V-MODA ARTIST INTERVIEW #18 トクマルシューゴ

04年に設立されたイタリア発のヘッドホン・ブランド“V-MODA”の製品をプロ・ミュージシャンが試聴するインプレッション・インタビュー。第18回目は、ギターと玩具を主軸に無数の楽器を演奏し、作詞・作曲/演奏/アレンジ/レコーディング/ミキシングまでを一人で手掛け、国内のみならず海外からも高い評価を得ている音楽家“トクマルシューゴ”が登場。

V-MODA ARTIST INTERVIEW

#18


トクマルシューゴ

04年に設立されたイタリア発のヘッドホン・ブランド“V-MODA”。世界のトップDJを魅了したフラッグシップ・モデルM-100をはじめ、比類のない品質、ファッション・フォワード・デザインに優れた商品群をリリースし続けている。そんなV-MODAを、プロ・ミュージシャンが試聴するインプレッション・インタビュー。第18回目は、ギターと玩具を主軸に無数の楽器を演奏し、作詞・作曲/演奏/アレンジ/レコーディング/ミキシングまでを一人で手掛け、国内のみならず海外からも高い評価を得ている音楽家“トクマルシューゴ”が登場。スタジオモニターヘッドホンのM-200と、アクティブ・ノイズキャンセリング・ワイヤレス・ヘッドホンのM-200 ANCの2モデルを試聴してもらった。

V-MODAは聴き馴染みのある音で
ちゃんといい帯域を出してくれる

トクマルシューゴが考える
ヘッドホン

断然ヘッドホンが好みで、できれば開放的な音で聴きたい

視聴していただく前に、ヘッドホンやイヤホンの選び方、どういう部分を基準に選ばれているかお話を聞かせてください。

ヘッドホンは基本的にノリで買っているのですが、モニター用に4つ、試聴用に4つ持っていて、メーカーはすべてバラバラです。選び方としては、全部違うタイプにしようという気持ちがあって。低音が強いものからハイレゾ対応で全部の音域がキレイにバシッ!と出るもの、素早いものから落ち着いた音質のものまでさまざまです。単純に好きでいろいろと買っていますね。

ヘッドホンに限らず、機材全盤をよく購入されているんですね。

そうですね。昔からイヤホンとヘッドホンとマイクが好きなので買い漁っていますが、イヤホンは最近はあまり買わないようにしています。わりと(鼓膜に)近すぎて痛くなったり、疲れてくるなと。Bluetoothイヤホンが流行っているので、世間的にはイヤホンを使っている方が多いと思いますが、僕は時代と逆行していますね(笑)。飽和状態というか、面白味がなくなっちゃって。だから、断然こっち(ヘッドホン)のほうが好みで、できれば開放的な音で聴きたいですね。

手元に残っているヘッドホンが約10機種ということですが、これまでさまざまなヘッドホンを試してきたのですか?

そうですね。V-MODAのCrossfade M-100 Masterも持っていましたよ。Crossfade M-100 Masterは好きで聴いていたんですけど、今回のモデル(M-200とM-200 ANC)は初めて知りました。

Crossfade M-100 MasterはDJモニターをベースにして、ローランドのエンジニアがハウジングの空気の出方を調整しています。ローにパンチがあるタイプですね。

そうですね。低音域が強めのヘッドホンの中でもすごく良くて、いろいろな会場でライブパフォーマンスをするにはベストなヘッドホンなのではないでしょうか。

リスニング用とモニター用で、それぞれのヘッドホンに求めるサウンドはどういったものですか?

最近の傾向もあるし、僕の傾向でもあるのですが、家で作業をする時間が増えれば増えるほど、モニターヘッドホンよりも普通の聴きやすいヘッドホンでモニタリングする機会が多くなりました。自分の作った音や音楽が、一番気持ち良く聴こえるので。でも、“本当にそれが正しいのかな?”という気持ちもあるので、解像度が高くて上(高音域)から下(低音域)までキレイに出て、スピード感が速い(反応が良い)ヘッドホンも使います。だから、ミックスの最終チェックや録音時はわりと両方のヘッドホンを使いますね。あまり自分の耳を信じていないので(笑)、“もっとも自分の音楽の粗が目立つもの、良くない感じで聴こえるヘッドホン”を選ぶんです。当然、その環境で音楽を聴く人もいるわけですから、自分が“嫌だな”と思う環境でモニタリングして、最終的に自分が楽しむために開放的なヘッドホンで聴くというやり方ですね。

ヘッドホンの見た目は重視しますか?

初めは重視していましたが、今は何でも好きになっちゃって。ヘッドホンをたくさん持ちはじめると、何でも良くなっちゃいますね(笑)。

新製品がリリースされるとチェックしに行くことも?

