ステージ・ピアノ Roland RD-2000の開発秘話。未来のステージ用途を見据え考えられた操作子や機能を紹介する「コントローラー編」。
Roland RD-2000 開発秘話 コントローラー編
ステージ・ピアノの代名詞、RD。その最新モデル”RD-2000”は、エンジニアたちの並々ならぬ情熱の結晶です。あまりお届けすることのない製品の開発秘話を、全5回にわけてお届けします。
“今の”ステージに求められる要素は何か?を考えた
今、北米や欧州ではDAW上に立ち上げたソフトウェアがステージへ持ち込まれ、当たり前のように演奏されています。しかし、ミュージシャンからは満足できる鍵盤やコントローラーがない!という声も多く寄せられていました。
あまり目立ちませんでしたが、実は歴代のRDシリーズには外部音源のコントロール機能を搭載していたんです。これを昇華させ、今求められる形に充実させたら便利なのではないだろうか?と考え、仕様を考えていきました。
ステージ・ピアノの在り方も進化してほしい。未来を見据えた仕様に
RD-2000はステージ・ピアノとして活躍するように考えていたわけですが「ステージ上でのピアノの役割を進化させる先駆者になってほしい」という想いも強かったんです。RDとしても革新していくのだと考えていたわけですから、いずれ訪れる役割の変化にも対応できるよう、未来のステージを見据えた仕様を考えてみました。例えば、楽曲制作で使ったソフトウェアをそのまま持ち込んで鳴らす。なるべく簡単かつ小規模でそれを実現させる。こう書くと実に簡単そうなことですが、そのセッティングや準備は相当大変なもの。それ故に、構想段階で断念してしまう人も多いと聞いていました。
ミュージシャンが「そうしたい」と思うなら、このRD-2000で応えていきたいと思ったのです。実際に自分達で環境を想定しながら、意見を交わして細かな修正を加えていきました。結果として、充実した内容に仕上げられたと思います。
もちろん、ステージ・ピアノとしての基礎部分をしっかり作ったからこそ、コントロール機能などが入っても成り立つようになっていると思っています。「RDは鍵盤が良いからコントローラーとして使いたい」という声はプロアマ問わず多く寄せられていた意見でした。そういった方にも、きっと満足いただけると思います。
フィジカルな操作子では、8個のロータリー・エンコーダーにこだわりました。一般的なボリュームのノブと同じ感覚で操作できるように仕上げてあります。エンコーダーは数が一定に増減するので、値が大きい時は何度も何度も回さなくてはならず、個人的にも不便に思っていました。反面、値を1つずつ調整できる点はエンコーダーのよいところでもあります。
この相反する2つを共存させたいとエンジニアといろいろ考えていく中で、ノブを動かす動作を見極めて値を可変できる仕組みを思いつきました。何度も操作感を試しながら、値の変化を確かめて調整していき、今の仕様まで仕上げました。
一般的なノブと同じように操作すれば、値はその通りに反映されます。例えば、シンセサイザーの演奏に慣れていてノブの回し方を身体で覚えている人は、その回し方でいいということです。一方で、ゆっくり回せば値の変化幅が小さくなり、最小では1ずつの変化を実現しています。細かいパラメーターのエディット時などにも効果を発揮します。かなり大変でしたが、やってよかったと思うところです。
ちなみにスライダーもEXITボタンを押しながら動かすと現在の値を確認することができます。SCENEやPROGRAMを切り替えた際、音色の数値を確認したいときに便利です。各スライダーにはコントロール・チェンジのアサインの他、コンボ・オルガンのハーモニック・バーの動作もできますので、そのあたりも活用してもらいたいですね。