V-MODA ARTIST INTERVIEW #12 SACHIKO

04年に設立されたイタリア発のヘッドホン・ブランド“V-MODA”の代表的なモデルを、プロ・ミュージシャンが試聴するインプレッション・インタビュー。第12回目は元FLiPのボーカル&ギターで現在はMAISON ”SEEK”というプロジェクトでも活動中のSACHIKOが登場。

V-MODA ARTIST INTERVIEW

#12

SACHIKO

04年に設立されたイタリア発のヘッドホン・ブランド“V-MODA”。世界のトップDJを魅了したフラッグシップ・モデルM-100をはじめ、比類のない品質、ファッション・フォワード・デザインに優れた商品群をリリースし続けている。そんなV-MODAを、プロ・ミュージシャンが試聴するインプレッション・インタビュー。第12回目は、元FLiPのボーカル&ギターで現在はMAISON ”SEEK”というプロジェクトでも活動中のSACHIKOが登場。年内、新たにバンドを始動させるべく、現在制作中だという彼女。ローランドのエンジニアがチューニングプロセスに参加し、M-100のサウンドをブラッシュアップさせたCrossfade M-100 Masterと、小型軽量でスマートなフォルムを実現したXSを試聴してもらった。

聴きやすい距離感があって
言葉もちゃんと聞こえてきて
ほど良い臨場感がある

SACHIKOが考える
イヤホン/ヘッドホン

長時間聴いていても疲れない
ナチュラルな音が理想なんです

私、最近ヘッドホン離れをしていたんですよね。執着心がなくなっちゃって。一時期はどのヘッドホンが自分に合うのか、安いものから高いものまでいろいろなヘッドホンを聴きまくって、解像度が高いとどうなるんだろう?とか、数値に対してどうなるの?っていうことがすごく気になる時期があって。それが2014年くらいで、バンド音楽から少し離れて、エレクトロや打ち込み要素とバンドが混じった音楽を聴いていた時期だったので、耳を鍛えようと思っていたんです。高価なものほど比例して解像度も高くなるけど、決して値段の高さと自分の好みは等しくないんだなとわかって、最終的に今行き着いたのがスマートフォンの純正のイヤホンだったんですね。もともと、音色的に色付けされているイヤホン/ヘッドホンはあまり好きじゃなくて、かと言ってレコーディングで使うヘッドホンのように硬い音は苦手で。バンドでレコーディングをしてきたから、マスタリングスタジオで聴いた音に近い、長時間聴いていても疲れないナチュラルな音が理想なんです。そういうのを何周かしてヘッドホンから離れていたのですが、今回こういうお話をいただいたので、いいタイミングでまたディグれると思って楽しみです。

Crossfade M-100 Master × SACHIKO

スーパーローというよりも
ローミッドにふくよかさがある

Nulbarich、King Gnu、Official髭男dism、あいみょん、ずっと真夜中でいいのに。など、邦楽縛りでいろいろな曲を試聴しました。丸みのある気持ちいい低音なので、長時間聴いても耳に圧迫感がない印象をまず受けて。コンプ感が強めで、フィルターのかかったような低音だと、飛行機で上空にいるときのような耳が詰まった感じがするので苦手なんです。でも、M-100はキックの音がマレットで叩いているような広範囲に太い低音なので、長時間聴いてても疲れないなと思いつつ、アコギなどの繊細な音も出してくれる。スーパーローというよりもローミッドにふくよかさがあって、そこを中心に作られている印象でした。

ハイが痛くても下(ロー)が強すぎても嫌なのですが、そこがだいぶ抑えられていて、気持ちのいい聴きたい音域が出ています。あと、V-MODAの創設者がもともとDJだったのも関係しているのか、ベースが強調されやすい音質かなと。私もDJをやっていて思うのが、低音のキックもそうなんですけど、“ベース音がどう体にくるか”を大切に音を作ったりもするので、そういう面ではDJ派生な部分があるなと感じました。DJプレイにも向いていると思いますが、DJとして使うのであればもう少し“シャリ”(高音域)があったほうがいいかな。DJをやっている会場だと音が埋もれてしまいがちなので、“シャリ感”がもっと上にあると、音が全体的に耳元で聞き取りやすいのかなと思いました。

