AUDIX ARTIST/ENGINEER INTERVIEW #05 屋敷隆一

独自技術による高品質と優れたコストパフォーマンスが特徴であるRoland Partner Brandのマイクブランド「AUDIX」、その魅力を多角的にお伝えするインプレッション・インタビュー。ギタリスト/コンポーザーとして幅広いフィールドで活躍中の屋敷隆一氏に、宅録でも活用しているというA131/ADX51/i5/D2を中心にAUDIXの魅力を伺いました。

“冒険してみようかな”と思った時、
i5という選択肢がすごく気分転換になる

#05屋敷隆一

録音において、マイクが一番目に音が変わるセクションだと思っています

まずは屋敷さんの活動内容を教えてください。

屋敷:肩書きはギタリスト/コンポーザーですが、それらの活動と同時に楽曲制作やギターのレコーディングを主に自宅スタジオで行っています。ワークス的には、アニメーションの制作に関わる劇伴、アーティストへの楽曲の提供、ギターのレコーディング、CM関係の楽曲制作が多いですね。その中でもBOSSのデモンストレーションや、SNS広告もワンストップでフレーズ構築からレコーディング、動画制作も行っています。

幅広くお仕事されていますが、マイクとの関わりで言うとどういったケースがありますか?

屋敷:まずはギターアンプにマイクを立てるレコーディングですね。あとは、仮歌程度にはなるんですけど歌のレコーディング。最近は動画撮影の仕事もしているので、環境集音とかナレーションにマイクを使用する機会が多くなっています。

屋敷さんがマイクに求めるものは何でしょうか。

屋敷:録音において、マイクが一番目に音が変わるセクションだと思っているんです。もちろん、ギターアンプに対してどこにマイクを立てるかでも音は変わりますが、音のキャラクターが聴感上とはまた別のものに変わるセクションですよね。だからこそ、フラットなキャラクターのマイクを選びたいという人も多いですが、僕は考え方が逆で、ある程度キャラクターがついているマイクが好きです。なので、楽曲に合わせてマイクをセレクトするような使い方ですね。

オケ全体の雰囲気を見てマイクを選ぶんですね。

屋敷:そうですね。オケを聴きながら、そのたびにマイクとギターアンプをチョイスしています。できればDAW上であまりEQをごちゃごちゃ調整したくないんです。元の音が崩れていくし、結局は沼にハマっていく原因の一つになるので。EQはただの補正で使いたいので、なるべくマイクのキャラクターと狙う位置でEQを定めたい。もちろん、その時の宅のプリアンプがどうだとか、箱鳴りがどうだとかはあるのですが、究極的にはフェーダー操作だけでミックスを完成させられるのが、自分的には一番有意義なレコーディングだと思っています。

“こういう楽曲だったらこういうマイクを選ぶ”など、傾向みたいなものがあれば教えてください。

屋敷:僕はロックな楽曲を弾くことが多いですが、そういう場合はアンプの歪みをゲインで作らずにボリュームを上げて作ります。けっこうな音量が出るので、ダイナミックレンジが強く耐久性の高いマイクをまずは選びますね。楽器の特性においては、ディストーションギターならミッドローが強調できるマイクがいいので、AUDIXで言うとダイナミックマイクならi5アタックを重視するのであればD2を選んだりしますね。
アコギが一番難しくて、バラードだと広いレンジを録らなきゃいけないんですけど、デジタル系の打ち込みとかミクスチャーっぽい今のアニメだとあまりローが要らなくて、シャリシャリとした部分がザクザク鳴っていればいいという解釈の人もいると思います。そういう意味では、アコギでは普通のコンデンサーマイクとガン型を駆使することが多いですね。

なるほど。

屋敷:だからアコギ、ピアノ、管楽器といった生楽器が一番変化がわかるんじゃないかなと。それこそ僕が録音を始めた当時は、“コンデンサーマイクはとにかく良い音で録れるんだ”と勘違いしていたところがあって。何でもいいからコンデンサーマイクを買おうと思って、有名メーカーのヴィンテージライクなコンデンサーマイクを買ったんですよ。当時は打ち込みが主流で、4つ打ちのラウド系のロックにアコギを入れなきゃいけなかったんですけど、そのマイクで録ると全然合わないんです。なぜならヴィンテージライクだから(笑)。アコギもカントリー調ぐらいのジャリジャリとした感じで録れちゃって。その時は理由がわからなくて、“マイクが悪いんだ”と思っていたんですけど、ただマイクの選び方が悪かっただけで(笑)。録り方もサウンドホールと指板の間ぐらいに立てるという常識的な方法だったので悪くはなかったと思うんですけど、シチュエーションにおいて“マイクをちゃんと選ばなきゃいけないんだ”って、それに気が付くのにはやっぱり時間がかかりましたね。だから、マイクもエフェクターと同じ使い方の意識でいます。

現代の日本の音楽に必要な帯域、サウンドがカバーできる

AUDIXとの出会いはいつですか?

