V-MODA ARTIST INTERVIEW #14 大喜多 崇規

04年に設立されたイタリア発のヘッドホン・ブランド“V-MODA”の代表的モデルを、プロ・ミュージシャンが試聴するインプレッション・インタビュー。第14回目は、4人組ロックバンドNothing’s Carved In Stoneよりドラマーの大喜多崇規が登場。

V-MODA ARTIST INTERVIEW

#14

Nothing’s Carved In Stone
大喜多崇規

04年に設立されたイタリア発のヘッドホン・ブランド“V-MODA”。世界のトップDJを魅了したフラッグシップ・モデルM-100をはじめ、比類のない品質、ファッション・フォワード・デザインに優れた商品群をリリースし続けている。そんなV-MODAを、プロ・ミュージシャンが試聴するインプレッション・インタビュー。第14回目は、4人組ロックバンドNothing’s Carved In Stoneよりドラマーの大喜多崇規が登場。かねてより彼が愛用しているスタジオモニターヘッドホンのM-200と、M-100のサウンドをブラッシュアップさせたCrossfade M-100 Masterの2モデルを試聴してもらった。

ドライバーの質や
音の解像度
製作者の心意気を感じさせる

大喜多が考える
ヘッドホン

いいヘッドホンが手に入ると
また新しい音楽が聴きたくなる

大喜多さんがV-MODAを知ったのはいつですか?

実はローランドさんが流通される2016年よりも前からですね。バンド結成〜3年ほど、ナッシングスではDJ用のヘッドホンを使っていて、髪の毛が黒だったのでシルバーやグレーなどヘッドホンを装着しているのがわかるものを探していた時に、アルミパネルを使っているし形もカッコいいなと思っていたんです。

大喜多さんの好きな音質とは何でしょうか?

歌が好きなので、歌の輪郭がツヤツヤしているような、近くで歌を歌っているように聴こえたらすごくテンションが上がりますね。

ドラムを重点的に聴くのかなと思っていました(笑)。

ドラマーとして成長したいと思っていた時はそういう時期もあったかもしれないですけど、ある程度自分のプレイも出来上がってきた中で、何が大事かというと“バランス”なんです。もっと純粋に音楽を楽しむために、届けるためには歌のポジションはすごく大きいものかもしれないですね。

ヘッドホンはどのような使い方をしていますか?

ライブでは頭を振っても抜けないのが最低条件なのでイヤモニを使いますが、スタジオだとヘッドホンを使うことが多いですね。カスタムのイヤモニって割とチューニングがされていて、ドラムに適しているように低音を増幅させていたり配線でEQができるんですけど、レコーディングとなると話はまた別で。みんなに音を届けるわけだから、割と同条件というか、みんなが聴いているイヤホンとかヘッドホンで聴くとどうだろう?という比較も行います。だから、特性としてはナチュラル&フラットなヘッドホンが基本になってきます。

大多数が使っているようなイヤホンやヘッドホンでちゃんとチェックをすると。

だから聴こえない音もあるんだけれど、どうしても消えてほしくない音はミックスの中で残したいなと。そういう比較はメンバーみんなでも行いますね。

外で音楽をリスニングする時はヘッドホンではなくてイヤホンですか?

最近はイヤホンが多かったですね。必ずライブ用に持ち歩いているのと、ちょっとパソコンを広げてチェックしてすぐに外す、適当に扱ってもいいイヤホンの常に2個は持ち歩いています。

外出先では自分たちの音源を聴くというアーティストの方も多いですが、大喜多さんはどのような音楽を聴かれますか?

僕はわりとApple Musicを流しっぱなしにして、そういう時に知らない音楽と出会いたいなと思っています。自分の音源は自宅スタジオで聴くことが多い。ずっと自分たちの音楽だけを聴いていると、やっぱり仕事モードになるので(笑)。音楽を楽しむためには、リラックスした状態で、いい音で聴きたいという気持ちがあるので。だから、いいヘッドホンが手に入ると、また新しい音楽が聴きたいと思うんですよね。

M-200 × 大喜多崇規

ヒリヒリしているというか、質感もわかる気がします

大喜多さんはM-200を愛用されていますが、いつから使用していますか?

