 川上優 「バスドラの音だけ聞こえやすくしてた」
Case.07 ナオミチ 「プラスチックのシンバルが割れるぐらい」
Case.08 神宮司治 「8ビートを叩けるようになった時の喜びは大きかった」
Case.09 山葵 「上手いドラマーはみんな口ドラムが上手いんですよ」
Case.11 松下マサナオ 「自分で気付いて修正していく過程が大切」
Case.14 澤村小夜子 「自由さを感じて、すぐにバンドは楽しいと思った」
Case.15 長谷川正法 「スティックを跳ね返らせる感覚を身に付ける」
Case.16 加藤勲 「練習でも演奏でも録音することが大事」
Case.17 ハットリクミコ 「エアドラムでずっと練習してました。」