AUDIX ARTIST/ENGINEER INTERVIEW #06 山本淳也

独自技術による高品質と優れたコストパフォーマンスが特徴であるRoland Partner Brandのマイクブランド「AUDIX」、その魅力を多角的にお伝えするインプレッション・インタビュー。今回は各方面で活躍中のドラマー・山本淳也氏に、自宅スタジオに導入したDP Elite 8の使用感とAudixの魅力を伺いました。

素直なイメージで僕が欲しいアタックやロー感が出る

#06山本淳也

楽器の音をいい意味で気持ちよく拾ってくれるマイクが好きです

まずは山本さんの活動内容を教えてください。

山本:タイムリーなのですが、BiSHのサポートをさせていただいていて、解散ライブを東京ドームで終えたばかりです(笑)。あとは、X JAPANのToshIさんのソロライブのバンマスや、現在はAdoの全国ツアーに参加させてもらっています。最近は初音ミクや『ヒプノシスマイク』、『プロジェクトセカイ』といったライブもやらせてもらっていて、サポートの他にCUTTさんというアーティストとSPEED OF LIGHTS という3ピースバンドもやらせてもらっています。

これまでどういったマイクを使ってきましたか?

山本:自宅に録音できる環境があるのですが、今まではいわゆるスタジオにあるオーソドックスなマイクを使ってきました。AUDIXは現場で何度か使ったことはあったのですが、今回初めてちゃんと使わせていただきました。

AUDIXのマイクを知ったのはいつですか?

山本:僕は機材が好きなので、スタジオに行った時に“このマイクは何だ?”といろいろと見て回るタイプですが、AUDIXの存在自体を知ったのは約20年前だと思います。宅録を始めるにあたってマイクを選定する時から存在は知っていたのですが、最初は“とりあえずオーソドックスなマイクを”という感じで揃えたので、そのままズルズルときちゃったところはあります。個人宅で一度マイクが落ち着いちゃうと、なかなか他のマイクに手を出せないので。

いろいろな縁があってAUDIXを使用してみたということですね?

山本:そうですね。ここ(とあるライブハウス)では前から使っていて、それこそPAの石金慎太朗さんが持ってきてくれたので試させていただきました。だから“この音、聴いてみてください”とちゃんと試したのは最近です。石金さんは僕の耳中を一番熟知している人なので(笑)。

宅録やライブ現場などで違うと思いますが、マイクを選ぶ時に基準にしているものは何ですか?

山本:宅録の時はなるべくナチュラルというか、原音に近い状態で録れて、そこから好きな音に調整できるもの。ナチュラルに録れることを重要視しています。
ライブの時は耳の中(イヤモニ)を細かく作るというか、叩いた時に一番気持ちいい状態に持っていきたいんですよね。原音をそのまま返すよりも、ある程度整った音を聴きたいというか。もちろん“ライブはこうありたい”という音はありますが、外に出る音はどうしてもPAさんに委ねるところがあるので、自分が納得できる音であればそこはもう全然OK。ライブに限っては、楽器の音をいい意味で気持ちよく拾ってくれるマイクが好きですね。

“整った音”という表現がありましたが、具体的にはどういう音でしょうか?

山本:わかりやすく言うと、キックはアタックの”パチン”と下の”ズドン”が出る音。モコっとした部分は要らなくて、CDで聴くような音というか。あと、イレギュラーなのかわからないですけど、必ず耳の中に全体のリバーブを返してもらうんです。

それは珍しいパターンですね。

山本:そもそも僕はDAWを使い始めたのが遅くて。昔、バンドリハの録音を家でする時、いわゆるヤマハのミキサーとかに全部の楽器を入れて、3バンドしかないEQを使っていかに後編集じゃなく同録でキレイに録れるかをずっとやっていて。そこにリバーブをかけてそれを聴きながらリハをやっていたのでその癖があるのか、生音で聴こえるよりは、CDじゃないけどキレイなバランスで聴こえるのが理想で。だから必ずどの現場でも“全体にリバーブを返してください”と言うようになりました(笑)。モニターという概念で言うと、基本的にはプレイヤーが鳴らしている音をそのまま返すのが普通だと思うので、“リバーブを返してください”と言うと“あ、返すのね”みたいな感じになるんですけど(笑)。

現場で使用するマイクは現場によりけりですか?

山本:そうですね。そこに関しては僕が指定することはなくて、基本的には持ってきていただいたマイクを使います。スネアが定番マイクなのはほぼ決まりきった感じですが、トップマイクは現場によっていろいろです。

アーティストによって音像のイメージも違いますもんね。

山本:そうですね。あとはエンジニアさんの好みもあると思うので。

“この楽器ってこう鳴るんだ”と新しい発見がありました

では、AUDIXのマイクについて聞きたいと思います。実際に試されたモデルは何ですか?

山本:DP Elite 8という8本セット*です。使うなら宅録で使える本数を試したかったので、わがままを言ってお借りしました(笑)。自宅で組んであって、この間ちょうど劇伴を宅録することがあったので使わせていただいたんです。
*D2✕2、D4、D6、i5、SCX1C overhead✕2、SCX1HC hi-hatの8本

8-PIECE DRUM MICROPHONE PACKAGE

試してみての率直な感想は?