初めて試聴したのは昨年の10月。エレドラを叩きながら時間のある限りイヤモニとの比較をしていたんですけど、イヤモニと比べるとレンジが広いというか、下までしっかり出てくれる。イヤモニだとドライバーの特徴でどうしてもローの圧力が弱いんですよね。それは致し方ないけれど。

M-200でどのような音楽を聴かれましたか?

ちょうどスタジオ明けだったので、自分たちのプリプロ音源を聴きました。印象としては欲しいボーカルの帯域もありつつ、バックトラックが聴こえたので“いいなぁ”と。欲しい音量も出つつ、自分のバランスも兼ね合いが取れたので聴きやすい。歌詞のチェックまで細かくできる感じがしました。だいぶ好感触ですね。

M-200では制作に合うようにかなりフラット寄りにチューニングされています。いろいろな楽器に必要な音の範囲に、フォーカスして作っているのがM-200です。

例えばみんなが使うようなポータブルなものだと、迫力のある音というのはドンシャリに近い傾向にあると思うんですけど、それと聴き比べても中音域が充実している印象。例えばプリプロのトラックダウン前のデモで、聴きたい音はやっぱり中域なんですよね。スネアやハイハットのしっかりと芯のある音を聴きつつ、その中でボーカルとのバランスを取っていきたい。やっぱり楽曲を作る時に歌は大事な要素なので。あと、M-200のためにコイルを作り替えたみたいですね。

ドライバーのコイルには、日本製のカッパークラックドアルミワイヤーを使っています。アルミは軽いので音の鳴りも良くなるんですけど、どうしても耐久性や抵抗の関係でバランスが悪くなるので、銅線にアルミを組み合わせたワイヤーを使っています。

なるほど。それのおかげかもしれないです、何か製作者の心意気を感じたんですよね。音の解像度とか。楽器とドラムの音ってどうしても重なりやすいけど、その奥行きの中に、フッと音像が出てきたほうがありがたいんです。

今回、試聴するに当たってどんな音楽を聴きましょう。

ジョエル・コリー「ヘッド・アンド・ハート」と、もう1曲はショーン・メンデスとジャスティン・ビーバーの「モンスター」を聴きたいと思います。
(しばし試聴)
 いや、スタジオにいるみたい(笑)。低音域がすごくモチモチしているし、ボーカルはウインドスクリーンの前で張り付いたように歌っているのがわかる感じ。すごい! これはいい! 本当にスタジオでチェックしている感じですね。日本って歌や歌詞が持ち上がることが多いと思うんですけど、アーティストとしてはドラムからベースからギターから鍵盤から歌まで、全部を聴かせたいというのが音楽を発信する立場としてはあると思うんです。それくらい下から上まで全部が出ている印象がありました。これは気持ちいいですね。細部が聴こえる。ヒリヒリしているというか、質感がわかる気がしますね。

大喜多さんが聴く際に重視している歌の部分も。

うん、僕のために歌ってくれている感じがしますね。すごく近いところで歌ってくれているので、聴こえすぎて恥ずかしいです(笑)。あとなんかね、周りにいる皆の声が全然聞こえないですね。密閉もすごくいいのかなって。このままラストまで聴いちゃいそう(笑)。これだけ密閉が良かったらレコーディングの時もすごく良さそうです。遮音がしっかりしているので、音楽に集中できる点も良いですね。

M-200はドライバーが斜めについているんです。人間の耳にまっすぐに音が入る角度で、これがV-MODAのドライバーとしては特徴があるのかなと。

ゲーム用など含めてヘッドホンは何種類か持っていますけど、重い軽いとかではなくて圧着が痛い時もあるんです。長時間できないよって。不思議ですけどM-200はまったく痛くないですね。頭のてっぺんあたりに支点を感じますね。頭を挟むのではなくて輪郭に沿ってカチャッとフィットしている感じ。そのおかげで長時間装着できる気がします。

M-200

V-MODAヘッドホンの特徴であった豊かな低音域に伸びやかな中高音域を加え、解像度を上げる音作りを進めることで幅広い帯域をフラットに再生することが出来る「原音を忠実に再現する」ヘッドホン。

