AUDIX ARTIST/ENGINEER INTERVIEW #02 GLIM SPANKY

独自技術による高品質と優れたコストパフォーマンスが特徴であるRoland Partner Brandのマイクブランド「AUDIX」、その魅力を多角的にお伝えするインプレッション・インタビュー。ロックやブルースを土台にプリミティブなサウンドを紡ぐGLIM SPANKYの松尾レミ氏(Vo,Gt)と亀本寛貴氏(Gt)に、ボーカル録音、エレキギターのアンプ録音での使用感を伺いました。

A131は自分がやりたい音作りが家でもできる

#02GLIM SPANKY

A131は爆音で録っても余裕がある

アンプに使うマイクやボーカルマイクなど、活動の中でマイクとはどのような距離感ですか?

亀本:マイクは録音やライブもエンジニアさんと相談をしながら決めています。ツアーで長い期間ライブをしているとコミュニケーションを取れる機会が多いので、いろいろと試して今はすごく気に入った状態に落ち着いていますね。“どのマイクでどう録るか?”を共有するのは意外と難しいですし、専門分野ではないから言いづらい部分もあるけど、コミュニケーションを取れるように理解を深めている途中です。自分が理解していないと会話できないので、そこはすごく大事にしています。

レコーディングでのマイク選びは、曲に応じてその都度、相談しながら決めているのですか?

亀本:そうですね。でも、基本的に自分が好きなマイクってありますよね。あとは、プロジェクトに応じてエンジニアさんが違うこともあるので、自分が出す音に対して“これがいい”みたいな指標はあったりします。

松尾:私はかなり気にしちゃうタイプで。例えば自分の低音がどれだけ聴こえるか、立ち上がりが早い声なので発声した時にどれくらいハイがくるか、そういうバランスを見るのが一番難しくて。ライブは昔から同じエンジニアさんにお願いしているので、いろいろなマイク持ってきてもらって、歌いづらさや口にどれくらい当たるのかとか、マイクの形も全部試して今は落ち着いています。

亀本:特に最初はイヤモニじゃなくて転がし(モニタースピーカー)でやっていたので。

松尾:その時はかなり大変だった。

亀本:モニタリングや聴こえ方によって歌い方が変わるから、すごく試行錯誤していたよね。ライブごとに“歌の具合はどうだったか?”と話し合っていたし。

松尾:すごく神経質で(笑)。リハのあとにモニターを交換してもらうことがあったり。自分の中には答えがあって、どれくらい聴こえると声の伸びが違うとか、手探りをしながらマイクを選んでいる感じです。レコーディングにおいては、それもずっと同じエンジニアさんがやってくれているので、私の声を一番活かせるマイクを持ってきてくれて、“この中でどれがいい?”と聴き比べさせてもらっています。

マイクに求めるものは、声の立ち上がりの早さと聴こえ方?

松尾:ミドルとローがしっかりしつつハイが強すぎないものかな。例えばその歌に波形があるとしたら、ゲインが安定してボンッてくるものがライブでは使いやすいイメージです。なので、ウィスパーボイスや空気感を出す場合には、たぶん今使っているマイクじゃないかもしれないんですけど、自分の場合はバーン!と声を出すので、ハイが強すぎずマイルドに聴こえるという部分で安定感がある感じです。

亀本さんがマイクに求めるものは?

亀本:エレキギターに関しては、ダイナミックマイクで録れる芯の部分と、コンデンサーマイクで録れるエア感とか繊細な部分の両方が必要なんですよね。だから、ダイナミック1本とかコンデンサー1本だと厳しくて、両方ミックスしないと自分は納得できない気がする。デモ音源の制作は、今はコンデンサーマイク1本だけでやっていて。だから僕も松尾さんと一緒で、ローミッドがしっかりある感じが安心するのかな(笑)。

さて、事前にAUDIXのマイクを試していただきました。松尾さんはボーカル用としてOM3、OM6、OM11の3本、亀本さんはギター用としてi5、A131の2本です。それぞれのマイクを使ってみての忖度なしのインプレッションをお願いします(笑)。