そうですね。最近はそんなにしていないけど、評判の良いヘッドホンはチェックしに行きますね。ただ、最近は新しいヘッドホンがバンバン発売されて、クオリティが高いものばかりだから、だんだん自分の耳が信じられなくなってきました(笑)。“全部いいなぁ”みたいな。

M-200 / M-200 ANC
× トクマルシューゴ

流し聴きをするならM-200 ANC
集中して聴きたいと思ったらM-200

では、M-200と M-200 ANCを試聴していただきたいと思います。

まずはめちゃくちゃシンプルなところから聴いてみます。マイルス・デイヴィスの「ソー・ホワット」。この2機種は同じものなんですか?

ドライバーも構造も違うので、ぜひ聴き比べてもらえれば。

(M-200と M-200 ANCを交互に試聴)
 あー、全然違う(笑)! 
すごいですね。同じモデル名なのにステレオ感から全然違う。密閉型ヘッドホンのお手本のように、スパーンとカツーンとした音で素晴らしいです。次はザ・キンクスの「ヴィクトリア」で試聴してみます。古い音楽ばかりですみません(笑)。以前のCrossfade M-100 Master は、ロックよりもEDMのほうが向いている印象があったのですが、今回のモデルは万能なのかな。

そうですね。音作りをベースに作ったので、比較的ジャンルを選ばずに使えると思います。

最近っぽい曲も聴いてみましょうか。リル・ナズ・Xの「モンテロ(コール・ミー・バイ・ユア・ネーム)」。あと、ちょっと無茶している曲も聴いてみていいですか?下と上を限界まで出す“かめりあ”の「Xronial Xero」を聴いてみます。“かめりあ”さんの音楽は解像度と再現度を測るのにもすごくちょうどいいんです。

すごい音量ですね。

めちゃくちゃ音量を出して試聴することが多いです。こういう曲は、Crossfade M-100 Masterのほうが得意かもしれないですね。下が少し控えめかな。自分の曲も聴いてみてもいいですか? 「カナリア」という曲です。

幅広いタイプの楽曲を聴いてもらいましたが、いかがですか?

M-200 ANCのほうがステレオ感をキレイに感じやすいのと、M-200は普段スタジオモニターに慣れている人には問題ないと思いますが、高音のパキーン!という部分は聴いていて痛いと感じるユーザーはいるかもしれません。でも、M-200 ANCだとそれを感じないので、あえてそうしているのだろうと感じました。M-200 ANCは、M-200で“痛いかな?”と思う部分を取り除いてくれているので、一般的なユーザーの方にはM-200 ANCがオススメだと思います。聴き馴染みも心地良いし、ノイズキャンセリングもあるし、よりクリアに感じるのではないでしょうか。僕は家ではノイズキャンセリングを使わないので、M-200のほうがクリアに聴こえるのですが、ノイズがないぶん普通の人はM-200 ANCのほうがクリアに聴こえると思います。

リスニング用としてはM-200 ANCのほうが好みですか?

好みと言われると難しいんですよね。M-200のようなモニターヘッドホンも好きなので。モニターヘッドホンならではの良さというか、すごく全部の音域が聴きやすくて、“実際はこうやって録ったんだろうな”という音が聴けるのがすごく心地良くて好きです。“忠実度”っていうんですかね。聴き馴染みのある音で、そのまま聴けるなと思ったのはM-200という気がします。
M-200 ANCは痛い部分を取っていると思うので、聴きやすくなっているぶん、普段自分が聴いていた音とはもしかしたら違うかな?と感じちゃうのがパッと聴きの印象です。ただ、それが悪いという意味ではなくて、すごく良くもなっている。だから、どちらが好みかと言われたら難しいんです。普段、流し聴きするならM-200 ANCが“気持ちいいなぁ”と感じると思いますし、集中して聴きたいと思ったらM-200で聴いちゃうかもしれない。これは職業病だと思います(笑)。なので、ミュージシャンの方だったら絶対にM-200を買うんじゃないかなって。あくまで印象ですけどね。

確かに、このインタビューでもM-200を選ばれるアーティストさんが多い気がします。

“聴き慣れている音”というのはあると思います。特にスタジオに置いてある定番のヘッドホンでミックスしている人は、この感じはM-200のほうが印象は近いと思います。ただ、M-200 ANCに慣れちゃえばこっちを選ぶような気がします。

M-200

V-MODAヘッドホンの特徴であった豊かな低音域に伸びやかな中高音域を加え、解像度を上げる音作りを進めることで幅広い帯域をフラットに再生することが出来る「原音を忠実に再現する」ヘッドホン。

V-MODAの試聴を終えて

デフォルトは、そろそろ変えてもいいと思う

使用用途も含め、トクマルさんが欲しいと思うヘッドホンはどちらですか?

