ADX20iはどんな環境でも音域を問わず素直に出してくれる
#15清水玲奈
マイクがずれないとかベルに当てやすい
狙いやすいものも重要視する部分
まずは清水さんの自己紹介をお願いします。
清水:主にジャズやファンク、フュージョンを演奏しているのですが、ローランドさんとはエアロフォンをきっかけにお付き合いをさせていただくようになりました。主にオリジナル曲をリリースしていて、これまでにアルバムを3枚、配信限定でシングルをリリースしています。オリジナル曲では打ち込みに対してサックスを乗せたり、生楽器を差し替える手法で作ることが多いので、ライブで表現するときはエフェクターを通した音とか加工した音を使うことが多いです。リーダーライブを組んだり、リリース時にはツアーを組んでます。
またサポートの演奏や最近は、自宅でサックスやフルートの素材録りの依頼もトラックメイカーの方から受けています。海外の方ともコラボしてリリースもしています。またプライベートレッスンも行っています。
オリジナル曲のジャンルは?
清水:サックスならではのスムーズジャズやポップス、エレクトロの要素もあります。口ずさめるようなメロディをイメージして、エレクトロな要素に重心を置きつつ楽曲を制作しています。
マイクそのものを意識したのはいつ頃ですか?
清水:専門学校を卒業してから、分厚いバンドの音に紛れて演奏する現場が多かったので、そういったところでコンタクトマイクが気になって調べ出したのがきっかけです。所属していたバンドはアクションが多く、ステージから降りて演奏する機会もあって、一時期は先輩とか同業者の方に相談してSHUREのワイヤレスマイクを使っていました。ここ2~3年、コロナの影響もあって客席に下りる機会が減ってからはワイヤレスへのこだわりがなくなって、再び有線でプリアンプやエフェクターを通すようになりました。
今は有線が多いんですね。
清水:そうですね。今メインで使っているマイクはDPAですが、ベルに引っかけるフックが不安定なので差し替えたり、ケーブルが細くて長く断線するのが怖かったので、大阪のORBというケーブルメーカーの太いものに差し替えたりしています。
使い勝手や音質面でマイクに求めるものは何でしょうか。
清水:使い勝手に関しては、やっぱりベルから落ちないこと!落としたら誰も幸せにならないので(笑)。あとは自分の音を素直に出してくれるもの。指向性が狭すぎると、どうしてもライブ会場でベルに合わせるのが難しいので、そこもこだわりたい部分です。クリップ部分はメーカーによってかなり違って、見た目が良さそうでもベルに装着したらすごく緩かったり、クリップの強さもまちまちなんです。私はメインで吹いているのがテナーサックスなので、ベルがちょっと大きいんですよね。なので、差し込んだときにマイクがずれないとかベルに当てやすい、狙いやすいものも重要視する部分です。
自分の中のバランスをマイキングしやすい印象がありました
AUDIXというブランドはご存知でしたか?
清水:名前は聞いたことがありますが、管楽器用のマイクがあるのは今回初めて知りました。
お使いただいたモデルはADX20iですね。
清水:9月からお貸りして、ライブや演奏のお仕事のときに持って行きました。早めに現場に入って、メインで使っているマイクと吹き比べたり、実際にライブでも使い心地を確かめました。
どのようなライブで試しましたか?
清水:管楽器が最大3人で、後ろにピアノ、ベース、ドラムがいるアコースティックなライブでした。3管なので音圧がある環境でしたがアンサンブルにも馴染みやすいし、ソロで吹いているときも素直に出てくれるのでストレスを感じない。ストレスを感じるようなマイクはそんなにないけど(笑)、指を動かしたときに、パタパタとかキンキンとかパットの音を拾いがちなマイクはストレスなんです。だけどADX20iはサウンドチェックのときもなかったし、そこも含めて管楽器向けに作られている印象がありました。
CONDENSER INSTRUMENT MICROPHONE
ADX20iP
比較してみていかがでしたか?
清水:クリップの面で言うと、しっかり止まる良さがありました。マイクにかけてのアームの長さが、私が持っているDPAに比べて余裕があるのと、マイク自体が軽いんですよね。マイクが重いとブレたり動いたり、気づかないうちにアームがゆがんだりしますが、すごく安定感があります。サウンドチェックのときに、狙いたい場所のこだわりがみんなそれぞれにあって、私もこの辺を狙ったら自分の音を取りやすいってある程度決めているんですけど、ライブ中にパッと見るとズレていることも多いです。そのストレスがなくて安心感がありました。
人によって狙いたいポイントがあるんですね。
清水:そうですね。テナー、アルト、ソプラノでも狙う場所は違いますし、その楽器ごとに鳴るポイントも異なります。他にも会場の音響さんの好みもあるし、高域がしっかりなるスピーカーの会場であれば、マイクをすこしベルに入れてセッティングするなど、自分の中のバランスをマイキングしやすい印象がありました。
清水さんはどのあたりが好みなんですか?
清水:ベルに対して真下から当てる人が多いんですけど、DPA自体のアームがそんなに長くないので、ベルの芯よりも下を狙っているんです。AUDIXはアームの長さに余裕があるので真下から狙います。センターでもいい感じでした。会場にもよるかもしれませんが、高域寄りのイメージがあったので入れ気味で当ててちょうどいいのかなと。
音質に関してはどうですか?