屋敷:最近ですね。4本入手したのですが、コンデンサーマイクはADX51A131で、ダイナミックマイクがi5D2です。ただ、存在は前から知っていましたよ。AUDIXのVX10を知り合いのPAエンジニアがずっと愛用していて、“女性ボーカルにすごく良いんだよ”と言って使っているのは知っていたので“へぇ”と思って(笑)。

AUDIXを使用するシチュエーションは?

屋敷:アンプはメインで使っているPeaveyの5150をディストーションで試して、FenderのTwin Reverb、70年代の銀パネをクリーンギターで試して、アコースティックギターはBreedlove。タイプで言えば3種類の楽器で使っている状態です。
各マイクの印象をお話しすると、A131はとても広帯域をカバーできるマイクだと思います。ローもハイもしっかり録れるので、アコギ、エレキ、歌、どれにでも対応できます。個人的には特にエレキのクリーントーンの集音が好きですね。ボトムもしっかりと録れつつドシッとしたサウンドで、あまり腰高にもならないですし存在感のある音が録れます。バランスもいいので、エンジニアさんが補正する時に突いたりパスしたいところもすごくわかりやすく録れるので、エンジニアさんにも好まれると思います。
アコギも、箱鳴りとか鈴鳴りの部分も両方ともバランスが良かった。サウンドホールと指板エンドを狙う形で録っていますけど、パッと置いただけですごく気持ちのいいサウンドになります。
あとは価格を見て驚いたんですよ。“安っ!”と思って(笑)。だから、最初に持つコンデンサーとしてはぴったりなんじゃないかなと。結局、最初に買った時もそうだったんですけど、高いんですよ(笑)。高くてガッカリした。それは僕の使い方が悪かっただけですけど、最初の印象ってそんなものじゃないですか。特に始めたばかりの頃は。でもAUDIXは、適当に立てたとしても“良くなかった”という印象にはならないと思います。

屋敷氏の演奏を試聴

A131+アコースティックギター

A131+クリーンギター

LARGE DIAPHRAGM STUDIO CONDENSER MICROPHONE

ADX51は?

屋敷:ペンシル型って言うんですかね。形状から見てドラムのトップを集音するようなマイクだと直感的にわかりますが、単一指向性の具合を知りたくてオーダーしたのですが、僕はアコギでADX51を使いました。高音域の密度がすごく良くて、金物系やアコギのアタックのような音域を集音するのには持ってこいだなと思いました。だから鈴鳴りをADX51に任せて、ローの胴鳴りをA131でカバーできれば、さらに生楽器が映える気がします。ミックスして使うようなイメージですよね。

屋敷氏の演奏を試聴

ADX51+アコースティックギター

PROFESSIONAL ELECTRET CONDENSER MICROPHONE WITH PAD AND ROLL-OFF

i5はいかがでしょう。

屋敷:これもすごくタフなマイクですよね。ラフに使うことを想定されているのが窺えるんですけど、僕は決して几帳面なタイプではないので、あまり高価なマイクは使えないんです(笑)。タフなマイクですが、音像も明瞭で広帯域が録れるんですよね。A131と同じくらいの帯域をカバーできるのにもかかわらず、“これがダイナミックマイクなのか”という驚きもありました。コンデンサーマイクまでは手が出せない人だったり、ちょっと使い方がラフな人はi5を使ってもらうとしっかりと録れるんじゃないかなと。例えば歌をSNSにアップしているような歌い手さんとか、楽器を収録したい人にはすごくいいと思いますね。楽器はあまり選ばないんじゃないかなと思います。少し話は戻ってマイクに求めることにもつながるけど、耐久性があって、それに音と価格がマッチしていれば満足ってことですよね。あとは個性があるかどうかです。

