AUDIX ARTIST/ENGINEER INTERVIEW #04 石金慎太朗

独自技術による高品質と優れたコストパフォーマンスが特徴であるRoland Partner Brandのマイクブランド「AUDIX」、その魅力を多角的にお伝えするインプレッション・インタビュー。音響エンジニア・石金慎太朗氏(東京音研)に、音作りのこだわり、AUDIXとの出会いがもたらしたことなど、マイキングについて幅広く伺いました。

AUDIXは楽器そのままの音がタイトに聴こえる

#04石金慎太朗
株式会社 東京音響通信研究所

i5はそれまで使ってきたどの定番マイクよりも、音の立ち上がりが速い

幅広い現場でマイクに関わると思いますが、どんな点を意識しながら音作りを行なっていますか?

石金:一般的にはドラムはキックから始めると思いますが、僕のPAのやり方は上(シンバル類)から録っていきます。下から単体で録っていって最後に混ぜると、マイク(オーバーヘッド)が上にあるためタムの音が干渉するので、結局は音が変わるというか濁っちゃう気がして。だから、まずは上を大事にしながら下を足していきます。マイクに関してはマイクの特性を出すやり方で、システムをなるべくフラットに作り、ミキサーのEQにもあまり触らないほうがいいと思っていて。アーティストの方からも“すごく自然ですね”と言っていただけることが多いので、そういう部分は信念としてブレずに持っています。

“ブレずに”ということは、マイクにもこだわり続けて?

石金:そうですね。数百人規模のライブハウスから数千人規模のホールまで、さまざまな会場で仕事をしていますがシステムとかマイクはあまり変えないようにしています。あと、先ほども言った通り僕はほとんどEQを調整しないんです。アタックを付けたり味付けをする人も多いと思いますが、僕はなるべく楽器そのものの音を出したいと心がけています。

マイクに求める部分もそういったところですか?

石金:そうですね。ドラムも叩いた音がそのまま出るマイクが一番いいと思っています。そういう意味で、AUDIXのマイクは理想的なのかなと。他の定番マイクは、やっぱりキックのマイクとかは作り込まれているというか、アタックがマイクで上がっている印象がありますが、AUDIXは楽器そのままの音がタイトに聴こえるのが印象的ですね。

AUDIXを初めて知ったのはいつですか?

石金:最初に出会ったAUDIXのマイクはi5です。10年くらい前、とあるライブハウスのエンジニアの方がAUDIXのセットを持っていて、“石金さん、良い機会だから使ってみてください”と言われたのが最初でした。特にスネアとタムにはいいと聞いて、いきなり知らないマイクを使うのは不安なので当時はキックには使わなかったのですが、i5はそれまで使ってきたどの定番マイクよりも音の立ち上がりがすごく速い。そして、叩いたスネアの音がそのまま出る。3日後にはi5を購入していました(笑)。

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それからずっとi5を愛用していただいていると。

石金:そうなんです。たくさんの著名なドラマーの方と仕事をすることも多いですが、皆さんに気に入っていただいてます。なかには、とある音楽雑誌の取材で“このマイクはいい”と言ってくれたこともありました(笑)。村田善行さんとも知り合って、i5を持っていき“何ですかそのマイク?”という話から村田さんにも紹介して。村田さんからも“いつもより音が良く、すごく僕は、AUDIXが好きだなぁ”と言ってもらえました(笑)。

ドラマーからの評価はいかがですか?

石金:最近のドラマーはイヤモニが多くて、自分の耳の型を取って密閉された空間でモニタリングする人が多いので、特にドラムの音は鮮明にわかります。だから叩いた瞬間の第一印象が、皆さん“いつもよりも断然良いですね”なんです。“何かしてます?”って聞くから “実は何もしていないですよ”と(笑)。その違いが鮮明に伝わるし、ミュージシャンの方に良いと言ってもらえると僕らPA的にもありがたいし、やりやすいですよね。

ある種の固定概念が、AUDIXと出会ってからなくなりました

AUDIXの中で、他にどのモデルを試しましたか?

石金:ドラムがメインではあるのですが、ADX20をサックスで使わせていただいたり、最近だとピアノコンサートで中にクリップで固定して録ったり。あとはこの間、グロッケンを譜面台に置いて叩くシーンがあったのですが、1曲のためにマイクスタンドを置きたくなくて。そこで譜面台にADX20をクリップで固定して撮ったのですが、すごくキレイに録れたので多様なシチュエーションに対応できるなと。まだバイオリンには使っていませんが、今後試してみたいですね。
D4もこの前、ソプラノサックスで使わせてもらいました。そのミュージシャンの方がこだわりを持った方で、いわゆる定番マイクだと“ちょっと音が硬くなる”と。それでいつもはタム系のマイクを使っていたのですが、たまたま持っていたD4を使ったら“すごくいいね。実際に鳴っている音がする”と言ってくださいました。タムだけじゃなくてオールマイティに使えると思って、実はいろいろと試しています(笑)。そのままの音が鳴るのが、AUDIX全体を通して感じる魅力だと思っていますね。

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今日の現場で言うといかがでしょう?

石金:バスドラムの中以外はAUDIXで、スネアにi5、タムにD2とD4、バスドラムの外にD6、あとはオーバーヘッドにA133を使用しています。スネアのi5は10年くらい使っているので、本当に手放せないですね(笑)。オーバーヘッドは、いつもならけっこう上に立ててハイパスを入れたりしますが、A133はしっかりキレイに録れて程よくタムも入ってきます。D2(タム)とD4(フロアタム)は、ほとんどEQせずにそのままPAできる印象があります。

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今後、AUDIXを使って試したいことはありますか?

石金:たくさんありますが、まずはいろいろな楽器に使ってみたいです。コンサートだけじゃなくミュージカルとかお芝居の現場もあるので、そういう現場でも試せたらと思います。

石金さんが考えるAUDIXを使う上でのコツ、ポテンシャルが発揮できる使い方を教えてください。

石金:パンッと叩いた時の音がそのまま出せるので、余計なことをせずというか、その特性を上手く利用していただければ。ラクという言い方はヘンですけど、“何か違うな…”ってことはまず思わない。余裕を持ってPAができるのがいいですね。一番のメリットは、モニタリングがしっかりとできることだと思います。“モニター、やっぱり耳が何か違う”っていう現場は多々あるので、そのモニターの環境をスムーズかつラクにできるという意味でもすごくオススメだと思います。

最後に、購入を検討している方にメッセージを。

石金:正直、値段もそこまで高くないじゃないですか(笑)。だから、例えば宅録でいろいろなマイクを使って“ボーカルを録ってみたい”、“打楽器を録ってみたい”、“ギターを録ってみたい”と思っている人も、i5やA133があれば全部イケるんじゃないかなと。僕自身、“ギターにはこのマイク”、“ドラムにはこのマイク”といったある種の固定概念がAUDIXと出会ってからなくなり、可能性が広がりました。“これはタムだけじゃなくて、ジャンベの下とかパーカッションの上でもいいな”という発見があります。とにかく“マイクでいろいろと録ってみたい”という要望を1本で叶えてくれるので、とても懐が広いマイクだと思います。

PROFILE

石金慎太朗/株式会社 東京音響通信研究所

1998年に東京音響通信研究所に入社。国内のアーティストに限らず、外国のアーティストのツアーなどにも参加、さまざまな音楽ジャンルのコンサートの音響を担当し、コンサートだけではなく、イベント、お芝居、ミュージカル、テレビ収録などの音響も担当しており、現在はマニュピレーター業務、配信や収録のミックスやライブレコーディングも行っている。




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