山本:特にお気に入りだったのがキックのD6とスネアのi5です。全体的なイメージとしては素直で、キックに関して言えば僕が欲しいアタックやロー感が出ている。普通に立てて何もせずに聴いた状態で“僕が好きな感じ!”に鳴ってくれたので、すごく使いやすかったですね。忖度なく言うと、ナチュラル過ぎるがゆえに“ここはカットしちゃおう”というのは多少あります。楽器との相性もありますが、逆に言うとそれだけ全帯域をちゃんと拾ってくれる印象がありました。

今まで宅録で使われてきたオーソドックスなマイクともまた違いますか?

山本:そうですね。今まで使ってきたマイクは使い慣れているし、いわゆる世に出ている音源で使われることが多いマイクなので良くも悪くも慣れた音、聴いたことのある音ですよね。AUDIXで録るのは初めてだったので、聴いてみて“こういう感じになるのね!”みたいな新鮮さがあって。悪い意味の新鮮さじゃなくて、シンバルもキレイに拾ってくれるし、“この楽器ってこう鳴るんだ”と新しい発見がありました。

D6とi5の話がありましたが、その他のマイクに関して気になったところは?

山本:先ほど話した劇伴は、タムとかトップはほぼEQナシでデモを制作したんじゃないかな。それこそ普段は、ある程度はこちらで音を作って納品するのですが、今回はだいぶEQの調整を減らして納品したんです。僕がいいなと思う音源に持っていけた時、それこそナチュラルというか、そのままの音で良かったんです。

では、AUDIXのオススメの使い方としてEQはあまりイジらず?

山本:そうですね。音楽ジャンルにもよると思いますが、まずは何もせず聴いて…がスタート地点でいいと思います。

山本氏の演奏を試聴

DP Elite 8+アコースティックドラムセット

すでに宅録をやっている方へアピールポイントがあれば。

山本:まずね、D6を使ってもらいたい(笑)。俺はだいぶ好きだったんで。もちろん好みだとは思うけど、D6とi5はすごいですね。ここではスネアにi5を使わせてもらっていますが、ほぼノンEQですよね。石金さんの力量もありますけど、まずは楽器をちゃんと拾ってくれるのが第一条件ではあると思うので。楽器との相性もあるんですけど、たぶん今の現場の中で1~2を争うくらいここの環境は整っています。

決まらない時はどこかを妥協する時もあるんですか?

山本:そうですね。基本的にはこだわるけど、こだわりすぎて現場の流れをストップさせちゃうのは嫌なので。だから自分の中で妥協点はあって、クリックが聴こえて楽器がひと通り聴こえていればできなくはなくて。時間がない時に文句は言わない。やりづらくても、不可能な範囲でなければやるというポリシーがあります。

AUDIXはどういったユーザーにオススメできそうですか?

山本:今はコロナ禍からの流れで宅録する人が増えて、僕の周りのドラマーも宅録環境を整えた人が多いんですよね。もちろん住環境の関係でエレドラじゃないと録れない場合はあるけど、生で録る環境を整えたという話を聞くことが多くて。で、どうしてもドラムを録る時って、インターフェイスも然りですけどマイクの本数が必要になってくる。世の中には無限にマイクが存在するので、例えばスタジオでセットを借りるのもいいと思うんですけど、これから宅録を始めたりスタジオに入って自分の音を録りたい時、まずはこのセット(DP Elite 8)を1回使ってほしい。それで録って聴くのはめちゃくちゃ良い経験になると思うので、チョイスに入れるとすごくいいと思います。

価格的には約30万円なので決して安くはありませんが。

山本:でも、マイクを単体で買うとなるとそれ相応の値段になっちゃうので。30万円と聞くと確かに高いと思うんですけど、マイクが8本入っていてドラムをまるっと録れると考えると、決して高くはないと思いますよ。

PROFILE

山本淳也

ドラマー・パーカッショニスト。1984年2月17日生まれ。東京都出身。クラシック演奏家の家庭に生まれる。東京ディズニーリゾートやBLUE MAN GROUP等のパフォーマンスショーでの演奏経験を経て、さまざまなアーティストのサポートやレコーディング等に参加。自宅スタジオで宅録ができるドラマーとしても高い評価を得ている。
アイナ・ジ・エンド(BiSH)、藍井エイル、岩崎良美、内田真礼、内田雄馬、梶原岳人、茅野愛衣、コブクロ、チャン・グンソク、中島美嘉、花澤香菜、花江夏樹、初音ミク、ヒプノシスマイク、平井大、プロジェクトセカイ、安野希世乃、やなぎなぎ、柚希礼音、Ado、Aimer、BiSH、LiSA、THE S×PLAY(ex 菅原紗由理)、PATA(X JAPAN)、ReoNa、SixTONES、SKY-HI、SMAP、SUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN)、TEE、ToshI(X JAPAN)、w-inds.、他。
最近ではToshI(X JAPAN)のソロコンサートでバンマスを務める他、読売日本交響楽団や神奈川フィルハーモニー管弦楽団などにゲストドラマーとして呼ばれるなど多ジャンルなフィールドで活動している。
 
Instagram
http://www.instagram.com/yamajun.drums
 
Twitter
http://twitter.com/drums_com




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