亀本:これがめちゃくちゃ良くて。まずA131の何が良かったかと言うと、これはコンデンサーマイクなんですけど、作りを見ていただくとわかると思うんですけどタフでサイズも小さい。特にこのマイクホルダーが秀逸で、オンマイクで使うことを考えているんだよね。で、僕は家でギターを録音する時にサイレントスピーカーという、四角い箱で囲った中にスピーカーを置いてあるもので録っているんですよ。だから空間が限られていて、2本のコンデンサーマイクを立てられなかったんだけど、このマイクホルダー(DCLIP)によって初めて立てられた(笑)。やっぱり、コンデンサーマイクって大きいから置きづらいのよ。

松尾:わかる。マジで大変だよね。

亀本:それがこれ、軽くて首がけっこう動く。

松尾:めっちゃいいじゃん!

亀本:そう、感激した。自分がやりたい音作りが家でもできたというか、非常に満足度が高かったです。

音的にはどのような印象でしたか?

亀本:ローミッド感というか、ダイナミックマイクでは録れない厚みがある。あと、爆音で録っても余裕があるんですよね。オンマイクで録るのを考えられた上でのコンデンサーだから、エレキのオンマイクに合う感じ。マイクによってはゲインが高すぎて、“オンマイクだとぶっ壊れるんじゃねえかな?”みたいな。家で使っているコンデンサーマイクはべらぼうにゲインが高いから、アンプにオンマイクするとプリアンプをゼロにしてもゲインが超高い。それに対してA131は歪まないというか、余裕があるから大音量のドラムとかエレキのオンマイクでもいけます。ロー感とエア感がほしい楽器にも良さそうな感じ。マイクって、やっぱりそういうところが大事な気がしますね。

LARGE DIAPHRAGM STUDIO CONDENSER MICROPHONE

もう1つがi5ですね。

亀本:これは要するに業界標準と言われているマイクと対抗する位置づけのマイクだと思うけど、それとは違う感じがしてすごく面白かったです。高域に若干特徴があるというか、クセがある感じがして、それはそれですごく良かったですね。i5のほうが1本で完結しやすい気がしました。

ALL-PURPOSE PROFESSIONAL DYNAMIC INSTRUMENT MICROPHONE

ダイナミックっぽくもコンデンサーっぽくも使えるところにオリジナリティーがある

松尾さんはいつからマイクにこだわりはじめましたか?

亀本:最初から気にしていたっけ?

松尾:ツアーの時にモニターの聴こえ方を死ぬほど気にしていたから、最初からPAさんにマイクを借りてた。

亀本:PAが現場に入るようになってからだから2015~16年かな。それまではライブハウスのマイクを使ってた?

松尾:いや、早めから買ったよ。

亀本:“人の使ったやつは嫌だ”とか言って。

松尾:例えば、対バンで自分たちの前に出るバンドのボーカルがマイクを舐めるように歌う時があって。たぶん、ライブハウスの人がマイクを替えてくれるかもしれないけど…。

亀本:気持ち良くはないよね。

パフォーマンス前に、そこに気持ちを持っていきたくないですよね。

松尾:そうなんですよ。そういうことがあったので、早めに自分のマイクが欲しいなって。特にマイクを気にするようになったのはツアーを廻るようになってから。ハコ(会場)によって聴こえ方が違うし、ステージの下が空洞かどうか、モニターの種類によっても違うので、そういう部分でもある程度安定して聴かせてくれるマイクがいいなっていうところで実験していきました。

ボーカルマイクは3種類試されましたね。

亀本:一番良かったのはどれ?

松尾:個人的にはダントツでOM6。次にOM11かな。まずは慣れている自分のマイクで録音して、それに対してどうなのかを聴き比べたんだけど、OM3はハイが強くてローミッドがあまりないので、けっこう耳にキーンとくる。だから、これに合う歌い方は…。

亀本:声がもっさりした人とか?