難しいなぁ、どっちもいい(笑)。クリアでクオリティがいいヘッドホンは持っていないので、欲しいのはもしかしたらM-200かもしれない。聴き馴染みが良くて、普段使うだろうなというヘッドホンはM-200 ANCなので、悩ましいところですね(笑)。

それぞれのヘッドホンですが、どのようなユーザーにオススメできそうですか?

普段家でミックスをしていて、もうちょっと良いヘッドホンを欲しい人には断然M-200をオススメします。これで充分作業ができると思うし、密閉度も高めなので、レコーディングもそのままできると思います。外でも聴く用に作られているんですか?

そうですね。手を当てるとノイズキャンセルがオフになる機能など、外出先でも使い勝手のいい設計になっています。

見た目が好みの人多いと思うので、普通の方にはM-200 ANCをオススメします(笑)。でも、どうなんだろう。一般の音楽リスナーが、最近どういう音像を好んでいるのかがわからない。一昔前だったら、低音が出るヘッドホンが流行っていたけど、M-200はそうでもないというか。ノイズキャンセルはわりと低音を出さないヘッドホンが多いイメージですけど。

最近はローが出るタイプではなくて、解像度重視のモデルが多い印象です。ただ、音の情報量が多すぎても疲れてしまうので、そのバランスがほどほどのヘッドホンが主流ではないかなと。

確かにM-200は情報量が多いですよね。モニターなのでそうじゃないと困るんですけど。M-200 ANCはそういった空気感は取り入れつつ、ちょっとリバーブ感があるのでそのぶん聴きやすいかなと。密閉型ですけど、ほど良い空気感を求めてる人にはM-200 ANCが合うと思います。M-200 ANCは包み込んでくれる感じがあるけど、M-200は直接パーンと音がくるのでそこはお好みで。

装着感はいかがですか?

いいですね。個人的には好きです。

最後に、V -MODAというブランドに対して抱いたイメージがあればお願いします。

まずは聴いてみてほしいですね。だいぶ良くて、普通に欲しいので。良いヘッドホンで音楽を聴いてもらいたいと、僕はずっと思っているんです。たぶん、日本人の耳に合っていると思います。海外のヘッドホンだと特性が強すぎるものも多くて、バラつきがある気もするけれど、V-MODAはすごく聴き馴染みのある音でちゃんといい帯域を出してくれる。特にM-200 ANCは気持ち良く聴こえる音を捉えていて、すごく丁寧に作られている印象があるので、音楽をよく聴かれる方にぜひおすすめしたい。“いいモニターヘッドホンを欲しい”というミュージシャンの方には、スタジオに置いてある定番のヘッドホンではなく絶対にM-200をオススメしたいですね(笑)。
デフォルトは、そろそろ変えてもいいんじゃないかなと思うんです。スタンダードなヘッドホンは、最近ちょっと聴きづらくなっているんですよね。今時のサウンドに合わないというか、あれで確認しても確認にならないレベルになっていて、今の音源では捉えきれない部分は多いと思います。今はステレオ感とか空気感などをミックスで作り出そうとしているので、そこまでは再現できないというか解像度が足りないんです。そういう意味でもV -MODAを使ってほしいなと。素晴らしいです。

M-200 ANC

音楽を純粋かつ快適に楽しむことを追求したアクティブ・ノイズ・キャンセリング機能搭載Bluetooth®ワイヤレス・ヘッドホン。 全音域の解像度、定位バランスを突き詰めたサウンドをベースに、ノイズを的確に分離する独自のチューニングを施したノイズキャンセリング機能を加えたことで、ピュアかつクリアな音楽を快適に楽しむことができるヘッドホンに仕上がっています。

PROFILE

様々な楽器や非楽器を用いて作曲・演奏・録音をこなす音楽家。2004年、NYのインディレーベルより1stアルバムをリリース、各国のメディアで絶賛を浴びる。以降、国内外ツアーやフェス出演、映画・舞台・CM音楽制作など幅広い分野で活動し、近年はNHK Eテレ『ミミクリーズ』の音楽も手がけている。2020年には、配信限定シングル「Sakiyo no Furiko」、圧巻の360°手書きアニメーションによるVRミュージックビデオとともに「Canaria」を連続リリース。そして3年ぶりとなる自身主催のフェスを『TONOFON (REMOTE)FESTIVAL』としてオンライン開催。今年2021年には音楽劇『プラネタリウムのふたご』(演出:ウォーリー木下)の音楽、映画『青葉家のテーブル』(監督:松本壮史)の劇中歌制作を担当した他、ディズニー&ピクサー『あの夏のルカ』日本版エンドソング「少年時代(あの夏のルカver.)」(歌:suis)のアレンジを手がけるなど、活動のフィールドを更に広げている。

https://www.shugotokumaru.com

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