AUDIX ARTIST/ENGINEER INTERVIEW #14 佐々木萌-snowy-

独自技術による高品質と優れたコストパフォーマンスが特徴であるRoland Partner Brandのマイクブランド「AUDIX」、その魅力を多角的にお伝えするインプレッション・インタビュー。今回ご登場いただくのは、バンドやソロ・プロジェクトでのヴォーカリストとして、また、数々のアーティストやイベントへの楽曲提供など、 ボーダーレスに活動する佐々木萌さん。3種類のダイナミック・マイク(OM3、OM6、OM11)の インプレッションを伺いました。

自分の声にバチッと合ったのがOM11です

#14佐々木萌 -snowy-

マイク選びはテンションが上がるかどうか

まずはsnowyさんの自己紹介をお願いします。

snowy:佐々木萌という名前ですが、snowyというソロ・プロジェクトやエドガー・サリヴァンというユニットで歌ったり、いろいろな方に楽曲提供をしたりといくつかの形態で活動しています。あとは2023年に現代アートのイベントでインスタレーション・ソロ・プロジェクト、要はアンビエント・サウンドを作る観光庁とのお仕事をしたりと多岐にわたります。ただ今回もそうですが、元々はシンガーソングライターとして曲を作るところから発生しただけで、私としてはひとつのことをやっている気持ちでいるんです。年齢を重ねたり時代によっても変化は感じますが、基本的にはおうちで曲を作って、それを提供したり披露する活動が主になります。

マイクとの関わりは大事ですね。

snowy:おっしゃる通りで、snowyでは制作面でミックス~マスタリングまで自宅で完結しているのですが、トラック・メイキングにおけるサンプリングのためのボーカル以外の音録り、そしてライブではダイナミック・マイクを用いて演奏するという意味でマイクとの関わりは大きいと思います。

所有しているマイクの本数は?

snowy:コンデンサー・マイクは自宅に2本、プリプロを行うスタジオに5~6種類あります。ダイナミック・マイクもいくつか種類はあるのですが、メインで持ち歩くものは2本でそこから選びますね。snowyのライブではエフェクト・マイクを毎回使うので、2本を持ち込んで正面にメイン・マイク、横にエフェクト・マイクを立てています。エフェクト・マイクはPCとインターフェースを通じて音を加工していますね。

マイクの選び方を教えてください。

snowy:4つに分けてお話すると、1つ目は音の良さのような絶対的なものよりも、自分が作る音楽とマッチするかどうかが重要かな。例えばキックが強い楽曲のときにどう聴かせたいか、アンサンブルの中でどう聴かせたいか。ミックスで言うと録音のときを再現したいとか、音源とは違うもっと強い歌い方をしたいとか、曲全体の中でどういう役割なのかマッチ感が重要です。
2つ目はテンションが上がるかどうか。緊張感だったりリラックスして歌いたいとか、曲に入り込みたいときって必ずテンションが大事なんです。テンションが上がるかどうかは、モニタリングしたときに聴こえる音と、あとは見た目(笑)。それはマイクに限らずギアに求める要素ですね。重量感も大事なのかな。軽ければいいときもあれば、ずっしりしていたほうがいいときもあるので、そういう細かいことがメンタルやテンションに関わってきます。
そこにも関わってくるけど、3つ目はタフであるかどうか。普段の公演じゃなくて、最低限の機材をカバンに詰めて全国のいろいろな場所で演奏や曲作りをする中で、タフでないと旅のお供というか相棒のようには使えない。どれだけ丁寧に扱っていても壊れたときに思いますよね。うわ、寿命短かったなって。
4つ目はライブ現場なのでダイナミック・マイクのことですが、関係性の浅いPAさんにも音像が伝わるというか、的確に音を作りやすいかどうか。これは見落としがちというか、ライブハウスでパフォーマンスをする人にとってストレスを抱えている部分だと思うんです。試奏したときはすごく良かったのに、転換の時間が短いために本番でハウって上(高音域)を削られちゃうとか。限られた時間で好きな音像を作れるかどうかは重要ですね。という4点に分けましたが、全部まとめるとテンションが上がるかどうかです。鉄のハートを持っている人なら違うと思うけど、私はちゃんとした音が素敵に出ている感覚がないとライブは難しいタイプなので、そのためにもギア選びは大事なんじゃないかな。

OM3とOM6は中低音がふくよかに出て
かつ高音のカリッとしたところもしっかり出る

AUDIXとの出会いは?

snowy:実際に使ったのは今回のお話をいただいてからです。自宅環境とライブで使わせていただきました。

今回はダイナミック・マイクのOM3、OM6、OM11を試していただきました。どんなシチュエーションで試しましたか?

snowy:自宅では試奏のためにトラックを用意して、ゼンハイザーのe935、テレフンケンのM80と特徴的な要素がある他の機種と比べながら試奏しました。試奏環境は自宅と、もうちょっと大きな音を出せる友人の家でも試してみて、ライブではエフェクト・マイクとしてOM11を使いました。

それぞれのインプレッションをお聞かせください。

snowy:まずは大まかに言うと、OM3とOM6がOM11に比べて似ている印象を受けました。トラックを用意して試奏したと言っても、耳中だけのモニターじゃなくて、おうちでライブじゃないかってぐらいの音量でトラックを流しつつ歌ったんです。わりとライブっぽい環境を作ってみたのですが、たぶん私の声の特性もあると思うけどOM3とOM6は中低音がふくよかに出て、かつ上のほうというか、息の部分とか高音のカリッとしたところもしっかり出るイメージ。そのぶん他のマイクと比べると音量が出るのかなと。中低音とカリッとした高音まで積んでいるイメージなので、歯擦音のときにちょっと高音が割れたのがOM3とOM6のどちらにもあって。でもこれは歌の技術とかマイクとの距離感で改善できたり、PAさんとの関係性が浅いときでも“ここの帯域を”という注文が逆にしやすいのかな。なので、ハウッたときに公演の途中で勝手に高音域を削られずに済むかなと思います。