屋敷氏の演奏を試聴

i5+アコースティックギター

i5+クリーンギター

i5+ディストーションギター

ALL-PURPOSE PROFESSIONAL DYNAMIC INSTRUMENT MICROPHONE

歌にも楽器にも使えると。

屋敷:そうですね。上品に録りたかったらコンデンサーマイクでもいいんですけど、ディストーションにはi5がいいかなと。ギターに必要な帯域がしっかりと録れたし、底の部分にピークがある感じがミックスした時に気持ち良かった。何にしても、僕はけっこう天邪鬼なので王道のマイクを使うのが嫌な時もあるんです(笑)。“ちょっと冒険してみようかな”と思った時、i5という選択肢が自分の中ではすごく気分転換になっています。オールジャンルで使えるマイクだと思います。

最後にD2ですね。

屋敷:D2はドラムのタム録りのイメージだと思うんですけど、あえてギターに使っています。Peaveyの5150はじゃじゃ馬なのですごくアタックが速いのですが、D2はアタックが大きくてもへこたれないガッツがあります。で、低音域の集音に長けているので、アコギとかクリーンギターはドシッと腰の据わったサウンドになりましたし、ディストーションは迫力のあるローミッドが心地良い。ギターで言うと、アタック重視の刻み系の方、ラウドメタルだったりジェント、パーカッシブなリフを弾く方にはいいかもしれないです。

屋敷氏の演奏を試聴

D2+アコースティックギター

D2+クリーンギター

D2+ディストーションギター

PROFESSIONAL DYNAMIC INSTRUMENT MICROPHONE

AUDIXのトータル的な魅力を教えていただきたいです。

屋敷:まずはコスト面ですよね。音楽を始めたての子はお金に余裕がない人も多いけど、良い作品を作りたい気持ちはみんな変わらないと思うんです。だから、手軽に入手できて即使えるのはすごく魅力的だし、もちろん安かろう悪かろうではない。今の時代に合ったブランド、選択肢なんじゃないかなと思います。音質面でも、バリエーションがたくさんあるのでいろいろな組み合わせを試せます。僕もいろいろなジャンルの楽曲をやりますが、ポップス、メタル/ハードロック、現代の日本の音楽に必要な帯域、サウンドはカバーできると思いますね。

オススメの人は“幅広く”ですね。

屋敷:そうですね。“何を買ったらいいんだろう?”と迷った時の最初1本としてはもちろん、玄人の方は少しキャラクターを変えてみたい時の気分転換に使われたらいいんじゃないかなと。結局、同じマイクを使い続けるとどうしても飽きるんですよ(笑)。するとクリエイティブな感覚が鈍ってくるので、身の回りを変えるマイクとして持っていてもいいんじゃないかなと思います。

最後にAUDIXを検討している人に向けてメッセージを。

屋敷:ギターに特化しますが、最近はデジタル系のライン出力のサウンドが増えてきている中で、レコーディング現場でもマイクを使わなくても音が録れますよね。アンプを鳴らして録ったサウンドは難しいと思われているかもしれないけど、その音像や立体感ってデジタルのラインアウトの音には敵わないとまでは言わないですが、オケの中での立体感が変わってくるんです。なので“みんな音を出して録ろう!”と僕は思っています(笑)。経験として、マイクで集音するってことにチャレンジしてみて!って思いますね。

PROFILE

屋敷隆一

キーボーディスト増田隆宣氏(B’z, 浜田麻里, 他サポート)プロデュースのロックバンド “The Alice Mauve”でデビュー。ギタリストとしてジャンルを問わずライブ、レコーディングや他のアーティストのサポートミュージシャンとしても活動。デモンストレーターとしてNAMM SHOW、楽器フェアなどの音楽イベント、YOUNG GUITAR誌などでプレイし、現在は世界中で多くの愛用者を持つBOSS製品のデモンストレーターとしても国内外問わず活躍中。コンポーザーとしても、SHOW BY ROCK!!、Wake Up,Girls!、スカーレッドライダーゼクス、スクールガールストライカーズ トゥインクルメロディーズなどのアニメ、ゲーム、アイドル等へ楽曲を提供。さらにTV(有吉の壁)、CM、ゲームなど数多くの作曲、レコーディングにも参加している。
 
Instagram
https://www.instagram.com/ryu_yashiki/
 
Twitter
https://twitter.com/Askeyrock




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