清水:出す音に対して、メーカーによってはシャリッとするというか、マイクを通すことでパリッと感が出るし、それを加味して音を完成させる人もいるけど、そういった加工感がないのがすごく吹きやすかったし音痩せも感じなかったです。本来、素直に音が出るとバンドサウンドの中に紛れたときに物足りなさがあるんですけど、音の輪郭をしっかりと捉えてくれる音の取り方がされていました。バンドとか結構ガシャガシャした音の中で演奏しても、はっきりと自分の音は見えたのですごく驚きがありました。強いて言うなら、キャノンでケーブルとつなぐ部分までが少し短いのと、接続部分を体に固定するためのクリップがついていればなお良かったかな。
クリップの安定感は大満足だし輪郭もしっかりと見える
今後、ADX20iは清水さんの活動の中でどんな役割を担いそうですか?
清水:クリップの安定感は大満足だし、輪郭がしっかりと見えるし、エフェクターとの相性というかプリアンプを通しても遜色なくプレイできたので、体に固定する問題さえ解決できればメインマイクとして使いたいぐらい気に入りました。
ADX20iはどんなプレイヤーにオススメできそうですか?
清水:マイクって、バンドサウンドに負けるな!頑張れ!みたいな環境で使うことが多いイメージだけど、本当に素直に出てくれるので、しっかり鳴るマイキングさえ押さえられれば、生ピアノが入ったアコースティックな編成でも相性が良さそうです。普段、あまりピンマイクを使わない人でも、使ってみたらすごく感覚が変わりそうだと思いました。
会場で用意されているマイクをスタンドに固定して演奏したり、生音で演奏することも多いと思いますが、会場によっては音が響きづらいとか、お客さんがたくさん入ると音が吸われて、ピアノと比べたときにリバーブ感を足したいときは、マイクがあったほうがある程度は相性が良くなると思います。会場のピアノとの相性も含めてマイキングすれば、コンタクトマイクも使えるぐらいパリッとしすぎない。硬すぎないというか。そこはすごく感じた部分ではあります。
動き回ってバンドと一緒にやるような人も、アコースティック編成でも活用できそうだと。
清水:私もそうですけど、出音に対して高域がシャリッとしてしまうのが苦手な人は、たぶん管楽器の人には多いと思うんです。ロックなライブハウスとか、そういった環境でも音域を問わず素直に出してくれるのは、すごくいいなと思いました。
PROFILE
清水玲奈
エレクトロな要素に加えメロウで中毒性のある楽曲を、エッジのきいた自身のサウンドで表現し続けるサックスプレイヤー清水玲奈。
現在も日本国内、幅広く活躍中。
1989年生まれ、大阪府堺市出身。
6歳よりピアノ、13歳よりフルートを始める。
大阪府立泉陽高校入学後、軽音楽部でテナーサックスに出会う。
2006年神戸jazzソロオーディションに合格、熱帯jazz楽団と共演。
その後、FM COCOLO,朝日放送『musicるTV』,新聞などメディアに多数出演。
2008年 甲陽音楽学院入学後、古谷光広氏、荒崎英一郎氏に師事し在学中からLIVE活動を行う。
2009年『Power LIVE 2009 』でベストソリスト賞を受賞。
2011年からトート音楽院で講師業を始める。
2015年9月~2017年12月 東京ブラススタイルに所属。
日本全国の小中高生を中心にクリニックを行い、芸術鑑賞会などにも多数参加。
幅広い活動により出会えたアーティストのライブサポート、レコーディングにも参加。
2017年松尾スズキ演出 長澤まさみ主演ミュージカル『キャバレー』のキット・カット・クラブ・バンドとして、東京・神奈川・大阪・仙台・愛知・福岡など全38公演出演。
2017年Roland初のデジタル管楽器 エアロフォンのセミナーやレッスンを精力的に行い、デモンストレーターとして音楽誌Sax World(Vol.6~9)で記事を連載。
2018年、オリジナル全7曲を収録した自身初のリーダーアルバム『1031~イチマルサンイチ~』をリリース。
音楽誌『jazz Life(2018.12月号)』『Sax World(vol.11)』にアルバムレビューが記載され、”歌えるインスト”と注目を集める。
2018年10月~2019年2月 レコ発ツアーLive、大阪・東京・台湾など、全7カ所(追加公演も含む)どの会場も満員御礼、大盛況で幕をとじる。
2019年6月台北 雅痞アートカフェにて行った自身のリーダーliveでは、約80名を動員。
11月 自身アルバムの中から2曲、Remix versionを配信開始。
2020年7月 サックスのみならず、フルートやキーボードなど重ねる音にまでこだわったデジタルシングル 『Thick Fog』がリリースされ、i-Tunes(Japan) Jazz部門で18位を記録。
12月 AKB48柏木由紀 初のディナーショーでのバンドメンバーとして参加。
2022年2nd Album 『the new dawn』
2023年3rd Album 『MOTIVE』をリリース。
Apple Music ジャズシーン、オルタナティブシーンなど、サックスプレイヤーでは珍しい幅広いジャンルでのプレイリストインを記録する。
エレクトロな要素に加えメロウで中毒性のある楽曲を、エッジのきいた自身のサウンドで表現し続けるサックスプレイヤー清水玲奈。
現在も日本国内、幅広く活躍中。
https://www.reinashimizu.com/