事前に対策できると。

snowy:はい。私の声の場合はOM6のほうが高音が割れちゃう現象があったので、もっとふくよかでブルージーな声を出す人だと、逆にそこを上げてくれるからオススメかもしれません。低音の丸みを帯びた部分も出るので、男性ボーカルとか私とは声質の違う人に試していただきたいと思いました。この中で一番、自分の声にバチッと合ったのがOM11ですね。全体を下げてほしいところに色をつけてくれて、すごくフラットに素直に聴こえる。高音が出過ぎることがなく、かつ中低音のモフッと感じる部分が抑えられて、ミックスするときに動かす帯域に近い声をいい感じに見せてくれます。

ライブで試されたのがOM11と。

snowy:はい。OM11は指向性が狭いんです。エフェクト・ボーカルってメイン・マイクと並べて置いているぶん音を拾ってしまうから、めちゃくちゃハウるというか。OM11をボコーダーのエフェクト・マイクとして使ったんですけど、狭い指向性が必要なので使ってみて良かったですね。シンセみたいな音にして出したのですが、歌詞もちゃんと聴こえるしトラブルも一切なくて。

どのようなライブで試したんですか?

snowy:1回目が、青山にあるアートスペースの万華鏡のインスタレーションだったのですが、歌うスペースがスタジオみたいになっていてモニター環境は自分の耳だけ。外音がスタジオの外だけに聴こえている特殊な環境だったのですが、とてもやりやすかったです。2回目は東急プラザ原宿でのイベントで歌うことがあって、それはショッピングモール全体に音が鳴るので、いろいろな音が鳴る中で声をどう拾うかだったのですが、OM11の指向性のおかげでハウったりトラブルもなく声を拾ってくれました。

今後はエレクトロやアンビエントで試したい

AUDIXというメーカーに対して抱いた印象は?

snowy:すごくタフなのかなって。あとはとても軽いから、持ち歩いたりするときも快適で。重量があると物理的な衝撃で壊れやすいイメージがあるけど、そういう意味でも壊れにくくてタフさがある。あとはさっきのテンションが上がる方程式でいくと、ハンドマイクで歌う人は疲れないからテンションが上がる(笑)。
自分のマイクを持ちたい人に言いたいのは、やっぱり音のイメージは大事に選んでほしいと思うんです。OM11はどんな現場でもアンサンブルの中でちゃんと聴こえるし、モニターが大きな環境でもしっかり働いてくれそうなイメージがありました。

今後、AUDIXのマイクをどのように活用していきたいですか?

snowy:今回のライブに関しては、新しい機材を導入するということもあってトラブルがないかを心がけていたんですけど、事故らないことがわかったので、エフェクト・マイクとしてもっとエフェクトをかけたり、これを機にもっといろいろな音で遊べるなって。あと最近は少なかったんですけど、機会があったらバンド・アンサンブルの中でも試してみたいと思います。特にドラムとか、高音がガシガシ聴こえる楽器が近い現場で。周りのミュージシャンにも、ボーカルに関わらず管楽器だったり、特性に合いそうな音楽性だったり声とか演奏スタイルを持っている人にどんどん試してみてほしいなと思いました。あとはライブハウスにもどんどん導入してもらったら、試す人が増えるのかなって。

どのようなユーザーにオススメしたいですか?

snowy:マイクは高品質で高価なものが永遠に続いていく世界だし、お金を出せばいい音が手に入るのは当然だと思いますが、ファーストギア、セカンドギアという点で、壊れても買い直せるぐらいの手頃感で表現したい音楽を拡張してくれる、マイクロフォンとしての役割を果たしてくれるものは大事だと思う。コスパも含めてAUDIXはオススメだと思います。

最後にメッセージをお願いします。

snowy:指向性とかタフさも含めて、アンサンブルの中で埋もれないのが選ばれている理由のひとつだと思いますが、私はまたちょっとそれとは違うジャンルなので、今後はエレクトロやアンビエントといった少ない音数で質感が重要になるジャンルで試していきたいです。

PROFILE

佐々木萌

故郷の雪景色を抒情的なサウンドで表現する新世代シンガーソングライター、音楽プロデューサー”snowy”。エレクトロポップバンド”エドガー・サリヴァン”のボーカル佐々木萌のソロプロジェクトとして、2022年2月に始動。作詞・作曲・編曲を自身で手がけ、ダンスビートと生楽器が融合したオルタナティブサウンドを特徴としている。
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自身の活動の他、Klang Rulerの作品への参加や土岐麻子、藤井隆らアーティストへの楽曲提供なども行っている。また、沖縄県名護市カヌチャベイアンドヴィラズ内のアミューズメント施設LUPiNUS内にある右脳活性森中秘密基地エリアやスパソラニ(SPA SOLANI)系列店スパ内BGM「聴くサウナ」等、空間サウンドデザインの事業にも携わるほか、1st EP『thermograph』のジャケットデザインを担当したarisa kumazawaと『音楽×絵』をテーマとした個展を開催するなど、多岐にわたる活動でも話題を呼んでいる。
 
▼LIVE情報
12/08(日)神田POLARIS
工藤さくら 2nd EP 『息吹のなかで』Release party ” ほしごや音楽会 “
 
[出演] ゆうさり、snowy、工藤さくら+赤瀬楓雅
 
Xアカウント
https://x.com/skmoeeee
https://x.com/snowy_info
 
Instagramアカウント
https://www.instagram.com/snowy_info/




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