装着感はすごくいいです。オーバーイヤーヘッドホンって重くて圧迫感があるんですけど、M-100は両サイドから包み込まれる力具合がちょうどいい。圧迫感が強すぎると頭が痛くなるのでフィット感は大事です。結局、それがストレスになってヘッドホンを使わなくなる理由のひとつにもなるので。

Crossfade M-100 Master

ローランドのエンジニアがチューニング・プロセスに参画し、M-100サウンドをブラッシュアップ。新しいサウンドシグネチャを採用、ハイレゾ対応するなどトラック・メイキングに最適化したオーバーイヤー・ヘッドホン。

XS × SACHIKO

聴こえるべき歌とリズムが点で見えて
高音域の伸びがある

まずは見た目がかわいいですよね。女性って華やかなヘッドホンに惹かれがちじゃないですか。サウンドに関しては、歌の距離感が近くて何よりも歌が聴きやすい。そこに照準を合わせている音の作りです。試聴した曲はM-100のときとほぼ同じですが、少しエア感を含んだ低音と歌(声)の距離の近さは、大多数の人が使ったことがあるであろうアップル純正のイヤホンに近い気がしました。低音はM-100よりもスッキリしている印象があって、全体的においしい音域をギュッとまとめた感じ。聴こえるべき歌とリズムが点で見えて、上(高音域)の伸びがあって、M-100が3次元だとしたらXSは2.7次元という印象ですね。

  

サイズが小さいので装着感もM-100とは違いますが、一般的に小ぶりなヘッドホンだと圧迫感が強いものが多いし、ズレ落ちそうで不安なものも多いじゃないですか。フィットしてるの?してないの?みたいな。このサイズでほど良い重量感があるので、ヘッドホンを装着しているという安心感がありつつ、重みもちょうどいいからストレスがない。そういう意味でも、女性に向いているなと思いました。サイズが小さいと純粋に持ち運びもラクになりますし、かさばりにくいのもメリットですよね。ヘッドホンのユーザー層が女性よりも男性のほうが多いからかもしれないけど、ヘッドホンのデザインってカッコ良さが優先されている気がしてて。小ぶりでオシャレでハイスペックなヘッドホンってあまりない印象なので素敵です。ちょっと攻めてるファッションの人にも、絶対にハマると思います。あまり目にしないデザインなので、周りの人と違うヘッドホンを持ちたい人にもオススメですね。

XS

女性が装着したときのシルエットの美しさを大切にデザインされたオンイヤー・ヘッドホン。M-100サウンドをそのままコンパクトサイズに凝縮。ファッション・アイテムとしてコーディネイトの邪魔をしないスマートなフォルムを実現。

V-MODAを試聴して

こんなに聴きやすいんだという
ビフォーアフターがある

XSは断然、歌ものの曲に合うと思います。例えば、今だとサブスクリプションでトップ20にいるような流行りの曲が聴きやすいのかなと。M-100は低音が効いているエレクトロ寄りの音楽かな。生バンドというより、どちらかと言うとその要素がある曲のほうが低音が心地いいのかなと。楽器をやっている人や専門的な人じゃないと、“ギターやドラムの音が〜”って視点では言わないと思うんですよね。一般的なリスナーは歌を一番聴いているという意味でも聴きやすい距離感があって、言葉もちゃんと聞こえてきて、ほど良い臨場感がある。
 
細部の音まで聴きたかったら断然M-100だと思います。同じ曲を聴いて、アコギの一つひとつの音のタッチや、かすかに鳴っているギター弦の擦れる音までも聴こえたので。耳がそこまで求めているのであればM-100がオススメです。
前情報を見ず先入観を持たずに来たので、前衛的なデザイン=少し尖った音なのかなと思ったんです。いわゆる“シャリ感”とか“コンプ感”が強いのかなと思ったんですけど、実際に聴かせていただいて、聴きやすさを重視していたり、低音も出るけどくどくない印象だったので、こんなに聴きやすいんだというビフォーアフターがありました。

PROFILE

PROFILE SACHIKO/2005年、ロックバンド“FLiP”を結成。2010年、ミニアルバム『DEAR GIRLS』でメジャーデビューを果たす。2016年の活動休止後、ソロプロジェクトMAISON ”SEEK”を始動。作詞・作曲をSACHIKO、トラック制作とシンセサイザーをLASTorder、ドラムをSHOZO(ex.MY WAY MY LOVE)が担当。

https://twitter.com/sachiko_tonaki

http://maison-seek.com

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