松尾:だったり低音が多すぎちゃう人。個人的にはハイが強い特徴っていう感じ。OM6はローミッドが出て安定感がある。例えば声を伸ばして歌う時に、なぜかわからないけど自分の声の伸びが良くなる。

亀本:そうなんだ(笑)。

松尾:何かね、歌っている時も安定感があるような気がした。音的にはミドルと低音がくるので、きっとライブで激しい曲を歌っても静かな曲を歌っても安定感があるかな。ガツンとくるから、存在感のある音ですね。

同じ曲をマイクごとに歌い分けたんですか?

松尾:そうです。「こんな夜更けは」という曲のデモが残っていて。カメ(亀本)のアルペジオだけのカラオケで、Aメロは低いところから入って、サビのあたりでけっこう高くなってミックスボイスまでいくのですが、どういう音になるのか全部わかるのでこの曲で試したんですけど、ダントツでOM6が良かった。とにかく歌いやすかったですね。歌っていて気分がガッツリと出るんで(笑)。

OM11は?

松尾:OM11は全体の音がキレイでクリア。感覚的な話ですが、例えばOM3とOM6はゲイン的な波形がボンッてちゃんとくるように聴こえるんですけど、OM11は小さく歌うと小さく、ダイナミクスがあるから余裕がある感じ。なので、けっこう上級者向けかなと思いました。ライブで歌うことを想定して歌ったので、OM11はレコーディングやライブで息遣いだったりを表現したい時に使いたいかな。

亀本:あとは、ブルーノートとかビルボードとか爆音ではない環境ね。

松尾:そうそう。アコースティックライブだったり空気音を録りたい時はOM11なんですけど、GLIM SPANKYのライブを考えた時に、アコースティックライブでもバーンッて歌っちゃうのでOM6がめちゃめちゃ良かったです。あとね、OM11は大きいから重い感じ。OM6はスリムですよね。

亀本:本当だ!

松尾:これは勝手な要望なんですけど、きっと意味があってのデザインだと思うんですけど、もうちょっとマイク部が小さいと歌いやすいなって思いますね。

亀本:そうなんだ。まぁ人それぞれだな。

松尾:自分のクセもあるかもしれないですね。

もしもAUDIXのマイクを活動の中で使うとしたら、どのように使ってみたいですか?

亀本:ギターマイクに関してはライブとか、僕の場合は家でもオンマイクで録っているのでそういう場所でも使えますし、レコーディングで使ってもいい。ちゃんと録りたい時はダイナミックとコンデンサーの2本を立てて録りたいので、本当にいつでもどこでも(笑)。これ1本でライブもありな気がする。

実際にリハで試していただきたいですね。

亀本:使ってみたいですね。小さくて持ち回りもしやすくて、タフなのはすごく大事ですよね。あと、この質感をいっている他社のマイクはあまりない気がする。あるとしたらNeumannのTLM102で、サイズ感は近いんだけど現場でバンバン使う感じじゃないし、あまりギターのオンマイクに使うイメージではない。A131はライブのオンマイクに使えるイメージだし、アーティストが家で制作する時に1本あれば歌もエレキも録れる。

松尾:確かに。

亀本:いろいろなアーティストが弾き語りとか“歌ってみた動画”を上げているわけじゃないですか。そういうのに使える1本としてすごくオススメ。1本で何でもできる系。

松尾:弾き語りで曲を作る人も、歌とギターをそれぞれ録ってもいいし、マイクを1本立てて一緒に録っても良い音で録れるだろうし。

亀本:ダイナミックっぽくもコンデンサーっぽくも使えるところにオリジナリティーがあるよね。良いポジションの製品だと思いました。

松尾さんはどうですか?