Crossfade M-100 Master × 大喜多崇規

リスナーと制作者の差がないような気がします

もう1機種試聴していただきたいのがCrossfade M-100 Masterです。パッと見は同じですが、トラックメイキングに合うようにと作られたモデルで少しローが強く音質は違います。

  

うん、これは明らかに違いますね。低音が腰にくるというか、脳裏にバッとくっつく。一発でローが強い感じがしましたね。スーパーローというよりは、上の帯域の低い成分が出てきて、声の下にもちょっと増幅されている。ベースとかキックが入ってくるとガンガンきますね。リスニングには気持ちいい。そういう味付けがするから若干ボーカルが遠くなりますね。でも、外のノイズが合わさると必要なローを補ってくれる気もします。M-200とはちょっとタイプが違いますけど、これはこれでいいですね。

大喜多さんはどちらが好みですか?

  

用途は違う気がするけど、より音楽的にという観点だったらM-200を選ぶ気がします。制作の時にはM-200。ヘッドホンでプレイするんだったらM-100 Masterというのがドラム的には向いているのかもしれない。最近だとミュージシャンの方も良い耳を持っていて、そして良い音を届けたいと思っているので、フラットで容量が大きい再生音域の広いユニットが必要不可欠、どちらもポテンシャルが高いので嬉しいチョイスができますね。普段はずっとハイレゾ環境で聴いているので、それと同じか近い状況で音楽を聴けるのは、リスナーと制作者の差がないような気がします。そこは推したいと思いますね、いつも聴いている僕らの音と同じですよって。

Crossfade M-100 Master

ローランドのエンジニアがチューニング・プロセスに参画し、M-100サウンドをブラッシュアップ。新しいサウンドシグネチャを採用、ハイレゾ対応するなどトラック・メイキングに最適化したオーバーイヤー・ヘッドホン。

V-MODAを試聴して

心を込めて作った作品をいい音で聴いてもらいたい

良い意味で二極化された2モデルで、すごく楽しかったです。M-100は単純にテンションが上がる音質だからプライベートで楽しみたいし、とは言えM-200もミュージシャンとして使いたいし…シチュエーションで使い分けるのは贅沢ですかね(笑)。音楽がただただ大好きで、音にどっぷり浸りたいという人はどちらも良い音であることに変わりはないと思います。
 
ライブや音楽のあり方が変化する中で、配信ライブも増えて、今まで以上に配信の音質も良くなってきていますよね。チーム(PRIMAGIC)でも配信をしていますが、ちゃんといい音で届けられている自負がありますし、心を込めて作った作品をやっぱりいい音で聴いてもらいたいです。もちろん、スマホのスピーカーでも良さは伝わると思うけど、作ったままの状態というか、私が思っている音と君が聴いている音が一致していてほしいなという気持ちがあります。少しの差かもしれないけれど、作り手からしたら大きな差だと思いますので、これをきっかけにぜひ皆さんもヘッドフォンに興味を持っていただけると嬉しいです。

PROFILE

Nothing’s Carved In Stone/2008年、始動。村松拓(Vo,Gt)、生形真一(Gt)、日向秀和(Ba)、大喜多崇規(Dr)からなる4人組バンド。2009年に1stアルバム『PARALLEL LIVES』をリリースし、その後毎年コンスタントにフルアルバムを発表&各地ツアーを敢行。10周年となる2018年には、初の日本武道館公演を開催。2019年、自身のレーべル“Silver Sun Records”を設立。2020年3月、初のデジタルシングル「NEW HORIZON」、6月にデジタルシングル「Dream in the Dark」を配信リリースし、有料配信ライブ『Studio Live “Navigator”』を開催。8月26日にセルフカバーベストアルバム『Futures』をリリースし、9月19日には有料配信ライブ『Studio Live “Futures”』を開催。11月15日には恒例のワンマンライブ『Live on November 15th 2020』をKT Zepp Yokohamaにて有観客&生配信にて開催した。

https://www.ncis.jp

https://twitter.com/NCIS_BANDS

https://www.instagram.com/nothingscarvedinstone

RELEASE

DIGITAL SINGLE
Bloom in the Rain
各配信サイト&サブスクにて配信中
Linkfire:https://ssm.lnk.to/BitR

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