松尾:OM6は今のメインマイクと同じように使える期待大のマイクなので(笑)、どんなシチュエーションでも使えると思います。静かな楽曲だったり空気感をしっかりと捉えるんだったらOM11で、モニターから返ってくる声がハイ寄りのつんざく音が嫌な人はOM6かな。輪郭をしっかりと、ハイの部分を聴きたい人はOM3かなと思うんです。OM6はやっぱりね、すごく歌いやすいと思う。低音というか、そんなに張り上げない時の自分のスモーキーな部分も全部拾ってくれる感じがして。もちろんOM11も拾ってくれるんだけど、全部をしっかり拾ってくれるからこそ歌のコントロールが必要な気がしました。

亀本:当然、ミュージシャンは自分の楽器だったりエフェクターとかアンプとかいろいろな機材を使うと思うんですけど、よく“入口と出口が一番大事”って言うじゃないですか。出口がスピーカーだとしたら、反対の入口で一番大事なのはマイクだったりするので、いろいろなものを聴けば聴くほどわかってくることが多いと思うんです。今回、こうやって試せて非常に楽しかったですし信頼性の高いブランドだと感じました。AUDIXを置いているライブハウスとか現場はけっこう多かったので、今回使ってみて信頼できるブランドなんだってことをすごく感じました。で、このコンデンサーA131に関してはオンリーワンで良い製品な気がしました。
自宅で試行錯誤している人は、特にエレキギターをやっている人は多い気がしていて。デジタルのシミュレーターが大多数を占めていると思うんだけど、どうしてもマイクで録ってみたい人もいると思うし、実際のレコーディングスタジオでは多くのエンジニアさんが、コンデンサーとダイナミックの2本を立てて録っていると思うんです。それを一度自分で試してみることで、本当にクオリティが上がるしめちゃくちゃ変わるんですよね。芯が録れているとか、芯が外れたとか、それがわかるだけでだいぶレコーディング現場でのクオリティが変わると思う。このダイナミックタイプ(i5)とコンデンサータイプ(A131)の2本で自分なりの録音をしてみると、だいぶ出来が変わると思います。

松尾:ボーカルにも似たようなことが言えるんですけど、私もいろいろなマイクを試すまでは“マイクでそんなに変わるのかな?”と思っていたんです。正直、バン!てライブで歌ったら同じようなところが聴こえると思っていたんですけど、マイクが違うことで歌い方や喉の使い方がまったく変わると確信したんです。どの帯域が欲しいかわかっている人は、自分が欲しい帯域のマイクを使うことでかなり歌のコンディションが高くなるので、それによってマイクを選んで使ったらいい。

亀本:いろいろと試したほうがいいよね。

松尾:あとは、マイクって1本良いのを持っているとめちゃめちゃ便利なんです。私、最初に安いマイクを買ったんですよ。だけど結局は消耗品だし、1本買ってガラス箱に保管しておくわけじゃないから、使いまくって自分の音にしてほしい。科学的根拠はないかもしれないけれど、そのマイクを使いまくってへたることによって自分の声との相性が良くなっていく気分になるんです。安心感というか。1本良いマイクを買って、体に馴染ませると表現のクオリティも高くなると思いますよ。

PROFILE

GLIM SPANKY

長野県出身の男女二人組ロックユニット。ハスキーでオンリーワンな松尾レミの歌声と、ブルージーで情感深く鳴らす亀本寛貴のギターが特徴。特に60~70年代の音楽やファッション、アート等のカルチャーに影響を受けており、それらをルーツに持ちながら唯一無二なサウンドを鳴らしている。
2007年結成、2014年メジャーデビュー。2018年日本武道館ワンマンライブ開催。同年、「FUJI ROCK FESTIVAL」GREEN STAGE出演。ドラマや映画、アニメなどの主題歌を多数手掛けている。最近ではももいろクローバーZや上白石萌音、DISH//、野宮真貴、バーチャル・シンガーの花譜など、幅広いジャンルで他アーティストへの楽曲提供も行なっている。Paraviオリジナル恋愛バラエティ『恋のLast Vacation 南の楽園プーケットで、働く君に恋をする。』GLIM SPANKY書き下ろし新曲「ラストシーン」が番組主題歌に決定!詳細はアーティスト公式HPをご覧ください。
 
公式ウェブサイト
http://www.glimspanky.com
 
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